「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

これまでの読書会

2011年06月07日


宮部みゆき「火車」

<参加者の感想>

:カードローン社会への問題提起として理解すべきだろうか。ミステリーとしては、あっけない。

:面白く読めて、ひきこまれる。 が、犯人を特定する具体性に欠け、すべて推理にもとづくところが、ミステリーとしての弱点。 作者にとって一番苦しいところを、最後まで書ききってこそ、「作品」といえる。

:なかなか長編を読みきれないが、作者は会話文を多くしてページ数を稼ぎ、読みやすくさせている。時代性がよく現れている。 素材の見つけ方が上手い。

:読んだことのある作品だが、内容は忘れていたので再び読んだ。 児童文学から出た作家かと思っていたが、どうだろう。 描写がくどく、まどろこしい。カード破産と言うテーマも、、今では古いのでは。
犯人像も素直すぎる。人を殺し、その身分を乗っ取るような女が、殺した相手がカード破産者とわかったくらいで、行方をくらますだろうか。 婚約者の和也のような単純な男は、容易に騙せそうだ。 エンタメ小説としては、犯人の新城喬子はあっさり逃げださず、もっとねばって食い下がるところを見せてもいい。

:宮部みゆきは初めて読んだ。 自分は純文学畑なので、エンタメ系を読んで、違和感がある、むだな文章が多い一方、物足りなさがある。 一番好きな作家は、宮尾登美子。

:活字が小さく読みずらいので、読んでいない。

:物語の半分は読んだが、自分の好きな種類の作家ではない。

:宮部みゆきは好きな作家。安心して読むことができる。

:宮部みゆきは、友人から薦められて初期から読んでいる。 ミステリー、時代物と、幅広く展開される宮部ワールドの中で課題本に「火車」を推したわけは、犯人像に一抹の共感を覚えるから。
もちろん、人を殺すことに肯定の余地は無い。しかも、どんな恨みも無い相手を、ただ身分を乗っ取るにふさわしい条件を持つ、 と言う理由で殺すことは、冷酷無情だ。 一方、ゆがんだ経済機構の中で、身ひとつで追い詰められ、逃げ惑う若い女性が、 保身のため牙をむき、身寄りの少なさで似た立場にある同性を殺す状況に、やるせなさを感じてしまう。
この犯人像に、恐ろしさと同時に、哀れさを感じる。

以上、三宮記

(文学横浜の会)


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