聖闘士 星矢

〜Last Chapter The Olympus〜


24話「善悪を測る天秤!!の巻


 

ミーノスが技を放つと、その技はアレスの体を覆い、見るも哀れなダンスを踊り始めた。ミーノスは指を巧みに動かすと軽やかに鼻歌を歌い始めた。、
「ハハハハ…。軍神アレスがそのように軽やかなダンスを踊るとは!」

 調子にのったミーノスはアレスに爪先立ちさせ、手を腰の前に折らせると、お辞儀させた。
「さあ、この私にダンスの挨拶をするのです!」
 アレスはミーノスの前で丁寧にお辞儀をした。
「ハハハ。そうだ。それでいい!」
 ミーノスは手首をひねりながらさらに苛烈なダンスを躍らせるはずであった。しかし、アレスは一人で勝手に凛々しい闘いの舞踏を踊り始めてしまった。
「1,2,3,4!」
 そして、腰に挿していた剣を引き抜いた。
「何!?」
 ミーノスは驚いたいかに操られていようが、剣などという物騒なものを取り出させるはずがない。ミーノスは自分の技がどうやらアレスにかかっていないらしいことが分かった。
「フン!!」
 アレスが、剣を持って思い切り腰に力を入れると、ミーノスの仕掛けたコズミックマリオネーションは解けてしまった。
「バカな!あれほど強固な操り糸をこうも容易く振りほどくとは!?」
ミーノスはたじろいだ。
「ばかめ!!神であるわしにそのような技をかけるとは!?」
 アレスがにじり寄ってくる。
「いかに冥界の3巨頭であろうとも人の子は人の子!神との大いなる差を見せ詰めてくれるは!!」
 アレスはそういうと剣を大きく振りかぶった。

「グレイテスト アサルト!!」

 

アレスはそう叫ぶと、ミーノスの体に剣を振り下ろした。
フッ・・・っと体を横に流すと間一髪のところで交わした。
「あぶない。今のを食らっていたら、舞い違いなくこの体は真っ二つに裂かれていただろう。」
 アレスは悔しそうに、剣を地面に叩きつけると、
「クッ!!避け追ったか!!今度はそうはいかん。

 スペシャル ミンチ!!

 

アレスは、剣を凄まじいばかりの速さで振り始めた。
間一髪のところでミーノスは避け続けた。
横に縦に。そして突きや燕返しなどの高度な剣裁きなんかも入っていた。
そのたびにミーノスは技を見切る。しかし、あまりにも速い裁きのためにその風圧だけで体が裂けてしまうほどであった。そうして、かれこれ1時間近くもその死闘は続いた。気づいたときにはミーノスの体は切り傷による血で前すら見えぬほどであった。
「さすがのアレスの攻撃だ。その切っ先のほとんどがあったていないというのにすでにこれだけの出血をさせるとは。。。」
 アレスは、剣を放り出す。そして、指を鳴らすと、
「ばかな!!貴様!!それほど出血をしながらわしの攻撃をことごとくかわすとは!?」
 ミーノスの体は確かに違っていた。オリンポスの神でも一番の豪腕と瞬発をほこるアレスの動きに人間がついてこられるはずはないからだ。しかし、その魂もすでに風前のともし火であった。度重なる闘いと、前回の復活でミーノス自体の肉体が精神や小宇宙の限界を越えて、すでにボロボロであったのだ。突如、ミーノスがひざを地面につく。
「うっ!!やはり!!」
 ミーノスは地面にへたり込む。それをアレスは見逃さなかった。
「食らえ!!

 

アルティメットストライク!!」

 

 アレスはフォボスが繰り出すのとは比べ物にならぬほど大きな隕石を呼び寄せるとそれをミーノスにたたきつけた。
ドゴ・ォ・ォ・ォ・・・
 ものすごい轟音と共にミーノスの体が地中深くに沈んでいく。
「フッ!!地上最強のこのアレスにたてつこうという方が気がくるっておるわ!」
 アレスはそういうとジュリアの方に手を差し出した。するとジュリアはアレスの投げ捨てたローブをアレスの体にかけた。
「しかし、おかしい!!」
 ジュリアはローブをかけている間に突然大きな声を出すので少し驚いてしまった。
「えっ!何がですか?」
 アレスは、ローブを自分で丁寧に着なおすとジュリアに言った。
「人間がなぜあそこまでの力を。神ですら一刀の元にひれ伏すというのに。。。」

