「文学横浜の会」

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2022年04月07日


N『幺妹(ヤォメイ)』 上条 満

<書き込まれた感想>

遠藤さん 2022/3/1 08:20 投稿

今作も楽しく読ませていただきました。
玄妹(ヤォメイ)とは名前ではなく、末っ子の女の子の意味であったり、地方では幼い女の子や可愛い女の子を指すのですね。
本作は中国四川省南部でのちょっとしたアクシデントから玄妹(ヤォメイ)と行動を共にし、中国の農村部での貧しい生活ぶり、そしてその中で逞しく生きる21際の女性を描いている。
主人公はその逞しさに驚き、中国の農村部の現状をレポートする。
上条さんはいつも小説の基本は起承転結をはっきりつける事だと仰っていて、本作もそれをしっかり実現していると思います。
また、登場人物の人柄、履歴が明確で、中国の現状が分かりやすく伝わってきます。
先般「愛を読む人」という映画を観ましたが、その映画の主人公もまた「文盲」でそれを知られたくなくて重罪に課される話でしたが、この幺妹(ヤォメイ)もまた文盲で、未だに現代の社会でもそう言った教育を受けられない現状があることに驚いた次第です。

浅丘邦夫さん 2022/3/12 19:22 投稿

中国のみ大地に生きる人々の、たゆまぬ、地道な、努力といきざまは、中央政府と関係なく営まれる。

清水 伸子さん 2022/3/18 14:50 投稿

中国国内の実情…都市部と農村部との格差、農民が重んじられていない事、若い世代でも文盲の人がいる…などが書かれていてとても興味深く読ませていただきました。ヤオメイをはじめ、人物描写も魅力的です。だた、バスの運転手と地回りのいざこざがヤオメイの登場で急転したのがなぜなのか分からず、知りたいと思いました。

中谷和義さん 2022/3/21 13:09 投稿

中国の農村の実態がよく伝わってくる。
 農村現地調査団が四川省の農村で出会う女性、ヤオメイは文字が読めない。21世紀になっても文盲がいたことには驚かされるが、義務教育でも学費がかかるという実情があればうなずける。一方、貧しいヤオメイが50元の案内料を提示されて「もらい過ぎ」と断り、20元だけ受け取るシーンには、「中国人はがめつい」という先入観が覆される。
 そのほか、中国に農協的組織がなかったこと、その一因が日本の農協のような政治的影響力をケ小平指導部が恐れたこと、日本の竹が中国からの帰化植物だったことなど、「へー」と思わされる情報も多く、傍線でいっぱいになった。

森山里望さん 2022/3/26 18:49 投稿

p189上 中国の墨絵のような竹林を歩く、ヤオメイの粗野でいてかわいらしい子どもっぽいようないたずらのシーンが好きです。文盲、貧困、国の政策から取り残された人、部分が書かれているのにさわやかな読後感でした。この国の美しさとエネルギーを感じました。固有名詞にはルビが欲しかったです。

成合武光さん 2022/3/28 11:04 投稿

駐車場での応酬がどのような話でまとまったのか、もっと知りたいですね。
中国の最近の様子が紹介されていて興味深く読みました。知らないことも教えられ有難かったです。
 文化革命に参加した大学生のその後の様子。コロナや地震のニュウスで知る四川省の自然。日本の兵庫県に似ているとあるので、少し想像が出来ます。また竹も、もともとは中国からの移入とは、考えてもみませんでした。
幺妹の暮らしの様子から、大方の中国の人たちの暮らしが想像できます。作者も農業の指導・研修に参加されているようなのですが、その実態や様子が書かれていないように思えました。少し残念です。報告はスパイ行為になるのなら、仕方なかったですね。
幺妹の清貧の様子と率直さ、これは幺妹の人柄から来るものでしょうね。清々しいです。しかし、或いはこれも中国共産党の教育の成果だろうかと。謎の深い中国ならば、と。思わないでもありません。私の方がひねくれていますかな。貴重な体験を紹介下さり、ありがとうございます。

