「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

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2017年06月06日


織田作之助

「蛍」

担当(河野)

荷風・谷崎・志賀などの大家や川端・三島などの実力派に先駆けて、 敗戦後の文壇でいち早く狼煙をあげたのは太宰、安吾、織田作など無頼派と称される小説家たちでした。

第一次戦後派と称される作家たちが戦争体験をひっさげて文壇に登場するまで、石川淳・田中英光・小山清なども加えた無頼派の 小説家たちは文壇の寵児でした。

中でも流行作家として織田作の人気は高く、吐血しながらも大阪の庶民の哀歓をヒロポン片手に書きつづけました。 昭和22年1月大量の喀血で死去との知らせをうけた太宰は「織田君、よくやった」と絶句し、涙をぬぐいました。

「登勢の声は命ある限りの蛍火のように勢いっぱいの明るさにまで燃えていた」

「蛍」はおおむね好評でした。以下、感想から。

・話に無駄がない。
・独特の文体で、読みにくい面もあるが、テンポの良さが救い。
・次から次へとふりかかってくる不幸にめげず、そのつどそのつど立ち上がる登勢の生き方に、蛍を見た。
・「『おいごと刺せ』と叫んだあの声のような美しい声がありきたりの大人の口から出るものか」の個所は 「火のついたようなあの赤児の泣声に似て」に重ねているのが見事。
・ 坂本竜馬ほか、史実にのっとっているのか、やや疑問である。

以上 河野 記

◆次回の予定;
  日 時;7月1日(土)17時半〜
  テーマ;「はつ恋」、ツルゲーネフ
  担当者;遠藤さん

  

(文学横浜の会)


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