聖闘士 星矢

〜Last Chapter The Olympus〜


 

 

遥かなる昔、まだ神話の時代とも世界創生の時代ともつかぬ大昔、ガイアの息子にウラヌスという勇敢な神がいた。しかし、ウラヌスは妻であるガイアに反感を買い、ウラヌスの息子であるクロノスに倒されてしまう。
 しばしの間、クロノスは大地を支配するが、ウラヌスと同じように妻に裏切られ、息子のゼウスに殺されてしまう。
 ゼウスはクロノスから全権力を奪うと、自分ともに戦った勇敢な巨人たちを倒し、地の底に再び封印する。そして、自分の信頼しうる妻、子供、兄弟に世界のさまざまな力を持たせ、その傘下においた。

この12の神こそ、オリンポスの12神である。

よく言われるギリシア神話の創生の物語だ。

ゼウスは、狡猾で戦争を好む青銅の種族を作った。彼らは争いを好んだが、白銀や黄金の種族のように何も考えずに生きるような人形のような人間とは違い、生きようとする力を持っていた。

しかし、その後、これらの人と神の間に子孫が増え続け、しまいには、鉄の種族と呼ばれる現在の人間が現れる。彼らは常に自分の快楽を考え、残忍で、悪意に満ちていた。しかし、自分達が快楽を得られるためにはつねに頭を使う種族だった。

 

 長い年月がたった。ゼウスはこれらの種族が嫌いだった。現在の人間の原型となる青銅の種族を作ったのは、誰あろうゼウスであるというのに。 

 

「われわれは全世界(ヘラス)のために再び黄金の時代を築かなければならないのだ!!」


31話「プロローグ 豪壮 オリンポス神殿!!の巻


   

山の朝は早い。まだ1月だというのに5時を回ったほどで早くも薄明が始まり、空が白み始めた。しかし、夜明け特有の靄が一体を包み、凍てつくほどの寒さが大気を包んでいた。
「さ、、、さっみぃ〜なぁ。」
 あまりの寒さに星矢が目を覚ました。よくよく考えるとこんなほとんど使われない官舎などにろくな布団など常備されているはずもない。毛布一枚に包まって寝ていたのだ。ガタガタと震えながら、辺りを見回すと、すでに聖衣を着て、窓際に立つ男がいた。氷河っだった。
「氷河。もう起きていたのか?」
 星矢が全身を手ではたいて温めながら、やってきた。
「ああ、あいにく寒さには強い方でね。」
「それはそうだ。」
 星矢は笑いながらそう答えた。しかし、氷河は顔色一つ変えず、ただ、これから太陽が登ってこようとする東の方角をじっと見据えていた。
「最近、人生について痛切に考えることがある。」
 突然、前触れもなく氷河が言葉を発した。
「なんだよ。急に。」
 星矢は突然のことにそう返したが、氷河の言いたいことが分からなくもない。
「ひたすらに戦い続けたあの頃。」
 星矢と氷河の脳裏にあの厳しい戦いの光景がよぎる。
「だが、人々は何か変わることが出来たろうか?」
 氷河はそうつぶやく。
「まぁな。でも、俺はついさっきまで平凡に暮らせていただけでも幸せだと思ってるよ。」
 星矢は別段悪びれる様子もなく、そう答えた。氷河は星矢のその深く考えることもなく、でもどこか含蓄のこめられた言葉に笑みを浮かべると、こう答えた。
「そうだな。人々がこうして幸せに暮らせることこそ、重要なことだ。」
「俺たちの戦いは無駄じゃない。それはこれから起こる聖戦ではっきりすることだ!!」
 星矢は力強くそう答える。気がつくと、紫龍、瞬の2人も起きていた。
「さあ、行こう。最後の戦いへ。」
 4人は聖衣を纏い、小宇宙を高めると、大きく扉を開け、外へ出て行った。

 

