聖闘士 星矢
〜Last Chapter The Olympus〜
第23話「軍神アレス参上!!の巻」
「アロルドの旦那!!どうもだめでやんす!」
再び闘いに入る前に、チョンヤンが言った。
「あれか!?」
アロルドの示すものは例の短剣のことであった。冥闘士たちは気づいていないようであったが、実際チョンヤンほどの4大風がそう簡単に冥闘士にやられるはずもなく、この短剣によって本来避けたいはずの場所からずれ、技があたってしまったのだ。
「分かった!!」
そういうと、短剣を渡すよう手のひらを逆に向けて合図を送った。それを見て、チョンヤンは、短剣をアロルドに向かって投げた。
ピュッ!!
アロルドは冥闘士に取られることなく、確実にその短剣をキャッチした。
「なんだそれは!?」
バレンタインはそのさまを見て思わずそうたずねてしまった。しかし、
「これか?これはある女性から預かっているものだ!!貴様らとは関係がない。」
アロルドはそうちゃかして見せた。
「何を女々しい!!」
スタンドがそういって拳をアロルドに向かって振るった。しかし、その拳を左の手のひらで受けると、そのままスタンドの拳をつかみ、右手でそのつかんだ拳に向かって、ちょいと魔法をかけるように技を放った。すると、
「グオォ!!」
スタンドの体がふわりと宙に浮くと、そのまま、ぐるぐると回して見せた。
「フハハハハ!うどの大木とは貴様のような奴のことを言うのだな!!」
「バ!バカな!!地に足を着き、何人をも通さぬ巨漢のスタンドが宙に浮くなどとは!?」
冥闘士は恐れた。しかし、アロルドの猛攻はそれでは終わらなかった。
「グレートハリケーン!!」
それによって、スタンドの体は竜巻の渦の中に巻き込まれると息も出来ずにそこで命を絶たれてしまった。その巨体がものの見事に地面に落ちる。
ズシン!!
大きな音が響き渡る。
「3人!!」
アロルドはそういうと、短剣をノエルの方に投げた。ノエルはそれを受け取ると、軽くアロルドの方に合図を送った。
「くそ!小ざかしいまねを。」
バレンタインはそういって、拳を握り締めた。もはや4大風に突撃をしたくなるほどの勢いであったが、ここで4大風にのまれてしまっては彼らの術にまんまと陥ったことになる。
「バレンタイン!!やめろ!!ここで逸っては奴らの術中にはまるだけだぞ!!」
シルフィードがそうバレンタインを制す。
「さあ、貴様らの技を再び私たちに繰り出して見るんだ!!」
ノエルはそういうと、短剣を懐へとしまった。
「ならば、今度はこちらから生かせて貰おう!!」
バレンタインはそういうと今度は先ほどとは別の業を繰り出した。
「グリード・ザライブ!!」
バレンタインが渾身の技を繰り出したが、それはやすやすとノエルによってふさがれてしまう。そして、
「フリージング ウィンド!!」
ノエルは北風特有の凍りつくような風をバレンタインに送った。
「ぜ、全身が…。」
バレンタインの体が凍りつく。
「さすがのハーピーもそれほどの寒さでは身動きも取れまい!」
そう、ノエルは言うと、凍てつく風にさらに強さを増させた。
「もはや、時間の無駄!貴様ら全員再び、元いた地獄へ送り返してくれるわ!!
