「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
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2013年06月01日


村田喜代子「鍋の中」

 だいぶ前の記憶だが、ワープロ等がまだ普及する前、一人の主婦が自分の作品を自らタイプライターを打って個人誌を作った、 と言う事を、確か「文学界」の同人誌評欄で読んだ。

それだけでも凄い、と思っていたのに、そうして発表された作品が立て続けに芥川賞候補にノミネートされたのにも「へー」と感じた。 それが村田喜代子と言う作家だった。

当時はまだ「同人誌」全盛の頃で、全国で毎月百を超える数の同人誌が出されていて、 文学界の「同人誌評」欄で取り上げられる事だけでもラッキーで、同人以外にも読んでくれた方がいたと喜び、 その月の同人誌ベスト5にでも択ばれれば、少しは評価されたと喜んだ時代だ。

その頃私自身は仕事で忙しい年代で、村田喜代子の作品にざっと目を通しただけだが、なんとも不思議な感性というか、 独特の切り口を持った作家だと言う感想だった。

そんな事を思い出して今回は村田喜代子の芥川賞受賞作「鍋の中」取り上げてみた。

 「鍋の中」の内容を一言で言えば「夏休みに4人の孫が祖母の家で同居し、祖母から聞かされた一族をめぐる話に翻弄される」 と言うことになろうか。 高校生のみちゃんの視点で書かれていて、祖母の兄弟に纏わる真偽こもごも、血族に纏わる奇奇怪怪、 なんとも不思議な味わいのある作だ。

どう読むかは読み手に任されるとして、人生とは表題の「鍋の中」のごった煮のように有象無象が真偽こもごも入り乱れている、 と読んだ。

今回参加した7名による作品の評価は、好き嫌い判る判らないを含めてだが、当然の事ながら賛否別れた。

否定する発言には、読後に印象が残らない・ラストのオチがない・何を主張したいのか解らない、等であり、
評価する方では、ユーモアがあって面白い・ストーリーは判りやすい・作者の想像力の豊かさを感じる、等の意見があった。

    以上、金田記

(文学横浜の会)


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