「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

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2012年11月03日


志賀直哉「笵の犯罪」

 笵という奇術師が、妻を的にして際どく当たらぬように、出刃包丁を投げる演芸中に、妻に当てて殺したという事件が起きた。 故意か、過失かという問題を巡って、人間の行為は、論理的に説明できないという点が、追及されている。

 笵は、子供が生まれるまでは、心から妻を愛していた。妻が子供を産んで、それが自分の子供でないと知った時から、 激しく憎むようになった。その最中の出来事である。

 人間社会の法律では、行為の結果が罪とされる。神は、行為の前の、心の想いで、善しか、罪かとされるとすれば。

 笵は、キリスト教の熱心な信者となった。教理書を、熱心に学ぶようになった。妻も、素行が正しい人と他から見られていた。

 しかも、笵は、妻を憎んでいると、率直に告白する。殺してやりたいとさえ思うようになったと。 しかし、自分でも自分の心がわからないとも告白する。 『裁判官は、何かしら知れぬ興奮の湧き上がるのを感じて、(無罪)とペンで書いた。』
 裁判官は、心から無罪と信じたのだ。
 神も、又。??。
 罪とは、人間の視点から、神の視点からのテーゼ。
 太宰は、志賀を主人もちの文学と批判した。  

 出席者から、特に大きな異論はなかったように思える。  

    以上、浅田記

(文学横浜の会)


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