ファーゼスト ブリザード!! 」
「エリス様…御武運を…。」
その究極の吹雪を食らった冥闘士は体ごと凍りついてしまうと、そのまま、風に乗り地獄の最果てまで逆戻りすることとなった。
「これでいい加減よかろう。」
ノエルがそういう。
「助かったでやンス!」
チョンヤンは首をコキコキ鳴らしながら、感謝の意を述べた。
「どうやら、一時的には技の強さが増すようだな。持ちすぎると都合が悪くなってくる。」
アロルドは先ほどの技の調子を見てそういった。
「そのようだな。」
ノエルがそういう。
「さて、これからどうするか?」
「先ほどのミーノスをほっておくわけにもいくまい。」
「では二手に分れるでやンすね。」
「では、そうしよう。」
そういうと、ノエルは下方に、アロルドとチョンヤンが上に行くことと決まった。
「では、一刻も早くあのミーノスという男を葬ってくる。」
ノエルはそういうと踵を返した。
「それと、、、このなぞの短剣が一体なんであるかあの少女に聞いたほうがよかろう。」
「そうだな。」
アロルドがそう相槌を打つとノエルは下の双児宮へ向かった。
―――双児宮上
「はあ、はぁ。」
体の弱いエリーが双児宮を立ってから10分ほど。すぐに息を切らすと、その場にへたり込んでしまった。
「エリーさん!ここで少し休みましょうか?」
春麗はエリーを気遣ってそういう。しかし、エリーは首を横に振る。
「いいえ!構いません。すぐに上に行きましょう。」
そういうと無理にでも立ち上がろうとした。
「無理です!ここで休みましょう!」
春麗はそういって座らせようとしたが、エリーは座らなかった。
「仕方がありません。」
春麗はそういうと、エリーの肩を担いだ。
「申し訳ありません。」
エリーはすまなそうに言った。
「いいえ、いいんです。貴方の意思の強さには感服しました。少しずつでもいいから上に進みましょう。」
そういって、2人は上の宮へと向かって言った。
しかし、エリーの歩みが遅いので、大変な事態に陥ってしまった。
「さあ、ペンテシレイア!ここがアテナの統べる聖域というところだ!!
双児宮に一人の男が登ってきた。軍神アレスだった。
「ええ!あと少しでエリスのところにたどり着くはずね。」
そうペンテシレイアと呼ばれた女は言った。ヘルメスの助言を聞かずに12宮までエリスを追ってやってきてしまったのだ。
今回、ダイモスは星矢たちの番を取り仕切っているため、娘のペンテシレイアを連れてきた。実際には、彼女は神というわけではなく、女戦闘士である。だから実際には別の名前はある。ようは護衛役としてついてきたわけだ。
2人がしばらくしばらく進むと、2人の女に出会った。一人は金髪で、もう一人は黒髪。黒髪の女性に金髪の女性は肩を担がれている。その2人とは当然のごとく、春麗とエリーであった。
「いたいた!アレス様!!エリスがいたよ。」
アレスの前ではしゃぎたてるペンテシレイア。それを聞いてアレスは前を歩いているエリーを眺めた。
「うむ。これはまさしくエリス!!」
大きな声で、後ろから不意をつかれたエリーは腰を抜かしてその場にへたり込んでしまった。
「誰ですか?貴方達は!?」
春麗は精一杯の力でアレスとペンテシレイアの前でそう尋ねた。
「えっ!!私!?私はペンテシレイアのジュリア!よろしくね!!」
と軽々しい挨拶をした。しかし、そんなことは全く無視して、アレスがエリーに向かっていった。
「エリス!!すぐ様このわしと戦うのじゃ!!」
アレスはそういうと、エリーの首をつかんだ。
「きゃあ!!」
慌てて、春麗がそれを見て警告した。
「ちょっと!!やめてください。誰なんですか?そのエリスという方は?」
しかし、アレスはエリーを離そうとしなかった。
「バカな!これがエリスでないはずがあるまい!!」
そういって、アレスはエリーの首をつかむ腕に力を入れる。
「いやぁ〜!!」
エリーはますます悲鳴を上げる。春麗はその手をほどこうとした。が、
「きゃぁ!1」
アレスが、軽く春麗をあしらうと、数メートル吹っ飛んでしまった。
