「文学横浜の会」

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2022年04月07日


M『誰か破らん相思の情』 浅丘邦夫

<書き込まれた感想>

遠藤さん 2022/2/28 18:12 投稿

ロシアのウクライナ侵攻が騒がれている中、読ませていただきました。
敵対する国と男女の恋愛は関係ないというストーリーです。
アリアズナは正直さ、誠実さ、純朴さ、優しさに惹かれその身を任せる。
広瀬は明治35年に帰国後、戦艦朝日水雷長兼分隊長を任される。
お国の為にその命を捧げた広瀬武夫を偲ぶ人が多かったと聞く。
今も昔も、その人の信条が周りの人の心を惹きつけて止まない例である。

中谷和義さん 2022/3/21 13:24 投稿

かつて「軍神」と称された海軍将校・広瀬武夫とロシア人女性・アリアズナの恋を描いた小説。柔道の達人で詩人でもある広瀬にアリアズナが恋心を募らせたという。「慕情に理由などない」というのはその通りだが、日露関係やアリアズナの背景を考えると、現在でいう「ハニートラップ」だったのではないかとも思えてくる。読む側の品性・感受性が試される作品だ。

阿王 陽子さん 2022/3/21 17:29 投稿

創作だが、歴史上の人物、広瀬武夫をモデルにしている。アリアズナも実在の人物。私も、前に実在の人物をモデルに短編作品を書いたことがある。年譜をたよりにその時は書いたが、国語科の先生からダメ出しをされた。実在の人物を書くときは歴史考証をよくしなさい、と。しかし、このアリアズナとの逢瀬、一夜妻の感じは実際にあったんじゃないか、と思わせる。いま、ロシアがウクライナに侵攻し、ロシアのイメージも悪化しているが、日本とロシアは近く、トルストイやツルゲーネフ、など、日本の文学に多く影響した。この作品を読んでロシア文学を読んでみたいと思った。

清水 伸子さん 2022/3/22 16:29 投稿

戦争はどんなものであれ嫌いですが、日露戦争では日本ロシア双方に武士道精神、騎士道精神があり、敵ではあっても人として尊重するという側面があったのですね。どうしても今のロシア軍の暴虐ぶりと比較してしまします。

森山里望さん 2022/3/23 16:48 投稿

日本の軍人広瀬武夫とロシアの令嬢アリアズナの恋を、淡々と描写するように書かれています。戦死、別離、プーシュキンの訳詩…と清い美しさを感じてしまう作品です。どんな戦争も肯定、美化してはいけないのですが、この日露戦争のころは、司馬遼太郎の言葉を借りれば、まだ武士道、騎士道の残っていた最後の時代だったと確かに思いました。(今、この時もロシア軍によって悪鬼のごとくなされる無差別侵攻をみるにつけ)この、二人のロマンスと広瀬の散り際はの逸話は、ロシアではどう残っているのだろう?

石野夏実さん 2022/3/26 11:39 投稿


浅丘さんのお書きになる小説には、自伝的なものと歴史に題材を得て主人公を描くものの二通りのパターンがあって、今回は久しぶりに歴史ものでした。枚数は多くはなかったですが、明治時代後期、日露戦争前後のペテルブルグへ誘われました。
日清戦争が終わり、ロシアの日本大使館付き武官になった広瀬武夫と、ロシアの貴族で海軍少将の娘であるアリアズナとの恋愛に触れ、あの時代を想像する機会を得ることができました。タケオ訳のプーシキンの恋愛詩「夜(ノーチ)」は、アリアズナとの相思の情を思い描くことができる熱い詩でした。双方の国が敵味方に分かれての日露戦争。勇敢に戦死していった広瀬武夫。愛する人=武夫の死の悲しみは強くても、一方ではその死に様を讃える気丈なアリアズナ。彼女は、互いの気持ちを受け入れたあの日の朝の愛する武夫のルパシカ姿をいつまでも忘れることはないでしょう。

成合武光さん 2022/3/28 11:03 投稿

プーシュキンの詩がとても効果を上げています。詩の一節を引いてロシア娘のアリアズナの想いに応える。広瀬武夫の軍人とも思えないハイカラさが素晴らしい。
 短いモスクワ滞在中、礼節ある武人の姿に打たれたロシア娘、応えた日本の騎士。プーシュキンの詩のように美しい物語です。同じ日本人として嬉しい。戦争間近と知る両国士官との挨拶も誠に騎士的です。同じ人間なら、こうありたいものです。
 最後に船腹にロシア語の文。騎士的な堂々たるその心に、ロシア兵も讃嘆を惜しみなく、敬意の葬送をした。戦争という場面においても立派な人間性を示した騎士たち。感動しました。

金田清志さん 2022/3/29 06:54 投稿

歴史上の人物を判りやすくスマートに書いてあり、安心して読める。
益々複雑化している今の世で、このような愛は描けるだろうかと思った。

港 一さん 2022/3/29 17:53 投稿

廣瀬大佐とアリアズナの話は、司馬遼太郎の『坂の上の雲』を読んで知っていました。ラブドラマにするとこうなるか、と感じました。このまま映画化しても面白いと思いました。

林 明子さん 2022/3/30 23:37 投稿

広瀬武夫との交友・恋愛をアリアズナの視点から描いた作品。
「ロシアが攻撃されている。だが敵対心は湧かない。タケ兄さんとのひと時を思い出すだけだ」の部分。
結局、戦争は国と国とで行われるものであり、個人と個人との思いとは全く別の形のものであることを強く思い知らされます。
その国と国との争いに、戦う必要性を全く感じていない人々が巻き込まれていく異常さが現代でも続いていることが本当に恐ろしいと思います。

山口愛理さん 2022/4/1 14:24 投稿

広瀬武夫という人のことは知らなかったですが軍神と呼ばれ、柔道家でもあったのですね。恋愛が中心のお話ですが、ネットで調べると船底から帰って来ない部下を助けるため探しに行って戻ったところを敵に撃たれたとあり、そんなエピソードも交えると彼の人間性がもっと出たかなとも思いました。
それにしても戦争中であったのに、ロシア軍が広瀬の偉業を称えたというのは凄い話です。今、ウクライナとロシアが戦争状態であるだけに特にそう思いました。

佐藤直文さん 2022/4/2 19:42 投稿

面白く読みました。広瀬のことは「坂の上の雲」で知りました。ただ、プーチンのロシアが迷走している。ロシアは変わってほしい。

太田龍子さん 2022/4/3 11:24 投稿

アリアズナさんの強さ、潔さが印象的でした。ウクライナとロシアの戦争が早く終わるとよいです。

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