twnovelまとめ


2009/10/28

071「ジェイコブ」
 ルーズソックスに棲むジェイコブは僕らの友人。アメリカにいたころはちょうどいい大きさの棲みかが無かったそうだが、彼の前に福音として現れたのがルーズソックスだったってわけだ。ときたま女子高生が間違えてジェイコブごと履いてしまうこともあるけど、それはそれで楽しそう。
2009/10/29

072「耳血」
 あんまりにも眠いので右耳裏の突起を押し上げ、襞を開くと耳血がとろとろと流れ出た。耳血といっても血ではなくて、神経の澱が溜まった薄青い体液である。ちょっとすっきりした。教室の床はみんなの耳血でワックスをかけたような午後である。
073「河童の風邪」
 河童の風邪を治すには甲羅を乾かすに限る。冬の日では弱すぎる、炭火をカッカと熾さねばならぬ。みなさんご案内の通り火を扱える河童は希有である。しかたなく人家に忍びこむ猛者も昔はあったが、今や原子力である。原子力えらい超えらい。
074「サル」
 猿は人間より毛が三本少ないだけだというのでリーブ21に頼んで三本植毛したらなんだかわけのわからないものになった。湯気をぷうぷう噴くし雨に濡れると紫の斑点が出るし。そんな彼女も今では一児の母なのだから縁ってわからない。娘も俺にそっくりだけど、雨の日は逆立ちで歩く。
2009/10/30

075「オライオン」
 ライトノベルを書く主婦が店にきたので、ラノベ書きの息子にふさわしい名前として「オライオン」との命名を打診した。「ラノベ関係ないし」「いいぞおライオン。勇猛なんだか丁寧なんだかわからない」「もう名前はついてるっつーの」本を買ってくれたが、他にサービスの仕様がない。
2009/10/31

076「ハロウィン」
 とりっくおあとりーと! と夜にやってきたのでお菓子やジュースなどで歓待した。だがしかし! ジュースには睡眠薬が仕込んであったのである! というふうにしたいのでこれからハルシオンを買ってきたいと思います。「通報しますた」「通報しますた」「消防署のほうから着ました」
077「夜とわたくし」
 あんまりの月なので狂ったようにマンドリンをかき鳴らしていると「うるさいですよ」と穴から夜が沸いて出た。「駄目だよ寝てちゃあ」「へへへすんません。いい目覚ましになった」夜が仕事に戻るとあんなに月がつまらない。しかたないのでサングラスをはずして家に帰ったという次第。
2009/11/1

078「駱駝と長芋」
 象さん象さんお鼻が長芋ね。「象じゃないじゃないか」「すみません、船便が遅れてまして」「どうも背中に瘤があるからおかしいと思ったんだ」駱駝の顎に下げられた長芋はスタッフがおいしくいただきました。駱駝にも勧めましたが「わしゃあ痛風でのう」と、ぴしりと断られました。
2009/11/2

079「磯の鮑の」
 アワビは自分が割烹駒八の水槽に張り付いていることに気づいた。「やだ、恥ずかしい部分が丸見え」親にも見せたことのない場所にじんわりとした温み。「ひっ」見れば、水槽にピッタリと掌をつける男の姿が!「どうだ暖かくなったろう」これが恋。
080「桃じゃあなかろうか」
 昔々おぢいさんとおばあさんが光り輝く。柴も桃も李も光り輝き、オームは止まり、志村はだっふんだ。二人を包んだ光はそのまま天空高く昇り、この街を照らしていく(例の浜崎風)。






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