「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

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2013年12月07日


松本清張「或る『小倉日記』伝」

 松本清張は生涯千篇を越える作品を書き残した。文芸春秋版の全集は66巻延べ3万ページを越える。 芥川賞を受賞した「或る小倉日記伝」は第2作目で、膨大な著作のいわば源流の一滴とも言うべき作品である。

 資料として芥川賞の選評をつけたが評価が大きく分かれている。佐藤春夫、川端康成、が高く評価し、 特に坂口安吾が「この文章は甚だ老練で、実は殺人犯をも追跡しうる自在な力がある」とその後の清張文学を予見するような評を残している。

 今回の読書会においても、当然のことながら意見が分かれた。 「文学としての感動がなかった」「母と障害のある子の深い繋がりの内面的な描写が弱い」「純文学としては人間の心理追及に乏しい」 「障害者のこと、母の愛、恋人のこと、色々なファクターが詰め込まれているけど、展開がなく退屈」

 一方では「取材の大切さを再認識した」「虐げられた人の執念が良く描かれていた」との意見もあった。  私としては「過不足のない文章」「冷静で落ち着いた文章」は手本にしていきたいし、それ以上に膨大な作品集を昭和のノスタルジアを感じながら老後の楽しみとして読み続けていきたい。

    以上、山下記

◆次回の予定;1月11日(土)

 担当者;佐藤
 テーマは「やまあいの煙」重兼芳子作 文春文庫

(文学横浜の会)


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