twnovelまとめ


2009/11/12

101「花嫁まぐろ」
 まぐろは花嫁衣裳を着て教会の庭にたたずんでいたが、待てど暮らせど新郎は姿を見せなかった。騙されたことを認めたくなかったし、いまさら築地の市場に出戻るのも気持ち的に許せない。オーダーメイドの花嫁衣裳は百万もした。うつろな目の彼女を、植え込みの影から猫が狙っている。
102「針医堀田とケンちゃんの石」
 針医堀田、今日も保鍬津のお師匠さんのところに針療治です。今日はお師匠さんとこのケン坊が腹痛を起こしたとの由。「実は腹ちゅうよりちんぼこが痛たた」堀田の針が閃くこと刹那、でぶのケン坊の股座からコロリと出てきたのは尿道結石。「針医堀田とケンちゃんの石」これにて落着。
2009/11/13

103「針医堀田と秘密のヘアッ!」
 針医堀田、丑三つの大騒ぎに目を覚ましますと驚いた。江戸湾からまっつぐに江戸城に向かうのは乱暴者の怪獣レッドキング。M78星雲から飛来せしウルトラマンの活躍に、歓喜の声が八百八町にこだまするのでした。「針医堀田と秘密のヘアッ!」これにて落着。 針医関係ないぢゃん!
2009/11/16

104「宗匠芭蕉シリーズ」
 ローマ帝国の遺跡住居跡にも、宗匠芭蕉の手による「夏草やゲルマン人はみなゴリラ」の句が残されています。西ゴート族をはじめとするゲルマン民族は375(みなごリラ)年に大移動をしているのです。芭蕉は実は塾講師だったという説の論拠として、しばしば取り沙汰される資料です。
105「海に帰る子供」
 海に帰る子供は西日を目指して泳ぎだす。陽を頼りにずっとまっすぐ泳いでいって、それっきりどうなるかわからない。残された父親と母親は自分の子供が点になるまで見送ると、また次の子作りに励む。また何時か世界のどこかの浜辺で、夕暮れに間に合うように子供を作る父と母がいる。
2009/11/17

106「針医堀田と秘密の屁や!」
 針医堀田がどっかの密室に人がいっぱいいるところですかしっ屁こかれて「針医堀田と秘密の屁や!」というのをやろうと思ったけどやめます、ということをわざわざtwnovelタグつけて書いてるんだから確信犯ぢゃねえか、とかなんかそんな感じに秋の夜長は更けていくのであった。
107「針医堀田とある鞄の修繕」
 針医堀田、往診の途中で長年使っていた鞄の取っ手がもげた。針医を志したときに、今は亡き革職人の親父が特別に拵えたものだ。とても棄てられたもんじゃない、と修繕に出すと鞄の底が二重になっていて中には謎の書付が……大長編スペクタクル「針医堀田とある鞄の修繕」乞うご期待!
2009/11/18

108「ライチ」
 おかげさまでライチはすくすく伸びている。ケータイで撮った、まだ芽吹いたばかりの時の写真を見せると若葉はみるみるうちに真っ赤になった。苗全体でぐるぐる廻りはじめた。恥ずかしいのだろうか、翌日にはライチも思えぬ小さな実を一粒つけて斜め45°に傾いでいた。無理すんな。
2009/11/19

109「宗匠芭蕉シリーズ」
 圧政に苦しむエジプトのヘブライ人を救ったのは、なにを隠そう宗匠芭蕉その人でした。先導された人々は郊外の国道沿のバイク王へ殺到。200万台のバイクを盗んで脱出し、水遁の術で紅海を渡り、無事カナーンへ逃げ延びたのでした。「枯野廻(まはる)盗んだバイクでExodus」
2009/11/24

110「ニシキヘビの通勤」
 ニシキヘビの通勤は楽である。どんなに電車が混んでいても網棚の上にとぐろを巻いていればいいからである。しかしながら、そもそも冬には活動していないので人間の会社で働くには不向きであると思われた。なおかつ電車のドアが開いて閉まるまでに、あの長胴を収納できるのだろうか。






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