ソボクレス「オイディプス王」
驚きました。いつも6〜8人がせいぜいなのに、13人で討論することになろうとは想定外でした。
今から2400年前に発表されたこの作品は、ライオス王殺しの犯人探しというミステリーと、オイディプス王の自分探しという純文学が一緒になった稀有な物語です。
以下に検討項目と会員から出された意見を列記しました。
1.オイディプスが秘密を知った時期については皆がほぼ一致しました。
1160行あたり。羊飼いがすべてを話した時。
2.イオカステが秘密を知った時期。これは見事に別れました。
780行ぐらい。オイディプスがアポロンの神託をイオカステに語った時。
1015行ぐらい。コリントスの使者とオイディプスの会話から。
1050行ぐらい。テバイの羊飼いが現れる寸前。イオカステが蒼白になったころ。
さすがに結婚した時からという意見は出なかった。
3.テーマについて。
・神の言葉(啓示)に翻弄され、疑心暗鬼に陥り、盲目(正しい判断を失い)となり滅びていく国王の悲劇。
・コロスの歌「心の驕りは暴君を生む‥‥、神々のお姿を崇わずば‥‥」などがテーマと思われる。
・いつ訪れるとも分からない、またはどんなに知恵と勇猛さを備えて頂点に上り詰めても待ち受けている、運命の過酷さ、はかなさ、同時に(神とは異なる)人間の無力さ、限界がテーマ。
・人間には生まれながらの定めがある。運命。
みなさんが既存のテキストに頼らず、自分のイメージで発言され、「運命になぎ倒されていく男」のイメージが強いように思われました。
4.スフィンクスの暗示したもの。
・血をもって血を償うこと。
・オイディプスは二足歩行の人間であるが、父を殺し、母と交わる四足の獣であり、いずれも盲目となって歩く(杖をつく三本足)ようになる。スフィンクスはオイディプスが「自分自身を知っている」ということで負けてしまったのだ。
・四本足、二本足、三本足、の答えが人間ということは、栄枯盛衰のはかない一生を表している。
・人生にはそれぞれ重要なポイントがある。
出現が暗示したことと、謎が暗示したことを分けたほうがいい。この意見はなるほどと思いました。
このようにさまざまな意見が出され、作者が投げかけた問題に少しは迫れたかなと思いました。
以上、藤野茂樹
(文学横浜の会)
|