「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

これまでの読書会

2016年11月05日


村山由香、乃南アサ、阿川佐和子、等7名

「最後の恋」

担当(山下)

 今回は直木賞作家4名を含む、女流作家7名の「恋」をテーマにした短編集を読んで、 今の世の中で読まれている文学の傾向を探ろうとしました。出席者のおじさんたちからは当然のことながら、 「中身がない」「ライトノーベル風で軽い」「心に響くものがない」「こんなもんか」 など総じて感覚的に合わないのか否定的な感想が多かった。お一人だけ最高齢の先輩から、 様々な女性たちにエロチシズムを感じて元気をもらったとのご意見。

 しいて参考になったのは、男女の恋愛のありようの変貌、文学の変貌、 女流作家の感性や文体の変貌。変貌できない自分自身の頑迷さの認識ということ。

参考までに、僕の個人的な感想は以下の通りです。

大島真寿美「甘い記憶」 1962年 54歳
 高校生のたかが外れたように抱き合ってばかりいた恋の話
 甘美な記憶が一つあればつまらない日常だって案外耐えられる 地獄だって、馬鹿な男だって
 好き嫌いの激しい女、自分の感情第一主義者、狂うことを知ってしまった女

井上荒野「ブーツ」 1961年、55歳
 ブーツに踏まれたい男と雪の日に寝た女の話
 バンジ急須、バナナと鮟鱇、レイモンド キミ―シェルター季美子 綽名で呼び合うバンドマン
 ドラッグもセックスもない意外とまじめなブルース調の恋 踊るお客が一番エッチ  

森絵都「ヨハネスブルクのマフィア」  1968年 48歳
 サファリではなく検疫所の中で一矢で捕らわれた恋の話
 エレベーターが一階へ降下を始めた時、もっと深い所へ墜ちてゆくことを意識した
 彼は仕事人だった。情熱より実技で、言葉より指先で女を愛する男だった。私は自分の中にいまだ手付かずの領域が多々残されていた事 実に瞠目した。眠らせておくには惜しい資源を孕んだ土壌。
 ライオンに下半身を食べられたい赤ずきんちゃん セックスの合間にしりとりをする女 

阿川佐和子「森で待つ」1953年 63歳
 50年恋する人を待つ 眠れる森の老女の話
 春はツグミ、夏はカッコー、秋はキツツキ、冬はフクロ―、メルヘンおばさんのベタな表現
 イゾとカワウソのイゾップ物語 、イゾは海の男 生みの親は海軍 慢性ファザコン

島本理生「ときめき」 1983年 33歳 
 女性名詞ラメールを擬人化した散文詩、ジュディオングの「魅せられて」を知らない世代
 「女は海、優しい男に抱かれながらも強い男に魅かれていく」
 あるいは海は子宮、無数に飛び込んでいく精子たち 考えすぎ?

村山由香「TUNAMI」 1964年、52歳
 津波の起きた日に、別れた夫が訪ねてきて、死にそうな猫の前で性の営みをして帰っていった話。
「タビスケ撫でていた手が私の頭を優しくたたく」
「涙と一緒に遠い彼方へ押しやった記憶が溢れだす」
「おぼこな私を一から教え込んだのは彼だ」
「生まれて初めて経験する肉体の熱を伴う恋だった」
「抱き合う前より離れた後の方が寒かった」180p秀逸リアリティがある

乃南アサ「それは秘密」 1960年 56歳
 あなたは何を書きたかったのですか?*/±▲ それは秘密  恋愛経験がないのかも
 @小説のメイン読者である女性読者の背丈にあった内容と文体
  (恋と結婚、ミュージシアン、アフリカ旅行、メルヘン、メルヘン、アニメ的など
 A商品としての文学   女性の好きな流行りのレストラン
  新鮮なネタ(素材) 確かな調理(描写力) スパイスの利いた味付け(感性)

以上 山下 記

◆次回の予定;
  日 時;12月3日(土)17時半〜
  テーマ;「武蔵野夫人」大岡昇平
  担当者;篠田さん

  

(文学横浜の会)


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