「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

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2015年11月08日


三島由紀夫

「宴のあと」

 今年は三島由紀夫生誕90年、没後45年にあたる。
新聞社の号外で見た床に転がっている三島の生首、言い知れぬ嫌悪感に襲われたことを思い出す。 三島ほど、好悪の別れる作家はいない。しかし、彼がある極みに達した天才だという点において異論を唱える人は少ない。

今回取り上げた「宴のあと」は翻訳したドナルド・キーンによれば 「19世紀フランス文学小説の手法で描くことのできる作家であることを実証した作品」であるという。 フローベル、スタンダールなどゴシップから生まれた近代文学、この作品にもそんな小説の面白さの原点があるのかもしれない。

出席者の感想
・野口、山崎も面白いが福沢かづの女性像が圧倒的重量で描かれている。
・35歳の作家が、これだけの事件を掌中にして、三島流の美的世界を作り上げた筆力に圧倒される。
・政治家や選挙屋や女のどろどろとした欲望の世界を、すこし美しく書きすぎたのではないか。
・料亭「雪後庵」を買い取るには大変な金が要る。そこに福沢かづの凄まじい過去が隠されているのではないか。
・「花ざかりの森」を読んで以来、なんとなく三島文学は心に響かない。
・従来の私小説と違って、膨大な資料、想像力によってきらびやかな美の世界を作っていくいわば人工宝石的作家
・二十歳で夭折したラディゲの肉体の悪魔などの心理小説と相通じるものがある。
・三島文学にある同性愛はどう理解していいかわからない。
・女性同士でも美しい人にはひかれる。美意識の問題ではないか。
・理想化肌で純粋な野口に魅かれるかづの心は理解できる。
・着物や献立の詳細さ、知識もさることながら、美しい日本語として表現されている。
・絢爛豪華だけではなく味わい深い日本語を駆使している。

    以上、山下記

◆次回の予定; 担当は篠田さん。
  日時;12月5日(土)17時30分〜
  テーマは「知られざる傑作」オノレ・ド・バルザック作 岩波文庫

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