 

「エリーさん!!早く!!もうすぐ巨蟹宮にたどり着きます。そこまでいけばしばらくは安全でしょう。」
 そういって、春麗はエリーをつれてひたすら逃げていた。
「春麗さん。もうダメ!!私にはこれ以上登る力は。。。」
 エリーは息を切らせて春麗に寄りかかると、そういった。
「だめです。他の聖闘士の方と合流しなければ。アレスに襲われたらひとたまりもありません。」
 春麗は今度はエリーを担ぎ上げると、そのまま走ろうとした。
 しかし、女に人一人を長時間担ぎ上げられるはずもなく、すぐに息が切れてしまった。
「紫龍…。私、こんなところで死んでしまうなんて。。。せめてあと1回でいいから会いたかった.。。」
 そういい、涙の雫が頬にたれた。そのときだった。
「泣くのはまだ早いさ。」
 そういって先ほど、上の巨蟹宮から降りてきた北風のノエルがやってきた。
 その声を聞くと、意識を失いかけていたエリーが声をだした。
「助けてください。下から軍神アレスが追ってきているのです。」
 それを聞くとノエルは答えた。
「下からアレスが…。」
 ノエルは何かを考えると、エリーと春麗にこう答えた。
「分かりました。急いで上の宮へと逃げましょう!!」
 そういって、2人を促し、2人の後ろに立つとノエルは巨蟹宮の方へと歩いていった。
「巨蟹宮を過ぎれば、私の仲間や聖闘士が多くいるはず。あなた方も安全でしょう。」
 そういながら、歩いて登っていった。
 しかし、2人ではなく、ノエル自身に異変が起こった。短剣だった。
「うぅぅ…。」
 そして地面にへたり込む。
「!」
エリーは驚いた。何事かと思い、ノエルの元に近づいた。
「どうしたのですか?」
 ノエルはものすごい悪寒にさいなまれた。
「何、ちょっと風邪をひいただけです。さぁ。行きましょう。」
 そういって、無理にでも立とうとした。しかし、エリーがそれをとめた。
「ダメです。」
 そういって、エリーはノエルの懐に手をあてた。異常な熱さに驚いた。
「ひどい熱!!一体何が!?でもなんでこの方のあたりはこんなにも冷たいのかしら?」
 その原因を探っていると、氷のように冷たい短剣が出てきた。
「!」
エリーは驚いた。
「こ、これは…!」
 エリーは以前ミーノスの家の前に落ちていた美しい短剣を思い出した。それはまさしくあのときの短剣と同じようだった。
 短剣を取り出す。それをひとしきり握ってみる。
「…。」
 エリーの反応がない。突如静かになった。
「エリーさん?」

 春麗はエリーの様子がおかしいので尋ねてみた。
「エリーさん。どうなさったのです?」
 ノエルも短剣が除かれたことによって若干常軌を取り戻すとエリーに尋ねた。
「エリーさん。その不可思議な短剣は一体なんなのです?貴方がもっていたもののようですが…。」
 エリーはそれをきくと、ゆっくりと春麗とノエルの方向を向いた。
「これは、、、これは私の短剣。そう!アレスと刺し違えるための…。」
 エリーの顔から血の気が引く。しかし、唇は赤あかと色づき、まるで血か何かでもすすったかのようであった。
「私はエリス。争いの女神。」
 ノエルは一瞬でさとった。この娘がエリスの筐体となるべく娘であったのだ。
「まずはお前達を血祭りにあげよう。この私の復活の暁にな!!」
 エリーは短剣を持つと、それを大きくノエルの方に振るってきた。
「あぶない!!」
ノエルは春麗をかばうと、あわてて、短剣をよけ遠方へと転がった。
「避けたか!!」
 そういうと、なおもエリーは短剣を振るった。それはさきほどのアレスがミーノスを襲ったのと同じようなすばやく力強い裁きであった。もはや、ノエルもこれまでというときに、エリーの切っ先がノエルの顔の先で止まった。
「お主、少しばかりミーノスに似ておるな。」
そういうと、短剣をそのままノエルの鼻先に乗せると、さらに続けた。
「ミーノスは。我がいとしいミーノスはどこへいったのじゃ?」
 そう聞かれたノエルはこの状況をなんとか脱せねばならぬと思い、エリーに答えた。
「ああ。ミーノスなら下にいったはずだ。」
 エリーは、そういうと短剣をノエルからはずした。
そのときだった、ノエルはなんとかエリーから短剣を奪おうと手をつかみ、その短剣を離そうと試みた。しかし、
「バ、バカな!」
 女性の力とは思えぬ力でその短剣は握られていた。
「愚か者!!」
 そういうと、エリーはノエルの手をつかみ放り投げた。
「ミーノスは下か。すぐにそこへいってやる。」
 そういって、エリスは下に下りていってしまった。

