「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

これまでの読書会

2015年05月04日


岡本かの子

「河明り」

担当者;金田

岡本かの子の小説を読んでみたいと思ったのは瀬戸内寂聴(その頃は瀬戸内晴美?)の「かの子撩乱」を読んでからだ。
岡本かの子は作家で、岡本太郎の母親で、 岡本一平と夫婦だったとは何となく知っていたが、 それまで読んでみようとは思わなかった。

今回読書会の担当になったのを機に取り上げる事にした。
取り上げるに当たってどの作品にするかだが、偶々、最近読んだ瀬戸内寂聴の随筆で、 岡本かの子の代表的な作品として3つを上げていて、その中の一つを択んだ。

「河明り」は岡本かの子48歳(昭和13年)頃の作と思われ、死後発表された。 書かれてから80年余りだが、今では使われていない語もあり、現代日本人には読み易いとは言えない。 そう言えば前回の樋口一葉「たけくらべ」は明治20年代に書かれた作だが、訳本が出ているのを知って驚いた。

岡本かの子の作でなくとも明治時代に書かれた小説はもう解説なくしては現代人には理解できないだろう。 「源氏物語」が幾つも口語訳が出ているのは解るが、言葉とは時々刻々変わって行くものだと改めて知った。

「河明り」は作家である私の語り口で書かれている小説で、
大雑把なストーリーは「環境の変化を求めて私は河岸の貸間を借りる事になり、そこの娘のために、 娘の許嫁・木下の本心を知るために一緒にシンガポールに出掛ける」と言った内容だ。

読後の感想は例によってまちまちで、雑多な意見がでた。
担当者の特権で以下のようにまとめた。

・美しい日本語が生きていて、文章がいい。
・女の女性像を見詰める視点で描かれ、女の「さが」が描かれている。
・シンガポールに行ってからのストーリーが納得できない。
・結末がハッピーエンドで、今一つインパクトがない。
・作者(岡本かの子)が仏教に救われた者として、
「水源から湧き出た水が河になり大海に流れる」と言う自然の営みを、
「水源から湧き出る水を人間から無限に沸き出でる煩悩に、 煩悩の集まる人間世界を河に、そして大海を仏に例えて、 あらゆる煩悩を仏は受け入れてくれる」と言っているように思う。

その他、作者と夫・一平の特殊な関係についての話題が多く、 「岡本かの子」のような女性が存在した時代についての雑談が多かった。

    以上、金田記

◆次回の予定; 担当は河野さん。
  日時;6月6日(土)17時30分〜
  テーマは「蒲田行進曲」 (角川文庫) 、つかこうへい(著)
  書店、AMAZON,「日本の古本屋」又は図書館等で…。

◆その他
 (1)5月17日(日)、文学散歩です。
   テーマ;森鴎外
   参考テキスト;「雁」「舞姫」

 (2)7月以降の読書会担当は浅田さん、遠藤さん、です。

  7月の読書会テーマ(担当者は浅田さん)は
  「スタインベッグ短編集、新潮文庫、大久保康雄訳」より、
   1、菊 2、白いうずら 3、逃走 6、襲撃

(文学横浜の会)


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