「文学横浜の会」

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評論等の堅苦しい内容ではありません。
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2022年04月07日


C『ハイヒールの町』 藤本珠美

<書き込まれた感想>

遠藤さん 2022/2/25 20:12 投稿

本作は藤本さんの前作から続く、故郷筑豊の特に夜の女性に焦点を合わせたエッセイである。
友人の母が水商売というシチュエーションは誰しもある。
その家庭に対して抱かれる、子供に悪い影響を及ばされるのではないかと不安を抱える親たち。
だがそれは偏見である。
そんなことを考えながら、筆者は大きくなり、故郷を離れた。
大人になり、その事を思い出して懐かしさを覚えているのでしょうか?

浅丘邦夫さん 2022/3/12 10:54 投稿

誰でも追憶がある。幼稚園、小学校さらに現代、追憶は美しく楽しく悲しくもある。散文詩のような文章にまとめられている。道ばたに落ちている、ダイアのピアス、それはチョコレートを包む銀紙だつたか、追憶はダイアなのだ。

中谷和義さん 2022/3/21 13:25 投稿

夜の兼業がばれて病院の仕事をやめされられた絵里香ちゃんの話は、切ない。今だったら行政の支援を受け、夜の仕事をせずに済んだのかもしれないが…。

阿王 陽子さん 2022/3/21 17:02 投稿

散文詩のような、漫画のコマの原作のような、印象を受けた作品。吉行淳之介の小説を思い出した。

清水 伸子さん 2022/3/22 15:45 投稿

とても美しい詩的な作品で、藤本さんの独自な世界を感じます。

石野夏実さん )2022/3/22 21:15 投稿

プロローグで、下品で成金っぽい乱暴そうな男の風体。行空けして「世界中の幸せの量って、決まっているのだろうか」で始まる随筆。
幸せは、金品で買えるものではないと思っている人は、日々の暮らしに切実に困ったことがない人かもしれない。お金の心配をしなくてもよい人は、それだけでもある意味幸せであるのだろう。しかし幸せってなに?
藤本さんが拘るハイヒールの町そしてピガールの街。三才の原初の記憶は冷めている。
筑豊という町が背負ってきた特質かもしれない。エピローグは、ゴールドのピアス。本物か偽物か、そんなことは、どうでもいいこと。自分で決めればいい。

成合武光さん 2022/3/28 10:52 投稿

題名から上品で高級な幸せの町を想像しました。そして、ランポルギ = 若者が憧れる高級スポーツカー なのか、どんな恋が始まるのだろうと。しかし物語は全く逆、幸せとは何、「世界中の幸せの量ってきまっているのだろうか」という問いかけから、人それぞれの幸せについて考える物語でした。
 幸せとは大きなものではなく、反対に小さな幸こそ大きな幸ではないかという作者の声が聞こえてくる。作中の挿話に無駄な説明がなく、簡潔に書かれているのが清々しく、心温まる思いがしました。

森山里望さん 2022/3/28 17:46 投稿

よくない評判の家、里絵香ちゃんのお母さんが作ったたくあんをさらりと受け取って食卓にのせるお母さんを頼もしく思いました。ついつい周りやメディアから発信される幸せの定義みたいなものに、自分の暮らしを照らし合わせて、正しい幸せ(?)をつかもうとあくせくしてしまう。そういうことの愚かさに気づく作品。

金田清志さん 2022/3/29 07:06 投稿

書き出しの部分に出てくる「ランボルギーニ」の意味が解らず読み進め、
「世界中の幸せの量って、決まっているのだろうか。」の一文に作者の意図を感じました。
 随筆は六つの部分からなっており、昔の思い出、或いは心象風景と重なり、<幸せとは?>と問うているようにも思った。

山口愛理さん 2022/3/31 17:34 投稿

いつものように詩的な文章が美しい。「二、境界線」は感慨深い。選択と運命という意味において。「三、画用紙の絵」も誰もが抱く幼い頃の思い出として面白い。四と五はハイヒールの町の関連エッセイでこれも感慨深い。p53幸せの量の下りは作者の優しさが滲み出ている。全体としてトーンが良くまとまっている。このエッセンスをもとにして、随筆でなく小説として創り上げても良かったのでは。

和田能卓さん 2022/4/1 12:54 投稿

モノローグによって夢の中の出来事を見せられているような気にさせられる、極めて抒情的な文章。
散文詩的な掌編小説の集まりとも思え、全体的に好きな世界です。特に四、五には心の琴線に触れてくるものが感じられる。

匿名さん 2022/4/2 19:28 投稿

母子家庭の理絵香ちゃんが夜のクラブでの務めとの兼業を理由に病院の事務の仕事を辞めさせられた。足の不自由なお母さんを支えて二人で買い物をしている姿に私の母は涙する。私は幸せとは何だろうと考える。理絵香ちゃんが幸せであってほしいと願う。

林 明子さん 2022/4/3 09:21 投稿

ひとつひとつの話が興味深く、面白味も含まれていて、もっと他のエッセイも読んでみたいなと思いました。
エッセイの中で、会話部分が多くはないのですが、情景を生き生きと想像させる効果を引き出しているように感じました。

太田龍子さん 2022/4/3 10:59 投稿

いくつも情景が並列して雰囲気や情感を伝えてきます。事故で亡くなってしまった男の子と自分の行動を結び付けて考えてしまう話が印象深かったです。

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