聖闘士 星矢
〜Last Chapter The Olympus〜
第20話「嗚呼…愛しのエリー!!の巻」
――――巨蟹宮
4人の男がそこには倒れていた。3人は聖闘士。1人は冥闘士。柱ひとつ傷のつかぬ戦いであったが、そこには激しい戦いの繰り広げられた、、、そういった空気が漂っていた。そこにたくさんの冥闘士たちがやってきた。
「!!」
先頭には、天哭星ハーピーのバレンタインがいた。バレンタインは巨蟹宮に倒れる一人の冥闘士を見て驚いた。
「ミーノス様!!アイアコス様がこの巨蟹宮で死んでおります。」
バレンタインはそう殿を歩くミーノスに言った。
ミーノスは黙ってアイアコスの前に歩いてくると、冥衣の裏から小さな短剣を取り出した。そして、その短剣をアイアコスの頬に当てると、まるで呪文か何かを唱えるかのように一言つぶやいた。
「エリスの元に集まりし、戦士よ!ここに蘇れ!」
そういうと、アイアコスは意識を取り戻した。
「ん…んん……」
アイアコスは辺りを見回した。そこにはいままで戦っていたミーノスの顔があった。しかし、そのことは全く気づいておらぬような顔でミーノスの方を見やった。
「ここは…?」
「ここは貴方の宿敵の救う宮殿だ。急ぎこの宮殿の最奥にいかねばならぬのだ!!」
ミーノスはそう答えた。しかし、アイアコスは未だ状況が理解できていないようであった。
「で、貴方は何者なのです?」
アイアコスがそう聞き返すとミーノスはこう答えた。
「私ですか?私は貴方の命を救ったものです。まだ、体に疲れが残っておいででしょうが、私の目的を達成するためにしばし力を貸していただきたいのです。」
アイアコスはそういわれると、体中に力がみなぎってきたのか、急に飛び上がるとミーノスに言った。
「そうか。分かった。微力ながらこのアイアコスの武闘の力。貴方にお貸ししよう!」
アイアコスはそういうと、巨蟹宮の先へと進んでいった。
バレンタインは手近の冥闘士に耳打ちをして言った。
「どうもアイアコス様の様子がおかしいな。」
手近にいた冥闘士の天捷星シルフィードはバレンタインに答えた。
「ああ。アイアコス様だけではない。ミーノス様も以前とは様子がおかしいな。」
バレンタインはそれを聞いてうなずいた。
「ともかくしばしは様子をみるしかない。」
そういうバレンタインに気づいたのか、ミーノスは冥闘士全員に号令をかけた。
「これよりこの宮殿のさらに奥へと進む!心してかかれ!!」
「はっ!!」
バレンタインとシルフィードもその言葉に合図を送った。
ミーノスとアイアコスの異変に気づきながらも。
―――――ノルウェー
「ただいま!」
一人の青年が大きな屋敷に帰ってきた。ジーパンにポロシャツ、その上にフリース姿というよくありがちな若い学生の格好で、とてもこの大きな屋敷に住む青年とは思えない。金髪で髪は若干巻きが入ってりるようだが、今はしっかりと短くしており、スポーツマンといった感じだ。屋敷には一人の少女がいた。
「あら?兄様。お帰りなさい。」
ミーノスと呼ばれたその青年は屋敷にいた少女に呆れたように答えた。
「お帰りなさいじゃないだろう?また来ていたのかい?」
そういいながら、カバンをソファーに置き、中から小さな籐で編まれたケースを出して片付けようとした。
が、そのケースは少女の手によって押さえられ、そのまま少女のひざの上にと運ばれた。
「何を言っているのよ。だったら明日からサンドイッチなんて作ってあげないんだよぉ!」
と頬を膨らませてみせた。
ミーノスは反論できずに両手も軽く肩の辺りまで挙げると
「それは困る。」
「だったら文句言わないでよ。こんな可愛い女の子が毎日お家の家事手伝いに来てくれるんだから、ありがたく思ってほしいものね。」
ミーノスはそれを聞いて、
「そうではなくて、僕はキミの…」
