「文学横浜の会」
読書会
評論等の堅苦しい内容ではありません。2019年11月05日
「パーク・ライフ」吉田修一
担当(遠藤)
【取り上げた経緯】
吉田修一という作家を初めて知ったのは、今から12、3年前のことだった。
僕は東京にある「文藝学校」というところに通い、文章の書き方を学んでいた。
そこで同じスクールに通う若い女性からこの作者の魅力を飲み会の席でとうとうと聞かされた。
そんなに良い作家ならば一度読んでみようと、今回のテーマ『パーク・ライフ』を初め、
『flowers』、『最後の息子』、『日曜日たち』、『東京湾景』などを次々と読んだ。
「もの足りない」と感じたのが最初の印象だった。
【どこがすごいのか?】
自分で氏の様な文章を書けるか? と考えると、出来そうにない。
それはなぜか? 洞察力と感性の鋭さがハンパ無いからである。
吉田修一氏の初期の作品は「何気ない日常」を切り取り、「誰しもが無意識に感じている事を表出化し、
改めて気付かせてくれる」所にある。
吉田修一が芥川賞選考委員の意識を大きく変えたと自分は思っている。
第127回(2002年上半期) 以降、選考作の潮目が変わったのではないか?
吉田修一氏は、その後作家として大きく花開いていく。
また、2016年、芥川龍之介賞の選考委員に就任している。
【読書会感想】
・もうひとつピンとこない。印象に残らない
・自分の日比谷公園イメージと全く違う
・モダンな日比谷公園の表現を駆使している
・終始ふあふあした印象を残した。ディテールがよく書かれている
・日本版ニューヨーカーズである。
・違うのは、悲しいエピソードがないこと
大方の会員が、小説として物足りなさを感じたとコメントした。
これは自分も感じたことだ。その中で会員の方々は、様々な角度から深読みしてくれた。
中でも、ニューヨーカーズとのとの対比という意見は面白いと感じた。
こういった突き詰めた深読みこそ、読書会の醍醐味ではないだろうか?
【所感】
田舎から都会に出てくると「人間関係の希薄さ」を思い知らされるという。
恐らく著者も故郷長崎から上京してきた時に感じたのだろう。
主人公の僕は電車で見知らぬ女性に話しかける。そして偶然、日比谷公園でその女性と再会する。
女性側から話しかけてもらった事で、ぼくはリラックスして話す事ができる。
女性の名前も、年齢も分からないが、なんとなく共感を覚え、「じゃあまた」的な再会を約束し別れる、
この大都会のど真ん中にある日比谷公園にのみ上京してきた孤独さを忘れる事ができる二人。
そこには印象に残る人がいる。共通の話題がある。そうそうと言い合える仲間がいる。
そして、それをひとしきり確認できたら、「じゃあまた」的な別れがやってくる。
そういった都会の情景がシンプルな形で表現されている作品である。
以上 遠藤 記
◆次回の予定;
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