「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

これまでの読書会

2012年05月12日


森 瑤子「半島酒店」

 今回担当以外、皆さん全員男性諸氏の感想を要約します。
・女性というのは、こういうところがあるのかと思った。ある種の娼婦性が心の片隅にひっそり隠れているようだ。
 それにしても、阿里子への譲の態度は男として甘すぎる。こんな男がいるものかなあ。
・初めて読む作品。文学とは言えないライトノベルの感触。自分が愛する女が、高価な宝飾品と引き換えに身を売ろうとするのを引き留める男の言葉が「自分には翡翠のイアリングは買えないが、窓の外の、この香港の夜景をプレゼントする」。こんなことを言うか?
 あえていいところを探せば、バブリーな1980年代、都会の働く女のひとつのタイプを描いたことだろう。
・まるで興味も関心も持てない、他愛ない話。女主人公が、裕福な暮らしのハイソな作者自身とだぶる。
・女は怖い。おしゃれなショートストーリー。
・どんな切り口で読めばいいものか・・・。ま、ともかく、読ませる作品です。

 私がこの作品をテキストに押した理由は、ただ、森瑤子さんが好きだから。短編で、印象に残った作品だから。
香港、、金持ちで美貌の男、翡翠のイアリング、ペニンシュラホテル、とくれば、道具建ては完璧です。女をひと時の夢の世界で遊ばせてくれます。
子どもと夫の世話をやきながら、パート勤務を続ける毎日。就寝前のひと時、陽水の「なぜか上海」をラジカセで聞きながら、森さんの「ホテル・ストーリー」など読んで、働く女は今日の疲れを癒します。
森さんには、少なくても七十歳までは生きて、老いと向き合う女の姿を描いてほしかった。五十二歳の死は早すぎます。
一部に駄作があっても、その他は、ヴィターチョコレイトの味わいです。

    以上、三宮記

(文学横浜の会)


[「文学横浜の会」]

禁、無断転載。著作権はすべて作者のものです。
(C) Copyright 2007 文学横浜