ミーノスは何かを言おうとしたがそこで止めて、急に笑顔を見せるとこういった。
「それより、これを見てくれ!」
そういうとジーパンの後ろのポケットから一枚の折りたたまれた紙を取り出した。そして、広げると少女に見せた。
「まぁ。また、Sを取って帰ってきたのね!あの気難し屋のヴォーグ先生の試験で。」
それは法学の授業の答案だった。少女が驚くと、ミーノスは自慢げにさらに続けた。
「ああ、キミは歴史に残る偉大な政治家になれるだろう!とべた褒めだったよ。」
「私なんて、あの先生の授業は寝てばかりだだから、及第点を取るのがやっとなのに。」
ミーノスは少女の言葉を聞くと、頭を軽くなでて、答えた。
「なぁに!エリーだって十分成績がいいじゃないか!!成績優秀、才色兼備。おまけに天真爛漫で同級の男の子からひどくからかわれているそうじゃないか。」
ミーノスはエリーにそういうと、エリーは答案をひざのあたりに置くと、救いを求めるように両手をミーノスの方にあげた。
「そうよ。いつも男の子が言い寄ってきてしょうがないの!」
ミーノスはそういいながら、服を着替えるとタイツのようなものを着てさらにそれにスキーウェアのようなものを羽織った。
「大丈夫!!あんまりしつこいときは僕が怒鳴って追い返してやるさ!」
「それが困るのよ。もう、分かってないんだから。。。」
エリーはそういうと、サンドイッチの入っていた小さなケースを台所へ持っていった。
「おっと!もうこんな時間か。僕はクロスカントリーの練習に行ってくる。今日は大事な試合なんだ!!」
ミーノスはエリーにそういった。
「はいはい。お母様にお伝えして置けばよいのね。」
走って玄関まで行くと、ミーノスは去り際に感謝の意を述べた。
「ああ、ありがとう。でも、あまり遅くならないうちにおうちには帰るんだよ。」
「分かってます!!隣なんだからいつ帰ったっていいじゃない!」
そういいながら、あたりに散らかるミーノスの脱ぎ捨てた洋服を洗面所の近くにある洗濯機の方へと運んでいった。
「成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗でも、家に帰ればこれだものね。」
エリーは洗濯機の中で脱水された洗いたての洗濯物を籠に取り出すと先ほどの汚れた洋服を洗濯機の中に入れ、スイッチを押した。
「兄様の奥さんになる人は大変ね。」
洗濯物を干し終わると、エリーはそういってリビングでお菓子を頬張りながら古い詩人の詩集を読み始めた。
コンコンコン…
しばらくして、誰かが表のドアをノックする音がする。
「!」
誰かと思い、表に出てみるが誰もいない。
「おかしいわね。」
そう思い、中に戻ろうとすると、玄関先に何かが落ちていた。
「これは短剣かしら?」
何故こんなところに短剣が落ちているかはよくわからないが、こんなところに捨てておくのも危ない。エリーはとりあえず部屋に持っていこうと手に取った。
「おお、偉大なる我のうまれかわりよ。この短剣を持ち、その肉体を我にささげよ。」
突然のわけの分からぬ声に君が悪くなり、思わず投げ出してしまう。
「きゃあ!!」
すると、その短剣はどこかへと消え去った。
「まあ、よい。いずれ訪れる。アレスとの最後の戦いが。それまでしばし休むとしよう。エリーよ…」
声が消えた。
「やだわ。疲れているのかしら?少し休まなきゃ。」
そういって、ミーノスの家のリビングにあるソファーに横になった。
―――――双児宮
3人の男が双児宮を離れ、巨蟹宮に向かっていた。そこで突如、ノエルが立ち止まった。
「さっきからどうも悪寒が走ってしょうがないんだ。」
そういうと体をかばい、ぶるっと震えた。
「いつものことでやんしょ。あんた北風の風闘士でしょうに。。。」
チョンヤンがさけんだ。
それを聞いて、アロルドが問いただした。
