聖闘士 星矢

〜Last Chapter The Olympus〜

 


35話「時の歯車!!の巻


 

-----アテナ神殿

 オリンポスの山々の中腹、第2階層と呼ばれるゼウスの守る女神たちの住まうこの神殿で、アテナは目下の第3階層を眺めていた。日はしっかりと出ていた。かれこれ日の出から2時間近くが経過し、薄もやがかかっていた山の谷合の方もだいぶ視界がよくなっていたからだ。このオリンポスの聖戦が始まったとは思えぬほどの陽気な天気の中、アテナの目に思いもよらぬ光景が映し出された。

 

ドゴォォォォ・・・ォォ・・・・・・

 

それはヘパイストスの神殿の方から見えてくる。アテナ・エクスクラメ−ションにも劣らぬ脅威の爆風であった。
「何事があったのです!しかも見ればあのヘパイストスの神殿のほうからは星矢の小宇宙も感じられる。」
 アテナは驚きを隠せなかった。だが、そこまではまだよかった。神と聖闘士の真剣勝負である。このくらいの激戦があってもおかしくはない。だが、再びアテナの目に映るものは・・・。


-----
ヘパイストス神殿
「バ・バカな!!あたり一面が黄金の神殿に変わってしまうなんて。しかも外にはこの気候では考えられない美しい草原に野原が・・・。」
 星矢の放ったペガサス流星拳を軽々と見切ると、ヘパイストスは再び車椅子に座った。
「あいにく長時間はたつことができない。だが、このカオティック・デスティネーションを打つには私が立たねばならぬほどの力を必要とするのだ。」
 ヘパイストスは大きな汗をかいていた。そう、ヘパイストスは自らが言うように足を悪くしているのだ、生れつき、定められたものとして。
 星矢はあたりの豹変ぶりにしばし戸惑っていたが、ここでまけているわけには行かない。再びペガサス流星拳を打とうとした。
「無駄だよ。いくら君があがいたところで、このカオティック・デスティネーションにかかればあたりの時間は逆流を始める。そして物体の存在の矛盾を大いなる宇宙が確認すれば物体はすべてこのカオティック・デスティネーションの時へと収束してしまうのだ。」
 そして汗をぬぐうと再び大声をあげて言い放った。
「そう、すべては私の思う時代へと変わるのだ!!」
 しかし星矢も決して負けてはいなかった。

 

「ペガサス流星拳!!」

 

再び、星矢が流星拳を放つ。だがまだヘパイストスには効かなかった。
「さあ、君がその姿でいられるのもあとわずかの間だ。せいぜい無駄なあがきしているがいい。クックックッ・・・。」
 しだいに星矢の体の周りを光のもやが包み始める。どうやら、時間をつかさどるクロノスの診断が星矢の身にも起こり始めているようだった。古びた神殿がかつての黄金を取り戻したように、そして星矢は自らが存在しないはずの過去へ戻される。つまり無へと追いやられてしまうのだ。
 ふいに星矢に激痛が走る。体が断絶を起こしたような痛みは体の至るところで起こっていた。
しかし星矢は戦おうとする意識を失わない。再び小宇宙を燃焼させ始めた。
「ウォォォ・・・、燃えろ俺の小宇宙・・・。」
「はははは、さあ戦うがよい。お前の宇宙とこの大いなるクロノスの時の宇宙とどちらが正しいか自らが問うてみるのだ。」
 星矢の青銅聖衣にひびが入り始める。
ピキッ・・・!
 やがて体のすべての聖衣がひび割れ粉々に散ってしまった。
「ハハハハ・・・。どうやら天馬座の聖衣は私の描いた時代には存在しなかったようだね。」
 ヘパイストスがそう言ってふと神酒を口にした瞬間。
パリィィ〜ン!!
 突然神酒のグラスが割れた。
「何事だ!!」
 しかし気づくのはもう遅かった。その衝撃は星矢から放たれたものだった。
 そして星矢の体には神ほどまでに高められた小宇宙と神々しいまでの神聖衣が身についていた。
「ヘパイストス!どうやらかつての天馬座の聖闘士は神にも勝る宇宙の持ち主だったようだな。以前の神聖衣がこの俺を救ってくれるとはな!」
 そう、天馬座の聖闘士は神話の聖戦でハデスに一撃を加えた優秀な聖闘士だったのだ。神の聖衣、そして大いなる小宇宙はその聖衣にも残っていたのだ。
「バカな!聖闘士は一体いつからいたというのだ?ゼウス以前!?いやばかな!?」
 困惑を隠せない。ヘパイストスの目論見はこうだ。ゼウスのおらぬ古き時代に帰り、ゼウスを排除そして、クロノスを支配するということだ。
「なぜ!?なぜ貴様は消えんのだ!?」
 だが、もはやヘパイストスには時間はなかった。星矢の放ったペガサス流星拳によって痛手を負ってしまったのだ。

 

「ペガサス流星拳!!」

 星矢の放つ流星は時を超え、宇宙を超え、カオティック・デスティネーション中のヘパイストスめがけて飛んでいった。そして流星から彗星へ。星矢の攻撃はまさに時を越えた脅威の一撃であった。

 

「ペガサス彗星拳!!」

 

「グハ〜ッ!!」
 もともとからだの不自由をからくりでカバーしていた神だ。技を防ぐ手段がなくなるとそれはただの人間ほどの守備しかできなかったのだ。

 

-----ヘルメス神殿

ヘパイストス神殿の様子を見ていたヘルメスがつぶやいた。
「ヘパイストスが謀反を起こしたか。」
 すでに謀反を起こしかけていたヘルメスはヘパイストスのその様子を見て苦笑いを浮かべた。