金田清志さん 2022/3/29 06:55 投稿

2004年の中国だから、今の中国とはだいぶ違うとは思うが、広大な中国の一部ではある。
作者の経験に基づく作と思われるが、知らない世界を見せてくれると読み手としては楽しい。
その頃、中国に旅行で行った体験と重ねて、中国人の逞しさを思い出した。

山口愛理さん 2022/3/31 17:50 投稿

共同研究のために主人公が訪れた中国四川省でのある日の出来事が克明に述べられている。現地の研究班一人一人の性格や特徴、仕事ぶりがよくわかる。特に馬さんとタイトルにもなっている女性、この二人の描き方がいきいきしていてとても良いです。最後のレポートもまとまっていて素晴らしく、作者のきっちりとした真面目な性格や優しさが伝わってくる作品と思いました。竹林の部分は情景が浮かんできてとても美しいです。

石野夏実さん 2022/4/2 16:21 投稿

ジャンルは紀行文になるのであろうか。人物を含め当時の中国の農村の現況、文化大革命の頃の話、農協組織の話、とても興味深い話がどんどん出てきて、すらすら読めるのに、読みごたえは十分あった。
四川省南部に中国側3名、日本から1名(筆者)の合計4名による農村現地調査団の共同研究の実地調査のため出かけた某所。その地で起きた一日の出来事であった。中国側3名のそれぞれの人物像も的確な描写により、生き生きとイメージすることができた。特に女性の馬さんの半生と存在。
その日、調査団が乗ってきたマイクロバスに地回りとのトラブルが発生しかけたが、近くにいた地元の若い女性(ヤオメイ)の証言により急転直下、解決した。そして調査団のこのバスに彼女は同乗し、地元の公園内にあるレストランを紹介し昼食を共にした。21歳で既婚、子どもは1人、義父母と5人で暮らす彼女の家を実際に見せてもらうことで、貴重な訪問記録が作成できた。
2004年の秋の記録であるが、当時の四川省南部の農家の実態(彼女の家は貧困農家であった)が、よくわかった。今の2022年の農村の収入がどうなっているのか、また教育状況がどうなっているのか(当時、タオメイは文盲であった)、本当のところを知りたいところである。

佐藤直文さん 2022/4/2 19:44 投稿

面白い小説とは「その読者が期待している以上に面白いと思わせる何かを感じ取らせるもの」だと思う。そういう意味で面白い小説でした。
文字はもとより中国より渡ってきた。その父なる国を尋ねた。奥地の農村にやって来て不安な時、居丈高な地回りが来て困っている。その時に若い女が来て何かを地回りに話すとたちまち地回りから解放された。若い女の案内で現地を案内される。若い女は早くに両親を失い小学校にも行けず文盲、結婚して子がいるという。今は文盲のための学校があるという。「夫が文字を知っている、一家に一人文字を知っていれば困らない、行かなくていい」と、けなげだ。確かに、日本各地の案内人は語学が達者な人が多い。文化の違い極まれり。
専制国家に一旦はなるしかなかったのだろうか? 都市と農村の格差は日本以上らしい。
確かに卓球などで見る中国の女性は魅力的な人が多い。人権弾圧などを止めて、民主的な国になってほしい。民主的な人、女性が活躍できる社会になってほしい。
地回りとは役人のことだろうと勝手に解釈しました。

林 明子さん 2022/4/2 22:34 投稿

この作品は作者の実体験にかなり即しているのでしょうか。描写が具体的でイメージしやすく、読みやすかったです。私たちは当たり前のように享受している「読み書き」ですが、識字率の最も低い国では15%になるそうです。作者の「読書から得られる感動や…」の部分で、文盲であるということの弊害を痛切に感じさせられました。読者ができない不幸せだけでなく、生活にも支障があると思います。ヤオメイの明るさと農村の貧しさとの対比が印象に残りました。

太田龍子さん 2022/4/3 11:02 投稿

実体験のレポートのように具体的に描かれていて、人物も大変魅力的に感じました。ヤオメイさんに会ってみたいなと思ってしまいました。

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