「おかしいな。いくら1月とはいえ、寒さに強いお前がこの程度の寒さで震えるとは考えられん。風邪でも引いたか?」
そういってノエルの額に手を当てた。
「すごい!熱だ!!」
それを聞くと、チョンヤンも駆け寄ってきた。
「それだけじゃないでやんす。なんでか辺りが寒いでやんす!!」
それを聞いて、アロルドも周りの空気を感じる。たしかに寒い。しかし、それは遠くから来る寒さではない。
「これか!!」
寒さの現況を突き詰めてみると、それはエリーから零れ落ちた短剣であることが分かった。
「これから何故こんな急激な寒さが!?」
アロルドがそれをノエルから取り返す。急に寒さは収まった。
「薄気味の悪い短剣だな?なんだってこんなことが起こるんだ!?」
そういってる間に、短剣を手放したノエルが正気を取り返した。
「大丈夫。やはりその短剣のせいみたいだね。早く先へ行こう。」
「しかし…」
アロルドは短剣の処遇に困った。
「それはとりあえず、僕が持つよ。また具合が悪くなるようだったら、そのとき考えよう。」
それを聞いてチョンヤンが答えた。
「いいでやんす。こっちによこすでやんす。ノエルが持ってるから悪いでやんすよ。」
そういって、アロルドから短剣を取り上げた。
「とりあえず、あの少女が持っている方が危険だということがより分かったな。つらいかもしれんがしばしはうちらが保管しておくとしよう。」
そういうと、アロルドはチョンヤンが懐に短剣をしまい直したのを確認した。
「よし、いくでやんすよ!!」
3人はそういって、巨蟹宮を目指した。
しかし、目前に巨蟹宮というところまできて、チョンヤンに異変が起こり始める。
「あいたた、またでやんす。」
ゴンと音がするとまたしてもチョンヤンが階段によろけ、転んでしまった。
「おいおい!!風闘士ともあろうものが階段の段差に負けてよいものか!!」
アロルドがそういうと、
「おかしいでやんす。体のバランスがとれないでやんす。なんでかさっきから横風がすごくてまっすぐ歩けないでやんす。」
チョンヤンがそういう。ノエルがチョンヤンに近づくとなぜかもんすごい突風が吹いてきた。
「グア!!だめだ!!」
慌てて、数段階段を降り、風をよける。
「ばかか!!」
アロルドはそういうと、急いでチョンヤンの懐から先ほどの短剣を抜き出した。
するとすぐに風は収まった。
「原因はこれだな。」
アロルドはそういう。
「どうやら俺たちに持っていてほしくないようだな。」
ノエルがいう。転がっていたチョンヤンがやっとの思いで起き上がる。
「わかったでやんす。」
そういうと、他の2人も気づいた。
「これは自己の力を増幅させる代わりに自らを滅ぼす短剣のようだな。」
「俺が持てば、どうなるか?」
「空のかなたへすっ飛んでいくでやんすよ。」
そう、チョンヤンが言った。
「どうにかせねば。。。」
アロルドがそういう。しかし、巨蟹宮の入り口で長時間立ち話をしていたのはあまりよくなかったようだ。
「こんなところに誰だ!!」
巨蟹宮の中からは、殿を歩いていた3巨頭の一人ミーノスが現れた。
「実はミーノスという男を捜していてね。」
それをきくとミーノスは驚いた顔をして答えた。
「それは運がいい。私がミーノスだが、風闘士風情が私に何の用かな?」
ミーノスはこの3人が風闘士であることを知っていた。
「しまったな。」
ノエルは舌打ちした。
「まあ、いい。じっくり話そうじゃないか。とにかく巨蟹宮の中へ。」
そういってミーノスは巨蟹宮の中へ戻っていった。
「どうにかしなければな。」
そういうとアロルドたち3人の風闘士は巨蟹宮の中へと入っていった。
エリーとミーノスの関係は?
蘇ったミーノスらと戦う聖闘士は!?
第21話
「激突!冥闘士VS風闘士!!の巻」
キミは小宇宙を感じたことがあるか!?
感想どしどしお待ちしています!