twnovelまとめ


2009/10/28

061「私小説1」
#twnovel 端的に云へば、先をどうするかという話をするのがほとほと厭に成つたのである。自分にはいまの生活からちやんと毎月の手当の出る仕事に乗換るか、この女と別れてもう少しこの仕事で我慢してみやうかと云ふ、ふたつの選択肢しか浮かばなかつたのである。現今考えても二者択一である。
062「私小説2」
#twnovel 会社の飲会で私の写真を見せた所「嗚呼、顔以外にいいところがあるんでせう」と云はれたさうである。例さうであつても其を正直に私に告げる辺り、矢張不満なのであろうと思われた。今考えても、何が好くてあたしはこの人と一緒になつているのだろうと思い始めていたのかもしれない。
063「私小説3」
#twnovel 夜中に電話がかかってくると渋谷のドンキホーテにいて、この雨の中壁掛時計の買出しに出ていてしんどいと云ふ。しんどい、と云はれても携帯屋の残業なのだから仕方ないぢやない、とは応へられず生理重い雨辛いと云ふ涙声は沸々と自分への怨嗟なのだろうと思つて大人しく聞いてゐた。
064「冥王星」
#twnovel 冥王星のSMAPはメンバーが14万人くらい。大半は死んだ魚の目をしている。芸能人なのでテレビで見られるが、なにしろ14万人なので俯瞰でないとメンバー全員が写らない。遠景ということは一人一人の顔もよく判らないので、死んだ魚の目でも問題ない。世の中よくできている。
065「あの日にかえりたい」
#twnovel 「泣きながらーちぎった邪神をー」「ぎゃー。ちょ、ちょっと勘弁してくださいよ」「いいじゃない減るもんじゃなし。あんたも邪神なら抵抗するとかなんとか」「あのっ、そういうのとはベクトルが」「お前は高校生か」「いや邪神ですが」「じゃあ」「じゃあじゃなくてっ! もうっ!」
066「宗匠芭蕉」
#twnovel 宗匠芭蕉若き日、藤七郎として仕官していたときの話。日が暮れんとする背後、伊賀の山すそから月がぼんやりとのぼってくる。菜の花や月は東に日は――と詠みかけたところで突如現れたUFOに攫われた。あのまま詠まれていたら蕪村の立場ァなかった。UFOさんありがとう。そうか?
067「矛盾2009」
#twnovel どんなものも突き通す矛とどんなものも突き通せぬ楯があった。ではその矛で楯を突いたらどうなるか。やってみましょう、というわけで実験するたびに担当者が心臓麻痺で倒れる、大地震が起こる、雀蜂が大群で押し寄せる。地面が割れる。残ったのは楯と矛と、ものすごく丈夫な武具屋。
068「DQ」
#twnovel 農道を四人の老人が縦一列に並んで歩いている。砂利道を抜けて線路際の道へ曲がるには直角に、向こうから来る自転車を避けるときも直角に避ける。「よっちゃん」「あァ?」「実際やってみるとくたびれるもんだなぁ」「これでスライムでも出ようもんならなぁ」小春日和の午後である。
069「アレの正体」
#twnovel 年老いたヒトデはこっそりと上陸すると太陽光で周りの固い殻が剥がれ、白く軟らかくなっていきます。アスファルトを往く老ヒトデのほとんどは途中で命絶えてしまいますが、首都圏の高速道路まで粘り強く這う様子は、みなさんもたまに御覧になることでしょう。軍手? とんでもない。
070「黄金餅2t」
#twnovel 山手線に蹴り飛ばされて何処迄も。上野から下谷山崎町を出まして山下、三枚橋から広小路、五軒町、そのころ堀様と鳥居様というお屋敷の前を真直に出て筋違御門から大通、神田須田町、新石町から鍋町、鍛冶町、今川橋から本白銀町。石町、本町、室町、日本橋から東西線で飛んでった。






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