――――アポロン神殿
「アレスが瀕死の重傷だと!?」
 アポロンは、ヘルメスから12宮で起こった出来事について詳細に聞いた。唇をかむしかない。
「ヘルメスよ!貴公ほどの智将がついていながら何ゆえこのような…。」
 機転の利くヘルメスだったが、今度の件ばかりはバツが悪そうにかしこまっている。
「それよりも、今回の騒動の件、神王には極秘であろうな。」
 アポロンがそうヘルメスに聞くと、
「はい。その点については問題はありません。ですが、、、」
 ヘルメスがそういうと、アポロンはその先を答えた。
「アテナのニケのことか。」
 ヘルメスは、アポロンの答えに対し、だまって目をつぶると
「はい。」
 そう答えた。
{こうも、アテナの側に有利な状況ばかり起こるようでは。。。}
 
カラ〜ン…ン…ン…
 突然オリンポスの大きな鐘が夜明けを知らせる。
「むぅぅ。ついに戦の開始を知らす夜明けの鐘がなってしまったか!」
 ヘルメスは、事情を知るとすぐに自身の神殿へ戻ろうとした。
「私めもすぐに神殿に戻りますゆえ。」
 アポロンは、黙ってうなづく。
「問題はありませんぬ。たとえ、ニケの力があろうと人間どもには神との戦闘の経験量がz絶対的に不足しております。そう簡単にわれわれが負けることはありますまい。」
 アポロンの顔は、しかしはれなかった。
「それは分かっている。だが、何かがひっかかるのだ。」
 それ以上話しても埒があかない。そう判断したヘルメスはそのまま、アポロンの神殿を立ち去った。

 

オリンポス神殿第3階層
「さあさ、お前達。ここに集まれ!!」
 昨日まで聖闘士たちの相手をしていたダイモスが、やってくると星矢たちに向かってそう号令をかけた。
「あぁ、あぁ。分かっているよ。たかだか4人しかいないし、第一もう4人とも集まってるじゃないか。」
 そう、星矢があしらう。
「うるさい!こうせんと集めた気がせんだろう。」
 妙に反抗的な星矢たちにやきもきしながらも、ダイモスはオリンポス神殿の構造を説明した。
「オリンポスの神殿には13の神殿がある。」
「!」
 星矢たちは驚いた。12神のはずのオリンポスに何故、13の神殿があるのか?
「といっても、そのひとつはゼウス様の地上での神殿であり、ハデス様がこの地上へお姿をお出しになるときの仮の神殿だから今回の戦いには直接は関係ないがな。」
 星矢たちがほっと胸をなでおろすと、ダイモスはさらに説明を続けた。
「いいか。12神には実は格付けがあるのさ。」
 そういうと、近くの地面に足で図を書き始めた。
「あいにく人はこないから案内板なんて便利なものはない。」

