聖闘士 星矢

〜Last Chapter The Olympus〜

 


32話「ニケの力!!の巻


   

「まあ、いいさ。とりあえず使ってみよう!」
 貴鬼は得意げになってニケを星矢に渡した。
「星矢!アテナのニケをしっかり握って。そして自分の小宇宙を最大限に高めるんだ!!」
 星矢は言われるままにニケを握って、自らの小宇宙を高めた。するとどこからともなく聖衣の共鳴する音が鳴った。
「おお!聖衣が共鳴している。」と紫龍がつぶやく。
 しかし、今度の共鳴はただの共鳴ではなかった。青銅聖衣だけでなく、黄金聖衣やほかのすべての聖衣が共鳴する、まさに聖闘士のすべての正義が、地球上のすべての正義が凝集するような輝かしいまでの共鳴だった。
「僕の聖衣も。そして貴鬼君や蛮や市の聖衣も共鳴している!」
 瞬が簡単の声をあげる。
「いや、待て!!下界から、何かが来る!」
 紫龍がそういうと下界から黄金色に輝く物体が迫ってきた。
「黄金聖衣!!」
 星矢たちは一同に叫んだ。
「俺たちにぶつかってくる!!」
星矢が避けるまもなくそれらは黄金に光につつまれたままなくなるとかわりに、星矢たちの体の周囲が黄金色の靄に包まれた。
「ま、まさか!!」
 蛮が叫ぶ。そして、、、

星矢の聖衣があのハデスの神殿でみた気高き神聖衣に変わっていた。

「これはまさしく、あの死闘の末に得た神と戦うための聖衣!神聖衣だ!!」
 そう叫ばずにはおれない。
「そうさ!これがニケの力!アテナがこれまでに戦ってきたすべての記憶が蓄積されたまさにアテナの知恵!そう、人類が戦ってきた様々な試練の成果でもあるのさ!」
 貴鬼が喜び勇んでそういうと、紫龍が、
「人類の叡智とはまさしくその通り!!」
「これなら、いける!!」
「どうやらさきほどダイモスの言っていた結界の力もこのニケの力によってなくなっているようだね。」
 瞬がそういう。みなぎる力。まさにこれからの最後の戦いにふさわしい輝くばかりの力だった。
「さあ、行こう!!」
 星矢はまたしても誰とも打ち合わせることなく、自分の目の前に続いていた階段を進んでいった。
「星矢兄ちゃん待ってよぉ〜!!」
 牡羊座の聖闘士とは思えぬ軽率ぶりであっさりと星矢の後を着いていってしまった。
「おい!お前たち待て!!」
 邪武がそう止めたがすでに遅かった。
「まあ、いい。ここは一刻も早く戦いを始めねば日暮れまでに12神を倒すことは出来まい。」
 紫龍がいう。
「そうだな。ようは戦力が極端に集中しないようにすればよい。」
 氷河がそういうと、氷河と紫龍もそれぞれまた別の階段を登って行った。
「そうだね。邪武に市も蛮もそれぞれ行くんだ。」
 瞬もまた別の階段を登って行った。
「いいざんす!!アルゴの聖闘士君。君たちはまだ役不足かもしれないざんすけど、全聖戦を戦い抜いたこの偉大な先輩達のなかで自分が助太刀したい聖闘士の後をついていくざんす!!」
 そういって、市と蛮も残った2つの道をついていく。
 その後から、
「それならここかな?」
 オデッセウスとテレマコスは市の行った方角へ、テレゴノスとエウリュロコスは蛮の後についていった。
「やっぱりあっちか!!」
 邪武がそういって、少しすると、遠くから声が聞こえてきた。
「あんたたち、そんなうちらに信用ないざんすか!!」
 邪武は薄笑いを浮かべると、
「さてオレは…。やはりこっちか。」
 そういうとある一つの階段を登っていった。
  

-----アレス神殿
「ダイモス!!ダイモスはどこだ!!」
 大怪我をしているというのに、それはまるで全世界を叫喚に陥れるほどの大きな声であった。
「なんでございましょう。軍神アレス様!!」
 たった今、神殿に帰ってきたダイモスがアレスの前に現れた。
「先ほど、聖闘士供の小宇宙が急激に増したように感じられたが。」
 それを聞かれるダイモスもすでに感づいていたが、どうやら聖闘士たちがアテナの忘れ物『ニケ』を手に入れたらしいことを察知していた。
「はい。残念ながら、聖闘士たちの元にあのアテナのニケがわたってしまったようです。」
 何か怒られるかと思っていたダイモスだったが、エリスとの戦いでその怒気がなくなったのか、それとも今回の聖闘士戦での敗北で何かを得、少し落ち着きを学んだのかよくわからない。そのときのアレスは特に癇癪を立てるでもなく、静かに言い放った。
「そうか。分かった。聖闘士たちは強い。わしも全力を持って戦うが、くれぐれも気を抜くな。それまでダイモスおまえにこのアレス神殿までの防衛の全てをゆだねる。そして真の神となるのだ!!」
「はっ!!」
 アレスの心強い励ましにダイモスは胸を熱くすると、すぐさま門前にて多くの戦闘士たちを集め始めた。
「ペンテシレイア!!」
 ダイモスが大きな声で叫ぶとその女戦闘士は現れた。
「お前達はこの先に行き、やってくる聖闘士と戦闘を始めるのだ。」
「はいよ〜。ダイモス。あんたはこの門前で見張るんだね?」
 ペンテシレイアはダイモスにたずねた。
「そうだ。これより先の神殿に聖闘士は1歩もいれん!!」
 ダイモスは力強く拳を握り締めると、そういった。
「すごい気合だね。これだから男は。。。」
 ぶつぶつ言うとペンテシレイアは下の方へ歩き出した。