「さあ、エリス!このわしの腕によって再び地獄へと舞い戻れ!!」
そうしてエリーの首をへし折らんとしたそのとき、
「待て!!」
そこに一人の男が現れた。ミーノスだった。
「誰だ!!」
アレスはそういうとエリーを離し、そこに投げ捨てた。春麗は慌ててエリーの体をかばう。
「私か?私はミーノス。このエリーという少女の知り合いだ!!」
ミーノスはそういった。その姿を見て、エリーは救われたような顔をして、ミーノスの方を見た。
「ミーノス!ミーノスなのね。よかった!!生きていたのね!!」
エリーはそういうと、ミーノスの方に向かっていった。しかし、ミーノスはそれを拒んだ。
「待て!!ここは危ない!すぐに上へと避難するんだ!!」
そういうと、春麗はミーノスの言うことを理解したかのように、エリーをかばうと、上の宮へと逃げていった。
「さあ、エリーさん早く!!」
それを見つけたジュリアが慌てて追いかけようとした。
「グリフォンファング!!」
ミーノスはジュリアに向かって技を繰り出した。
「あいたたた…。」
ジュリアはそういって、そこにへたり込む。
「だめだ!!エリーには指1本触れさせん!!」
それを見て、アレスは親指を軽くなめると、ミーノスに向かっていった。
「ほう。エリスを守るハデスの闘士というわけか?なるほど。分かりやすい。」
アレスはそういった。しかし、ミーノスは首を横に振った。
「違う。私はこの少女を守る闘士だ!!」
ミーノスはそういった。アレスはミーノスのそのいい振りを聞いて、腹をたて、まるでミーノスの正体を元から知っていたかのように、次のようにたずねた。
「何を!!貴様が冥闘士でなくて何者なのだ!!」
そういわれるとミーノスはきっぱりと答えた。
「私は天貴星グリフォンのミーノス!!」
しかし、それに続けた。
「昔はそうであった。しかし今は違う。私は過去の自分を取り戻した。そう!あの事故によって生命を失い、冥府のパンドラによって冥界3巨頭になる以前のことをな!!」
アレスはそれを聞くと、言った。
「フフフフ…。しかし、その娘は紛れもなくエリーなのだ!!それは誰にも否定することはできん。」
そういうと、アレスは戦闘をするためにいままで全身を覆っていたマントを取り去った。
「今はまだ覚醒していないだけだ!!さあ、そこをどけ!!筐体もろとも破壊してしまえば、エリスはもう復活することはありえんのだ!!それにエリスが復活すれば地上はエリスによって統治され凄まじいばかりの血をみることになるのだぞ!!」
ミーノスも戦闘態勢に入った。
「くどい!!たとえどんな理由があろうともエリーを死なすわけにはいかん。第一、戦いの神である貴様からそのような言葉が出るとは。ちゃんちゃらおかしい。」
アレスの怒りは頂点に達した。
「そんなに血がみたいか!!ならばまずは自分の血を見るがいい!!」
そういうとアレスはその大きな拳を突き出した。
ガクン!!
ものすごい鈍い音がしたかと思うと、ミーノスは聖域の地中深くへと沈められてしまった。たかだか、拳ひとつのパワーでこれほどの腕力を持つのはオリンポスの12神でも他にいないであろう。
「ばかめ!!このわしにたてつこうなどとは!!」
そういって、再びエリーを追おうとした。しかし、アレスの足がミーノスによってつかまれた。
「待て!!私はまだ死んではいないぞ!!」
そういうとミーノスはアレスの足を使って、沈められた穴から飛び出てきた。
「さすがは冥界の3巨頭。だてに鍛えていないようだな。」
アレスがいうと、ミーノスは答えた。
「フッ!!ハデスの使者だけあって往生際は悪くてね!」
「おもしろい!!久しぶりに本気で戦う相手が出てきたようだな。」
アレスはそういうとミーノスに正対し、ミーノスの攻撃を待った。
「食らえ!!コズミックマリオネーション!!」
生前を取り戻すミーノス!!
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