「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

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2019年02月05日


宮本輝

「星々の悲しみ」

担当(杉田)

宮本は創作の秘訣は「読み返してなんか不足していると思ったら、もっと削ることだ」という。
この短篇では大阪から環状線で一駅の福島の商店街にある自宅から、梅田の予備校に通うと言いながら、 中之島図書館で露仏文学の読書ばかりしている主人公の青春模様が書かれている。

喫茶店に架けられたている、絵を盗み出すといった刺激的なエピソードと魅力的な人々が散りばめられ、友人の死があって、 どこかもの哀しい鎮魂歌が聞こえる。

なぜ、タイトルが「星々の悲しみ」なのか、若くして死んだ画家の絵のタイトルでもある。
多くの刺激的なヒントを与えながら、はっきりとは言わない。むしろ、ボカシて、行間に隠す。

丁寧に周辺を描写し、肝心なものは深く埋める。読者の想像力を信頼して、埋めたものを探させる。
なぜ、「星々の悲しみ」か、どこにも答えはない。その時、読者の数だけの答えがうまれる。

読ませるのは、矮小な現実を離れ、嘘の物語のこしらえ、真実のかけらを見せることが上手であることだ。
巧緻な描写、しゃれた会話で、シーンごとに惹きつけるものがある。
それを支えるのは深い洞察力であろう。

出席された方から、多彩な、多くの示唆に富んだ発言を聞くことができました。
ありがとうございました。


以上 杉田 記

◆次回の予定;
  日 時; 3月 3日(土)13時〜
  テーマ;「文学横浜、50号」合評会 、
      

  場 所;日本丸訓練センター内、会議室

(文学横浜の会)


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