 

-----ヘルメスの神殿
 ヘルメスはただ無言だった。今回の騒動の発起人は誰あろう彼であったからだ。彼が仕組んだ罠は聖闘士に欺かれて破られたのではない。実のところそれは内部の分裂が原因であったのだ。その上、彼は右腕ともいえるべく風闘士の4大風を失ってしまったのだ。
「人の心は風のように気まぐれ。それを長い間学んできたというのに、まだ理解せずにいるのか?」
 ヘルメスは自分自身の周りにまとう風を感じながらただ神殿の端から聖闘士の向かってくるであろう階段の方を見やった。
「鉄の種族。いや、もしかして人間は。。。」

 星矢はひたすらに走る。貴鬼も走る。ただ走る。永遠に続くかと思える階段を。
「星矢の兄ちゃん!!敵はまだなのかな?」
 少し息を切らせながら貴鬼が言う。
「バカいうな!!いつもこの程度の長さの道のりは体験しているはずだ。大丈夫だ。まだ先は長い。無駄なことを考える暇があったら、辺りに気を配るんだ!!」
 先ほど何も考えずに飛び出したのは星矢だったが、それと同じ人物とは思えぬほど慎重な意見を述べた。相変わらずな星矢に呆れていた貴鬼だったが、そう思った直後に何かが星矢の体を掠めた。
 ヒュッ!!
 何かが飛んできた。星矢の体に向かってくる。交わす。しかしその後、まるで銃器で連射したかのような勢いで光の弾のようなものが飛んできた。

 

「クリスタル・ウォール!!」

 

 貴鬼が慌ててクリスタルウォールを張った。弾き飛ばされるその光の弾は何かのエネルギー体でもなく、なんと銃弾であった。
「バカな!!銃弾とは!?」
 星矢が驚くのも無理はない。未だかつてここまで卑怯な武器を相手にしたことはなかったろう。戸惑いを隠せない星矢だったが、クリスタルウォールの威力も束の間、あっという間にその銃奏によって破られてしまった。
「何!しかしたかだか銃器の乱射ごときでクリスタルウォールほどの技が破られるはずもないと思うが…。」
 そういっているうちに銃奏は止み、代わりに一人の男が現れた。
「ハハハハ…。どうだね?私の催した宴は楽しんでもらえたかね?」
 男はほんの些細なハードレザーか何かのような素材で出来た衣を纏っていた。男は大柄で無精ひげを生やし、煙草を加えていた。いかにもこういう軍隊上がりのスイーパーといった感じで好感は持てない。この男の驚くべきところは底ではなかった。何かのスカートのようなもので下半身を隠していたと思ったが、実は下半身に足はなかった。彼の腰から下は蛇そのものであった。
「私は機闘士たちの長を務める戦車(チャリオット)のエリクトニオス。」
 星矢はエリクトニオスと戦うために構えたが、貴鬼がそれを制止した。
「星矢の兄ちゃん。やつらは本気だ。ここで彼らをやっつければ続く機闘士たちは敵ではないだろう。ここはおいらに任せて先に、この神殿に向かってくれ。」
 貴鬼はそういうと、星矢にテレポーテーションをかけた。
 一瞬にして星矢の姿形がなくなった。
「何!?星矢をどこへやった?」
 エリクトニオスが叫ぶと貴鬼は答えた。
「星矢の兄ちゃんはハデスを倒したほどの聖闘士。お前ごとき機闘士を相手にしている暇はないのさ。」
 エリクトニオスはその挑発的な言葉に機嫌を底ね再度訪ねた。
「だからどこへやったというのだ!?」
 貴鬼は軽く皮肉笑いを浮かべると言った。
「この先の神殿さ。」
 エリクトニオスは星矢を追おうとしたが、すかさず貴鬼はエリクトニオスに向かって技を放った。

 

「スターダスト レボリューション!!」

 

星矢は貴鬼によってどこかへ飛ばされた。暗闇だった。ただ、そこは何か時計のような音が聞こえたりといつもの神殿とは思えない様子だった。
「こ、ここは?」
 星矢がそういうと急に灯りがともり、その前には一人の男がいた。男はローブを纏い、車椅子に座っていた。
「ようこそ!ヘパイストスの神殿へ!!」
 男はそういった。
「もしや貴様は…!?」
「その通り、私はヘパイストス。鍛冶の神だ。」
 車椅子の男はヘパイストスと名乗った。あたりを見回すと、底にはたくさんの発明品、武器、銃器が飾られていた。それだけではない。いろいろな装飾品もあった。
「私は生まれてすぐに足を失った。それどころか産まれた時点ですでに奇形児として扱われたよ。」
 星矢には男の体が妙に貧相に見えた。とてもあのエリクトニオスのような男を幕下に持っているとは思えぬほどに。
「世の中の美とはどのようなものかね?便利な道具は誰が作り出しているのかね。」
 男はどこかで見覚えがあった。そうだ!この前の雑誌に紹介されていたいかにもおたくっぽい外人実業家。パソコンのパーツを作っている会社の社長さんだった。
 ズガンッ!!何かが光り、そして破裂するような音が聞こえたかと思うと、星矢のすぐ目の前で爆弾のようなものが爆発したのだった。
「私には筋力はない。だが、君はこの私に指一本触れることはできないだろう。」



 


鍛冶の神ヘパイストス参上!!
貴鬼対エリクトニオス!?

33話 念動VS銃器!!の巻
キミは小宇宙を感じたことがあるか!?
感想どしどしお待ちしています!


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