twnovelまとめ


2009/11/02

081「メシヤ」
「婆さんや、メシャ未だかい」「ヤですよおぢいさん。メシヤはついさっき地球を平和にしたぢゃないですか」蓬莱から来たというメシヤはあっちを壊しこっちを繋ぎ、頼みもしないのに色々こなして帰っていった。各国報道は「一体、誰にとっての平和なのか」という点で論調が一致した。
082「おなかいた」
 おなかいたいといったらくすりのみなさいとゆーのでくすりのんだですがおなかまたいたいですおなかからこえがし「当方劣勢、至急援軍求ム」ますがなにゆってるかわかんないしおなかずっといたいのでもっとくすりのみましたらぐーきゅるるゆっていたくなくなりましたどうもありがとう
2009/11/3

083「橋の下」
 橋の上にはマンホールがついていて、開けると縄梯子が下がっている。単に橋の下がどうなっているか見たい人の為だけに備え付けられたものである。見に降りた人は一様に「たいしたものだ」という。何がたいしたものかについては頑なに口を閉ざすが、どうもバナナと関係があるらしい。
084「カボス」
 砂金2キロを呑んで逃走したデアドリー"出戻り"ヒギンズはアパートの焼け跡から黒焦げの焼死体で発見された。盗まれた砂金を取り戻すべく鑑識のところにまで遺体を持ってきたのだが、なんだか連中が嬉しそうで困る。それはいいとしても、遺体の脇に添えられたカボスはなんなのか。
085「東京のヒラサワ」
 山頂晴れてナバホに逢うには日和である。今朝アンダマンの海を越え、ロケットから二歩と半分。ナーシサス次元のサイゼリアで仙人の叫ぶ"ルクトゥン・オア・ダイ"のヴィジョンはハードコア。「間違えてないか? 私は平沢進だぞ。平沢唯じゃない」師匠すいません調子こきました。
086「猫会議」
 猫会議に騙されてはならない。あれは傍から見ると猫が集まっているように見えるが、その実は産まれきた子供が市井に生きるレクチュアを受けてゐるのだ。ベッドを抜け出す術さえ知らぬ子供は夜中ずっと泣いてゐる。抜け出せて、またひとつ利口になったと得意な寝顔をするやうになる。
2009/11/05

087「うしろのメリー」
「私メリー、今アナタの後ろにいるの」「ずっと居てくれないか」俺は振り返らない。「え、ずっと、って」「ずっとだよ。俺かお前かが、逝くまで」返事はない。――ああ、振り向きてえ、と思った刹那、鼻を啜る音がした。柔らかな鼻息が首筋にかかって、ぱた、と涙がうなじに落ちた。
088「地下へ地下へ」
 大変無気力なので早々に寝る。頭は枕を突き抜けてそのままずるずると、地下へ地下へ地下へともぐってややひんやりするのも気にせずに目を瞑っているとやがて硬い地面に出た。遠くで雨の音がする。さすがに肌寒くなってきて目を覚ますと隣に3月に死んだ婆さんがぐうぐう眠っていて。
2009/11/9

089 「ジャックと豆と牛」
 ジャックは貧乏のあまり飼っていた老牛一頭を連れて市場に行き、豆一粒と交換しました。牛一頭=豆一粒という感覚は常人には理解しえないものですが、はて市場では如何な椿事出来があったのか! 勝間出勝和代先生待望の新著『牛と豆は漢字一字なので等価交換できる!』絶賛発売中。
090「宗匠芭蕉シリーズ3」
 宗匠芭蕉65歳の渡欧がそれほど知られていないのは、やはり芭蕉が幕府の隠密として働いていたからでしょう。シベリア鉄道を経てドーバー海峡を渡って仏国のコタンタン半島にたどり着くころにはもう二度目の冬でした。こんな句があります「初雪やノルマンディーに乗るMonday」






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