 そういうと、まず3角形を形作るように3つの四角を書いた。
「まず、世界のすべてをしきる三界の王がいる。頂点をゼウス、右が海王ポセンドン様、左がハデス様。だが、ハデス様はさっき言ったように地上にはいない。だから、ここは地上にゼウス様がおられるとき、ゼウス様が利用する。ここを第1階層といっている。」
 次に、3つの四角の下に4つの四角を平行に並ぶように書いた。
「次が第2階層だ。ここはゼウス様が護る女神たちの階層だ。ゼウス様の妻ヘラ様、ゼウス様の姉に当たるデメテル様、そして、美の女神アプロディテ様、そして、お前らの護っていたアテナの神殿がある。」
 星矢たちはアテナの神殿の位置をしっかりと確認していたが、とくにダイモスにたずねることもなく、その先を聞き続けた。
「女神だからといって甘く見るなよ。さて、最後に。」
 今度は6つの四角を書いた。
「第3階層。ゼウス様の子供達の神殿さ。ここには俺のあがめる戦神アレス様。酒の神ディオニソス様、太陽の神アポロン様。月の女神アルテミス様。商いの神ヘルメス様。そして鍛冶の神ヘパイストス様の神殿がある。」
 そういうと、瞬は最前線に女神であるアルテミスがいることに気付く。
「なぜ、同じ女神であるのにアルテミスは第3階層にいるのですか?」
 ダイモスは聞かれると分かっていたのか得意げに答える。
「アルテミス様は弓の名手。戦闘にたってこのオリンポスから人間に檄を飛ばせるようにここに配置してある。もっともアテナと入れ替わりになることもある。だが、」
 ダイモスはそこまでいうと、一度軽く神殿の上の辺りに見て、再び続けた。
「今回の12神側の統率はアテナがなさることになっている。」
「!」
 星矢たちは驚きを隠せない。
「そのため、各神殿からもっとも情報の伝わりやすい第2階層の中心に神殿を構えておられる。」
 未だ驚きを隠せない星矢たちだったが、ダイモスはさらに今回の戦いのルールを説明していった。
「各神殿へは、すぐそこから6つに分れている階段から行ける。ひとたび階段に足を踏み入れれば、そこから先はその神の領域。それぞれの神直属の選りすぐりの闘士や、副神が門を護るだろう。アレス様であればこの俺様であったりな。」
 そこまで言うとダイモスは笑い、
「クックック、だからおそらく12神自身と君たちと戦うことはまず無理だろうなぁ。」
 ダイモスはそう馬鹿にする。
「まぁ、いい。やってみなければわからないことだ。」
 そして、忘れていたように時計に目を向けると、最後の一言を付け加えた。
「そうそう。先ほど鐘がなったろう。これから1時間ごとに鐘のなる回数が増えていく。そして12回なったとき、つまりオリンポスの神殿が黄昏を迎えたときまでに12のすべての神を降伏させなければ、12神側が防衛しきったこととなり、君たちの敗北となる。いいかね?」
 そういうと、ダイモスはそこから続く階段のひとつのほうに向かって歩き始めた。星矢はこうしちゃいられないと、構えると、
「お前も今回の神の一人なら、まずお前から倒してやる。

 

食らえ!!ペガサス流星拳!!!                     」

 

 そういうと、星矢はアレスの僕、ダイモスに技を放った。
「フハハハハ。残念だが、まだ早いぞ。おまえらにはなぁ。」
 そういうとダイモスは流星拳を軽々と避けると、お返しに両手を天に突き出した。
ドゴ〜ンン。。。
 と大きい音が鳴ると、星矢たちの周りに地響きがなり、あっという間に4人ともひっくり返されてしまった。
「また言い忘れたが、今の君たちでは私たちに勝つことはできん。それはオリンポスには結界が張ってある。人間は本来の力の10分の1も出すことなどできんのだ。」
 ダイモスはそういうと、さらに先へと歩いていってしまう。
「まあ、ゆっくり登ってくることだ。火が沈む前までにな。フハハハハ。」
 そういうと、見えなくなってしまった。
「そういうことか。」
 紫龍がつぶやく。昨日からどうもおかしかった。星矢が雑兵にたこ殴りにされて帰ってきたり、料理の皿が上まで持ち上げられないなど何かの力に抑圧されていることは分かっていたが、はっきりとそれが分かってしまった。

カラ〜ン…カラ〜ン…ン…ン。


 4人が打ちひしがれている間に2つ目の鐘が鳴った。
「ううむ。何もできないうちに2つめの鐘が。。。」
 紫龍がそういっていると突然大きな声で星矢たちを呼んで来る者がいた。
「星矢〜。星矢〜!!」
 貴鬼だった。牡羊座の黄金聖衣を身にまとって。そして、その後ろにはアルゴの4聖闘士に、邪武に、市に蛮がいた。
「はぁはぁ。星矢。遅くなってごめんよ。アテナのニケを持ってきたよ!」
 星矢はアテナのニケを見た。
「アテナのニケだ…」
 そういって、近づく。
「しかし、アテナのニケが何故こんなところに。アテナが片時も離されない大切な尺丈を。」
紫龍はそういった。そして、貴鬼は続けた。
「人類の叡智さ。」
「人類の叡智!?」
 ちょっと前に一輝に教わったことをそのまま、伝えようとする。
「まあ、いいや。ちょっと使ってみようよ。」



 


ニケの力で蘇れ聖闘士!!
そして究極の聖衣が!?

32話 ニケの力!!の巻
キミは小宇宙を感じたことがあるか!?
感想どしどしお待ちしています!
長い間お待たせしましたm_\_m 20030504


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