「文学横浜の会」
読書会
評論等の堅苦しい内容ではありません。2019年03月06日
文学横浜、50号 「読書会」
担当(金田)
あいにく雨にたたられ、足の不自由な会員には気の毒な日になった。
合評会には出席者16名に加え、今回も秋林先生をゲストに迎えた。
50号の節目の号に当たり発刊時のメンバーが健在なら、どんな感想を頂けるのかと考えると冷や汗ものである。
と言うのも、文学に対して厳しい方々で、私が加わって初めて載せてもらった作品に、厳しく率直な意見、
を浴びたのを思い出したからだ。初めて載せるについてもレベルに達っしているか等、気難しい事を言われた記憶がある。
そんな雰囲気に反発しつつも、そうした文学好きの方々に同類の親しみを持ったのも確かだ。
文学とは様々な成長環境、生活環境、或いは個性の持ち主、つまりは感性の異なる人間の表現の一手段だと思えば、
どんな作品も排除してはいけない。それが最近の雰囲気でもある。
しかし表現し公開したからには、どんな批評も覚悟しなければいけない、と言う事は昔と変わらない。
さて今回も、と言うべきなのだろうが紀行文を除き、随筆にしても創作にしても作品の背景が過去のものが多かった。
書き手が高齢になるにつれ、その傾向が多くなるのは仕方がないにしても、現状を直視する視点を欠いてはならないとも思う。
今の事は連れ合いを含めてまだ健在だから書けない、と言う方もいるが、現在に対する好奇心や問題意識を忘れてはならない。
年を取ると月日が経つのが早いと感じる。友人を含めて同じような事を言うので、多くの高齢者はそうなのであろう。
これは物事に感動する事が少なくなったと言う事であり、感動するような場面に出会う機会が少なくなったからだ、
と言う説もある。この事は自分に対する戒めでもあるのだが「今の若者は」等と言ってはいけないし、
もっともっと感動できる場面に出掛けたいとも思う。
それにしても情報化、ネットーク化の急激な進展によって芸術の在り方も大きく変わっているように思える。
芸術の在り方と言うのは、発表の仕方と言い換えてもいい。
つまり素人の誰でもが、何処からでも、音楽や映像やダンスやら、ネットを介して発信できる時代になった。
絵画にしてもこれから5G時代になれば益々、高画質の画像で、何処からでも自分の描いた絵を公開できる時代になるだろう。
そうした変化から文学の世界も旧態依然と言う訳にはいかない。
一つ目の「AIによって小説が書ける」問題だが、ぼくは「AIによって小説は作れるが、創造はできない」と思う。
二次会の席では「AIによって創造もできるようになる」と主張される方もいたが、
所詮、AIでできる事は人間が創造した膨大な量の情報(語彙)の中からあるルールによって語彙を組合せて文章を作る事だ。
つまりは情報(語彙)を提供するのも、ルールを指示するのも人間なので、決してAIが創造する訳ではない。
二つ目の「作品の発表の仕方」ではこれから大いに変わるだろう。
つまりは誰でも何処からでも自分の作品を発評できる時代は来るし、今でもできる。
ただ今はPCが主流だが、読み易さを思えば、専用リーダやスマポだろう。
そうしたツールが開発されれば多くの読み手に作品を提供出来るようになる。
それに音声が加われば朗読や背景の効果音等を加味してイヤホンでも作品を聴ける時代も来る。
そうしたツールを作ればいいだけで、今でもそうした技術はある。
いや、もう既に朗読された小説も発売されているし、手軽に小説が読めるリーダーも発売されている。
ただ、まだ誰でも投稿可能なツールが公開されていないだけだ。
*
さて50号に掲載された作品は、記念寄稿を除いて、17作品。
2、3ページの掌編から30ページを超す作品と、内容を含めて様々な作品が並んだ。
色々な感想、意見が飛び交うのは毎回の事で、限られた時間内で終わらせるには参加者に協力を求めざるを得ない。
作品の評価は個々に任せるとして、作品の概要を以下のようにまとめた。
間違い誤読等、ご容赦願いたい。
<紀行文>「光の記憶 二〇一八年初夏」山口愛理
<創作>「読めない人」遠藤大志
<創作>「不動滝」杉田 尚文
<創作>「ガリバー太田 海を行く2」日向武光
<随筆>「白い鳥」福谷美那子
<随筆>「事件の記憶」池田はら
<随筆>「沈黙の午後」藤村格至
<創作>「譫妄」山下淳
<創作>「Long for 焦がれる」太田龍子
<創作>「俺たちの恋」いまほりゆうさ
<随筆>「多磨全生園を訪ねて」茅野アキ
<随筆>「ハワイ良いとこ一度はおいで」金子えい子
<創作>「罪は霜露の如く」桜山 智子
<創作>「庭の千草(小野田晋平伝)」浅丘邦夫
<創作>「なちゅれしばらく」石野夏実
<創作>「三吉」篠田泰蔵
<創作>「山里中学卓球部」藤野燦太郎
以上 金田清志 記
◆次回の予定;
(文学横浜の会)
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