「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

これまでの読書会

2017年05月15日


幸田 文

「流れる」

担当(清水)

5月の読書会は担当者の都合により第ニ週の土曜日に延期して開催された。 あいにくの荒天にもかかわらず、11名の参加があり、様々な感想意見が交わされた。

この作品を選んだ理由と、この作品への私の思い…

たまたま友人に誘われて行った「幸田文展」(2013年に世田谷文学館で開催された)で、幸田文というひとりの女性の潔いたたずまい、美意識に強烈に魅かれたのがきっかけで、私は彼女の作品も読むようになった。 読書会の当番が近づいて何をテーマに選ぶか迷った時に、どうせなら自分が強く魅かれるものを紹介したいと思い、この人の作品の中から新潮社文学賞・日本芸術院賞を受賞している「流れる」を選んだ。

この作品は彼女が芸者の置き屋に女中として住み込んだ体験をもとに書かれたもので、そこであった出来事を彼女の視点で丹念に描いており 、ストーリー展開のおもしろさには欠ける。 しかし、物事や人物の底をしっかり見据えて描きだそうとする彼女の視線、感じたことを臆することなく自分の言葉ですっぱりと表現する潔さに私はひかれる。

そして読書会の担当という機会を与えられ幸田文の様々な作品を読む中で、彼女が父から強いられた過酷な子ども時代と、だからこそどれほどつらく悲しくても、崩れそうな自分を立て直し背筋を伸ばして前を向く強さが育まれたことを知った。 幸田文の世界にどっぷりつかった日々はしんどくもあったけれど、深い感動が残った。

この日交わされた感想・意見

・登場人物が同じ比重で描かれるのでストーリーを追うのが難しい
・文章を書きなれていない感じがする
・退屈。くだくだ書きすぎる

・観察は鋭い。文章にリズムがある
・芸者の置き屋の持っていたはずの猥雑さが描かれていない
・流されていくしかなかったその時代の女性が描かれ、今との時代の差がわかる

・厳しく生きてきた人生がわかり、感動した
・擬態語が読みづらかった
・露伴の七光りがあってこその文であり、それがなかれば認められなかっただろう

・一人称で書かれているが、小説にするには三人称にならなかればならない
・上から他の人を見おろして書いている
・しろうとが玄人の世界を見たというところがおもしろい

以上ありがとうございました。

以上 清水伸子 記

◆次回の予定;
  日 時;6月3日(土)17時半〜
  テーマ;「蛍」、サブが「夫婦善哉」織田作之助の短編から
  担当者;河野さん

  

(文学横浜の会)


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