「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

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2014年02月02日


「忍ぶ川」三浦哲郎

 「忍ぶ川」を選んだのは、読書会で芥川賞受賞作が続いていた流れと、手元に単行本が残っていた事も大きい。
だいぶ前、30年以上前に購入し、どういう訳かまだ残っていた。その時に読んで、大変感動した記憶もあり、 今読んだら、どんなだろうとの想いもあった。

「忍ぶ川」は三浦哲郎の代表作で、若い男女が必ず一度や二度経験する恋愛をテーマとした青春小説、と言ってもいい。
短編「忍ぶ川」における主人公、「私」と「志乃」の家族にまつわる背景は暗く、 とりわけ「私」は5人の兄姉の「血の亡霊」に苦しめられている。
そんな二人が題名にもなっている料亭「忍ぶ川」で出会い、愛を育む物語だ。

30年振りに読み返した作だが、やはり良い作品はいつ読んでも良い。
若い頃読んで感動し、その頃住んでいた近くの飲み屋に行き、 「志乃」のような女性が居なくて「やはり小説の世界にすぎないのか」とがっかりした事も思い出した。

 読書会では男の多く、やはり昔読んで感動した者もいた。それに比べて女性は初めて読んだ方が多かった。

 女性から、男からみた理想的な女性像を「志乃」にしているのではないか、との意見には、成程、と思った。
「忍ぶ川」は芥川賞の選考では殆どの委員が最高点をつけた作だが、当時の芥川賞選考委員は全て男で、 女性の選考委員が多かったら、どんな結果になったかとも考えさせられた。

 他の意見としては、
・出会った二人が、余りに上手く行き過ぎる。
・恋の駆け引きがないのが不満
・女はもっとしたたかなのでは?
・小説のテーマが判らなかった、と言うより二人の兄がそれぞれ失踪した理由の追及の方がより小説のテーマなのでは(?)
 等の意見もあった。

 小説はそれぞれ書かれた時代背景が色濃く投影されるが、 今の時代、感動させられる恋愛小説、或いは青春小説とはどんな内容になるのかと、とりとめもなく話したことも付け加える。

まあ、私にはもう書けそうもないテーマだが。

    以上、金田記

◆次回の予定;3月1日(土)
 読書会担当者;佐藤(直)
 テーマは「シッダルタ」ヘッセ作 新潮文庫

(文学横浜の会)


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