お花に囲まれたもも子の祭壇
 
            


*もも子への二つの後悔
     

 一つは、亡くなる前日、もも子は少し食欲がなかったのでした。

 しかし、テーブルの上にあったシュークリームだけは食べたさそうにしていました。

 犬には甘いものは良くないと思い、中の美味しいクリームの部分は私が食べ、外              

 側の皮だけを食べさせたのでした。

 今思えば、甘いものが大好きだったもも子に1個まるごとあげれば、と後悔してお              

 ります。

 でも、このことがテレビで全国に放映されると、多くの方々から もも子ちゃんにお

 供えしてと、シュークリームやお菓子などが贈られて来ました。

 甘いものが大好きだったもも子は、喜んで、それらのお供え物を頂いていることと

 思います。



 もう一つは、汚れている川に入ってごみ拾いをしていたのですが、たまに、きれい

 な川に連れて行くと、本当に気持ちよさそうにのんびりと泳いでおりました。

 もも子は本当はきれいな川で思いきり遊びたかったのでは、と後悔する気持ちも

 あります。

 でも、もも子は最初は、私が喜ぶ顔を見たくて、ごみを拾っていたと思いますが、

 今は、もも子自身がきれいな川、美しい故郷で、生きとし生けるもの全てが楽し

 く幸せに暮らすことを願って、ごみを拾っていたと思っております。


            きれいな川でのびのび泳ぐもも子
   






       平成18年11月12日 もも子逝去す 享年14才

                  新聞掲載の死亡通知
                  

  *最後のごみ

    もも子が亡くなる前日の夕方は今にも雨が降り出しそうな空模様でした。

    その日、私はとても忙しく、もも子の散歩を妻に頼んだのでした。

    私が家にいて、散歩を妻に頼んだのは、この時が最初で最後でした。

    妻が散歩に出かけたとき、途中でお寺に用事があったお客と散歩コースの

    土手で出会いました。

    妻はその場にもも子を待たせ、お客と一緒にお寺に戻りました。

    妻が用事をすませ、もも子のところに戻ったところ、もも子はいつしか降り出した雨の

    中、ポツンとオスワリをして待っていました。

    足元にはどこからか拾ってきたのか、ペットボトルのゴミ1個があったというのでした。

           
 

  *最後の散歩
 

    亡くなる当日の朝は、いつものように車に乗せて近くの河川敷に散歩に行ったので
    
    す。
   
    もも子は車から降りると、その近くで用を足し、後は私が他の犬との運動が終わるま               

    で、車の近くで、休んでいるのでしたが、この時は、いつもと違い、私のそばを離れ

    ないで、一生懸命ついて来たのでした。

    散歩を終えて3時間位経った10時頃から急に呼吸が荒くなりだし、主治医の往診を                

    頼んで手を尽くしたのですが、お昼頃に息を引き取りました。

    今思えば、もも子は妻には 「これが私が拾う最後のごみですよ!」 と、私には 「こ                 

    れが一緒に出来る最後の散歩ですよ!」 と、教えていたのでしょう。 





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                           散歩の途中で一休み        
                  
 

  *もも子との再会

    火葬の前夜、最後ということで、もも子の亡骸と一緒の部屋に寝ました。

    朝方、もも子の夢を見ました。

    もも子と他の犬を連れて、土手を散歩していたのですが、もも子だけが途中から引き

    返すのです。

    いくら呼んでも、悲しそうな眼をして、振り返り振り返り、霧の中をとぼとぼと戻って行

く    くのでした。


    その後ろ姿が本当に寂しそうで、私は一瞬夢の中で悲しくなり泣いてしまいました。

    ところが、その土手は大きな円となっていることに気が付いたのです。私たちが歩む    

    方向と、もも子は逆回りに歩いていたのです。

    そうです、私たちは右回りで、もも子は左回りで歩いているのでした。

    そうか、このまま散歩を続ければ、また、再び会えるんだ、と夢の中で喜んだので 

    した。

    夢から覚めた私は、いつの日か必ず逢えるんだと思い、悲しみが少し和らいだので

    した。

 

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