種子は蒔かれる
1986年Bowieはもう一つの映画で大島渚と関わりを持っている。
核廃絶を祈って作られた、核の恐怖を描いたアニメーションである。

「風が吹くとき」
製作年:1986年
製作国:イギリス
配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画
スタッフ
監督 : Jimmy T. Murakami
製作 : John Coates
製作総指揮 : Iain Harvey
原作 : Raymond Briggs
脚本 : Raymond Briggs
音楽 : Rager Waters
歌 : David Bowie
日本語版吹き替え監修:大島渚

Bowieはこの時、「世界には飢餓や貧困、民族的、宗教的対立があることは解っている。だが、
人類が滅びてしまってはその問題も解決する日は来ない。」と語っている。

Bowieもまた、声高に自らのオピニオンを発するタイプのアーティストではない。
だが、毒ガスを関知する指標のカナリアのように、彼がその歌と声で発している警鐘は鋭く重い。
その歌う姿は最早絶望的なこの世界に、それでも「種子を蒔こうとする」姿に他ならないと私は思う。
それは、近年に発表された、2枚のアルバムからも知ることが出来る。
(「heathen 」と「Reality」いずれも世界に暗雲をもたらしたニューヨーク9.11の後に発表された
アルバムである。)
そうして彼は世界を巡った。彼の声は貴方の足下にも届いたはずだ。


あなたは83年のレノンの命日にBowieが香港公演で歌った「イマジン」を知っているだろうか。
私がその歌の存在を知ったのは、大島渚監督に出したファンレターに監督が返信下さった
「戦場のメリークリスマス」の絵はがきの文面からである。

「12月8日
香港最後の公演でした
Bowieはレノンのイマジンを歌いました。」

種子は受け継がれ、蒔かれ続けている。
たとえ蒔かれる土地が荒れ野であろうとても。
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