 

―――――天秤宮

オデッセウス!!なんとか天秤宮までたどり着いたね。」
貴鬼はオデッセウスに向かってそう言った。
「ああ、なんとかな。すでに火時計は処女宮の火まで消えようとしているのに。」
オデッセウスは天秤宮からもっとも近いといわれる火時計をみた。
「そうだな。あとなんとか6時間。守りきらねば。」
貴鬼はそういう。
 そうして走っていくと、天秤宮へとたどりついた。
「ここには新しい童虎が守っているはずだ。」
 貴鬼はそういうと、天秤宮へと入ろうとした。
「童虎!?あの伝説の天秤座の聖闘士か?」
 オデッセウスはそういうと少し畏れた。しかし、貴鬼は言い返した。
「大丈夫だよ。前の老師じゃない。新しく紫龍が育てた聖闘士だよ。」
 そういうと、貴鬼は天秤宮の中にいる童虎を呼んだ。
「お〜い!童虎。いるかい。」
 そういうと、中から小さな男の子が出てきた。しかしその身にはしっかりと天秤座の聖衣が身についていた。
「貴鬼さん。どうしたの?」
 ちょうど3,4歳という年齢の離れ具合で貴鬼からみるといい弟役であった。
「何。大変なことになってね。下から冥闘士や戦闘士がアテナの尺丈をとりにどんどんと上がってくる。それに聖域にはアテナの尺丈だけでなく、ゼウスの神衣まであったんだ。それらを絶対に彼らに渡すわけにはいかないんだ!」
 そういうと、あわてて、さらに上の宮へと進もうとした。
「もういっちゃうの?」
 童虎はそういった。
「ああ。一刻もはやくこのことをみんなに伝えなければ。」
 そういって、走り出す。しかし、幼い童虎はもっと冷静だった。
「で、そのゼウスの神衣は誰が持っているの?」
 そう聞かれると貴鬼は答えた。
「ああ、それならオリンポスの12神『ヘルメス』の使途のオリッサっていう風闘士が持っているよ。」
 それを聞くと童虎は、顔をしかめた。
「大丈夫かな?」
 貴鬼はそれを聞いて、答えた。
「大丈夫さ。彼はゼウスの神衣を守るためにミーノスと戦ったほどだから。」
 そういうとオデッセウスと貴鬼は天秤宮を後にした。

 

 しばらくすると、ミーノスを倒し、なんとかゼウスの神衣を守り抜いたオリッサが天秤宮にやってきた。
「キミが天秤宮の聖闘士か。さあ、ここを通してもらおうか。はやく上の聖闘士たちにもこの状況を伝えねばならない。」
 そういうと、童虎は背中から大きな2枚の盾を取り出すと両手に持った。そしてその盾は左手が異常に重くなってしまった。
「いたた。左がすごく重いや。」
 オリッサはそれをきくと、なんのことか分からず、童虎に聞き返した。
「何のことだ?さあ、はやくここを通してくれ。」
 そういわれると、童虎は盾を元に戻す。そして、なんとそこで童虎はオリッサにむけて構えた。
「キミは敵か味方か?どっちだ?」
 オリッサは、それをきくとなんとか童虎をなだめようとした。
「われわれはキミ達聖闘士の敵ではない。さ、、通してくれ。」
しかし、

「天秤の左の皿が大きく傾いた。キミは聖闘士の敵だとこの天秤は告げた。さあ、キミの本当の目的を教えてもらおうか!!!」
 童虎はそういった。
 オリッサは天秤によってすべてを悟られると、童虎に対し身構え、答えた。
「よかろう。われわれの本当の目的を。」


 


蘇ったエリス!!
風闘士の目的とは!?

第25話
激突!!狼座那智VS西風チョンヤンの巻
キミは小宇宙を感じたことがあるか!?
感想どしどしお待ちしています!
2002年11月2日更新予定!!


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