twnovelまとめ


2011/05/10

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#twnovel 眼鏡は胸ポケットから見つかった。もどった視界は見知らぬ風景は、病院の待合室に思える。薄暗いLEDの下、ぽつぽつと人の後頭部が揺れる。ややあって放送で名前を呼ばれたが行き先もわからず呆けていると、貴方、これは貴方ですのよ、と白衣の女が人様の溺れた写真を見せてきた。
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#twnovel ピノ親方は役所務めの気のいい老父だったが、退官後は兎の着ぐるみで庭掃除や散歩に勤しむ姿が目撃された。様々な噂が町を飛び交ったが、結局、ゴム糊をかぶった親方が階段で腫れ上がったのだという結論に落ち着いた。親方の孫が大量のシンナーを買っていたのが目撃されたのである。
11/05/11

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#twnovel ゆっくりと糸を引き上げると鮮やかな赤の鋏が水面に現れた。マンションに備えつけの小川のようなものだが、誰かが遊び心にザリガニを放したようだ。満足して糸を戻すと、ややあって「俺も俺も」という面持ちで黒々としたワニの鼻先が眼の前に現れた。これにはさすがに悲鳴を上げた。
2011/05/23

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#twnovel 最後に見たのは五日前でした。針と糸を貸せというので、訝しんだのですがいう通りにするとまた黙って部屋に籠りましてね。それで先ほど―珍しく鍵が開いていたのです。入ったら、息子が、抱き枕のカバーの中に詰め込まれてて、婆ぁ邪魔するな、あと三日で俺も魔法少女だから、って…
2011/05/24

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#twnovel 呑んで帰っては暴れるので怒られた。今度同じようなことをしたら虫ピンで留めるというのである。「でもお前ね、大体人が留まるようなのは虫ピンぢゃないだろう」「瓦釘ですわね」確かにそんな話はした気がする。朝日の眩さに目が醒めてきた。登山客が怪訝そうな顔で前を通りすぎる。
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#twnovel 良く云えば多趣味な祖父だった。死ぬ一月前に始めた昆虫採集は出かけず終いで、僕の元には大量の虫ピンが残された。死んだ蝿に刺し、団子虫に刺し、犬の逆襲に遭ったがピンは底を尽かぬ。嫌いなおばさんがいて、糠に入れる釘を寄越せというので、にこやかにぶち撒いたが終わらない。

2011/05/26

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#twnovel 「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが」「死んでた」「そうそう」「干からびて」「イエー」チョコバーはいつまでもチョコの味しかしないのでいい加減に飽きてきました。横を通りかかった猫で口を拭うと、「で」「うん?」「続きは」「ずっと静かなんだ」「そう?」「そう」
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#twnovel ようやくキャラメルの箱を裏返しをすることに成功したが、もうよれよれで、箱としては使い物にならなくなっていた。このままゴミ箱に入れるかその辺にほったらかすかでしばらく迷い、金曜日の資源ごみの日まで猶予を与えることにした。その間に何処かに行って呉れればいいと思った。
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#twnovel 一寸気を抜くとポロリと出るのだ。その度に顰蹙を買い、警察を呼ばれる。いくら見合ったお給金を貰っているとは云え、洗面器で前を隠しながらの給仕はなかなか堪えるものがあった。田舎の両親に黙っているのも辛いのである。前略 おちんこでたりすることもあるけど、私は元気です。
2011.5.27

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#twnovel 「祈れば通じるもんですか」「通じるさ。通じないとわかれば、大半の人は仕事を失ってしまうもの」「だったら僕は」云うべきかどうか迷ったが、「僕は靴下に穴を開けることにしよう。穴をかがるのだって立派な仕事だものね!」






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