 

-----アルテミス神殿
「なるほどね。どうやらこの聖戦。」とアルテミス。

 

-----アレス神殿
「神対人の聖戦だけでは・・・。」とアレス。

 

-----バッカス神殿
「ないようだな。」とバッカスがつぶやく。
 第3階層の各々の神々はそうつぶやかずにはおれなかった。

 

「どうだ!!ヘパイストス。自らの体にこの俺の技を受けた気分は!?」
 するとヘパイストスはあっさりと負けを認めた。
「うむ。この戦い。私の負けのようだな。」
 そういうと、瀕死の体をなんとか維持しながら星矢に言った。
「だが、これだけは忘れるな。オリンポスの12神は決して単なるゼウス血族の集団ではない。このように常に互いがライバルなのだ。そしてこのしたたかな冷戦こそがこのオリンポスの本当の戦い。それを忘れれば、お前たち人はこの神たちに利用され、人の世界に帰ることはおろか、二度と下界には帰れなくなるぞ。」
 星矢はその言葉を胸にヘパイストスの神殿から立ち去ろうとした。
「星矢よ!忘れたのか!?神は侮れぬということを!?こうして風前のともし火の私ですらいま生きることを全力で考えている。そして必ずやこの世界を治めんとしているのだ。」
 星矢は足取りを速め先へと急ぐ。
「いいのか!?星矢この私にとどめを刺さなくても。。。」
 ヘパイストスはそういった。しかし星矢は去り際にこう残した。
「ヘパイストスさんよ。人間はそこまで非常には、、、神にはなりきれない。そう、だから人間なのさ。甘かろうがな。あんたを殺すことはできない。」
 

-----アテナ神殿

 

 大爆音とともに、ヘパイストス神殿を中心に黄金の神殿と美しい野原が広がる。その姿を見てアテナは再度驚いた。
「何ですか?あれは一体!?これはまるで神話の時代の神の住処『エリシュオン』にも劣らぬ楽園。このようなところがなぜこの険しいオリンポスの山に現れたのです。」
 アテナ神殿には誰もいない。いやいなかった。しかし、ここに来てアテナのサイドにも再びアテナを守るべく『聖闘士』が現れた。
「アテナよ。何を考えておられる?」
 4人の男がアテナ神殿に現れた。
 一人は黄金の瞳に瑠璃色の髪を持つ男。もう一人は銀色の瞳と黒い髪を持つ男。またその後ろにはルビーのように紅く輝く髪と瞳を持つ男。対象に透き通るほどに澄んだスカイブルーの瞳と髪を持つ男だった。
「あなた方は?」
 アテナは4人の男に声をかけた。そして先頭の黄金の瞳の男がそれに答えた。
「我々はゼウス様の側近として仕えるもの。天闘士(エンジェル)にしてその天闘士をすべる4人の上級天闘士(アークエンジェル)。」
 そして、端の男から一人ずつ自らを紹介していく。スカイブルーの男が一歩前に出て、
「私は、上級天闘士、天文と自然を統べるものウリエル。」
 続いて紅い男が前に出た。
「私は、愛と祝福の天使ガブリエル。」
 そして前の二人のうち、黒い髪の男が答えた。
「私は癒しの天使ラファエル。」
 そして最後に黄金の男が答えた。
「私は、神の代弁者にして最初の天使ミカエル。」
 そして紹介が終わるとミカエルが答えた。
「ゼウス様の指令で、このアテナ神殿に赴き、アテナが今回の聖戦で各所へ伝令を伝えるとき、われわれを使うようにとアテナに伝えよ。ということです。」
 アテナはそれを聞くと、
「では、ただちにヘパイストスのところに行って、あの惨憺たる状況と勝手な行動を慎むように伝えるのです。これは聖戦なのです。神々同士の血を分けた争いにはしてはなりません。」
 そういうと、ミカエルがウリエルに目配せした。
「わかりました。私がヘパイストスのもとに赴き状況を調査。謀反となればそれを中止させてまいりましょう。」
 言うが早いかウリエルはアテナの神殿から立ち去った。そしてそれを見届けてから、ミカエルが再び2人の男を紹介した。
「アテナよ。各神殿とも若干名ほどの闘士をその門に配置しております。聖闘士は数が多いゆえ、一人では神殿を突破されてしまうこともあるでしょう。」
 そして二人の男が前に歩み出た。
「今回、冥界よりアテナをオリンポスの12神側としてお守りしたいと考えていた男を二人ほどお付けしましょう。」
 いうと二人はアテナに挨拶をした。その二人とは、果たしてアテナにはゆかり深い、そしてゼウスの姿と瓜二つのあの兄弟であった。
「サガ、、、そしてカノン!」
 前に歩み出た聖闘士というのはサガとカノンであった。
「アテナよ。あなたはオリンポスの12神であったのだ。人は気ままな生き物。このように人間に勝手な行動を、あなたが許されたのなら、われら兄弟は未熟な人間として最後の神の使いとして働きましょう。」
 サガはそう答えた。
「所詮はケツの青いあの星矢たち青銅製闘士。いまだ悟りきれぬ彼らに勝機はありません。」
 とカノンが答える。
「我々兄弟があなたの最後の聖闘士としてお仕えしましょう。」



 


突如として現れたサガとカノン!!
神の数々の権謀術数を星矢たちは見破れるのか?!

第36話 神界でもっとも陽気な男!!の巻
キミは小宇宙を感じたことがあるか!?
感想どしどしお待ちしています!
遅れて大変申し訳ありません


トップへ戻る