アトリエ・リング 一級建築士事務所

私たちは、さいたま市浦和区の設計事務所です。環境に向き合う住まいづくりを、お手伝いします。

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関井記念館

関井記念館

「関井記念館とは、住むことがなくなった後も、この家との思い出を大切に守り続けてきた関井邸の大屋さんによる愛称です。長い年月の中で様々な編纂を遂げてきたこの家の、新たに刻まれる記憶。」

この文章は、2010年12月17日から2011年3月27日までの土日に、さいたま市浦和区岸町の旧関井邸において行われた展覧会のハガキの案内文です。上の画像はそのハガキからのもの。このお宅は不思議な雰囲気があって気になっていたのですが、近所のわりにはあまり通らない筋にあって、3月末にたまたま通りかかったら、門のところにこのハガキが貼ってあり、展覧会の開催を知りました。東京造形大卒の若い美術家3人が、空き家になったこの住宅をアトリエ・作品発表の場として協同で借り受け、今回、第一回目の展覧会に発展したというものです。

玄関を入ると、やや高い床で、式台の部分にクッションの入ったビニールのようなカーペットが貼られています。玄関の次の間から左の座敷に入ると、橋本直明さんの展示「trip」(下の写真)。和の座敷の設えを生かした空間でした。

橋本直明さんの展示

玄関次の間から右手には、荻原貴裕さんの展示「其処ニ在ル物ヲ見ル為ニ」(下の写真、右手が玄関)。押入れの中に映えてきた草にスポットライトが当たり、激しいドゥローイングが空間を埋めていました。

荻原貴裕さんの展示

さらに奥の急な階段を上がると2階の全体が鈴木のぞみさんの展示で、和室に「記憶を辿る」(このお宅の庭の植物から写真や版画の手法で標本を作るような展示)、「記憶のぬけがら」(写真が変容していく様をインスタレーションしたもの)(下の写真)。

鈴木のぞみさんの展示、和室

庭に面した開口部には「庭の肖像」(庭の木々のイメージを、版画のようにカーテンに定着させているもの)(下の写真)。

鈴木のぞみさんの展示、窓辺

住むことがなくなった住宅が、アートによって新たに再生し、地域の人々にみていただけるというのは、なかなか素晴らしい試みだと思います。来る6月には。次回の展覧会の予定も組まれているそうです。(写真・文;青山恭之)

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