「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

これまでの読書会

2015年02月08日


隆慶一郎

「一夢庵風流記」

担当者;杉田

隆慶一郎(1923〜1989)
シナリオライター池田一郎が還暦を過ぎて小説を書いた。
時代考証だけでなく、その解釈において非農業民から見た史実の捉え直しをしようとした。時代小説だけでなく、人を愛し、遊び・酒も人一倍愉しんだ。66才で病魔が襲った。 6年の作家生活は短くあまりに惜しまれる。

 今、テレビにおいて「時代劇」の衰退が急である。「水戸黄門」に象徴されるが、チャンバラと、葵の御紋の印籠の物語を今の人は見ない。隆が健在であればどう言っただろう。

(出席者感想)

シナリオライターの書いた娯楽時代小説、バサラぶりは画になっている。

信長=「バサラ」 秀吉=「ひょうげもの」 という。 とにかく 人と違って目立ちたい人がいる。主人公もその一人。

「会話」はうまく、「文体」は明快。読者の期待に応えようと計算した文章。 週刊誌連載の作品からと思うが全体を通した起伏には欠ける。

ただし、章ごとに起伏があり短編の連続として読んだ時面白い。 ただ、文学としては平凡で物足りない。

文章が明快。痛快伝奇時代小説。 単に、チャンバラ小説ではなく、国を盗る物語でもない。

検地の実態を垣間見せてくれた。茶道についての解釈が面白かった。 そういったエピソードに文献の読み込みの深さと批評精神がうかがえる。

「花の慶治」はパチンコでは「何と現在4代目の人気キャラクター」。 小説は「面白いは面白い」。主人公は戦いが日常だった時代に、「いくさ人」として強く、殺されもせず、一匹狼で、 直江兼続との友情の中に生涯を全うした。

いたずら好きで、前田利家への「水風呂の馳走」、林泉寺の和尚への「しっぺ返し」等の のシーンが秀逸。作者の主人公に対するほれ込みが強く客観性に欠けるのではないか。 史実を大切にすると文学的レベルが落ちる。

文献を読み込んで史実をからませて、著者がほれ込んだ「前田慶次郎」という傾奇者を劇画調に目の前に見えるように描いている。

歴史的事実と矛盾なく、時代背景をしっかり把握しつつ、魅力ある主人公がどんどん頭に入ってくるボリューム感のある小説。 ただ、週刊誌連載からか一週間単位に面白くしており、同じようなシーンがあり、一冊の本としての起伏に欠ける面がある。

少なくない人が今後は読書会のテーマを二三時間で読める短編にしてほしいとの要望があったことを付記します。

    以上、杉田記

◆次回の予定;
 次回は「文学横浜」46号の合評会となります。
 日時;3月8日(日)13時〜
 場所;「幸ヶ谷集会」(神奈川公園内) 

(文学横浜の会)


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