「文学横浜の会」
読書会
評論等の堅苦しい内容ではありません。2012年10月06日
菊池寛「藤十郎の恋」「入れ札」
予想外に好評であったのは菊池寛の小説が押し並べて『どれもまことに分かり易い作品で、
特に、解説を必要とするものとも思えない』(小林秀雄)からでしょうか。口説かれたお梶が早くも
その気になって蝋燭の炎を吹き消したにもかかわらず、口説いた藤十郎が「やってあげなかった」。
その侮辱に耐えられずにお梶が縊死した…。芸域の拡大のためには「女の一人や二人殺したってかまわない」
というテーマについては多数の見解もあり、考えさせられるところでした。
いずれにしても『清貧に甘んじて、立派な創作を書こうという気は、どの時代にも、少しもなかった』菊池寛にとって、
藤十郎もお梶も『There is also a man』であり、それが創作のモチーフになっていたことは否めません。
早々と小説家を卒業して、小説家と読者の橋渡し役に徹した菊池寛の生き様も公私共に多様で、たぶん、
こんなに人生を愉しんだ小説家は、後にも先にも「クチキカン」一人ではないでしょうか。
以上、河野記
(文学横浜の会)
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