essay

写真集「家」と「生きられた家」

  私の手元に、「家  meaning of the house」と題された写真集がある。発行は、今から四半世紀前の1975年である。今にしてみれば、この年は、私が建築というものに身を傾け始めたころ(建築学科入学のころ)でもある。この写真集の撮影者は篠山紀信で、その解説にあたる文章を評論家の多木浩二が書き、のちにそれが独り立ちして「生きられた家」として出版された。

  私がはじめに知ったのは、「生きられた家」のほうで、その時にはすでに、写真集「家」は一般の書店にはなく、偶然入った古本屋で、定価より御買い得のものをみつけ、 帰りの電車賃をすら気にするような状態で、何とか手に入れたことは忘れられない。「生きられた家」は、その後内容を改め、版を重ねている。それぞれの「生きられた家」は、同じテーマを引きずりつつ、あらたな問いかけを展開していく。

  「家」に写し込められている様々な生きられた家々と人々の姿を見るたび、多木浩二の思考もさる事ながら、篠山紀信の写真の力(静かな写真の饒舌な語り)に、常に圧倒される一冊である。


「家  meaning of the house」   篠山紀信著・潮出版社 1975発行 

「生きられた家」               多木浩二著・田畑書店 1976第一刷発行
「生きられた家  経験と象徴     多木浩二著・青土社   1984第一刷発行

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