今回、篠田さんの人物評論を読ませていただき、宮城まり子という情熱的な女性の一生を垣間見ることができた。彼女の行った功績は今後益々注目を浴びるであろうし、評価されていく事だろう。
実を言うと、僕の甥っ子も、重度の脳性麻痺を患っており、到底他人事としては読めない。
脳性麻痺の子供たちを理解する事は容易い様でいて、そう簡単では無い。彼女はたまたま若い頃にそういった脳性麻痺の子供に触れて、その思いを強くしていったのだろう。僕自身、甥っ子が脳性麻痺で無かったら、宮城の活動を軽く見過ごしていたのかもしれない。
この類は
阿王 陽子さん (8n2dgleu)2023/2/23 18:42
「銀色の轍?宮城まり子を偲ぶ?」を読んで 阿王陽子
宮城まり子さん、と聞くとたしかねむの木学園で上皇后美智子様がたしか、、、と思い出すが、知識不足であまり詳しく知らなかった。
本作は人物評論で、宮城まり子さんへの当初の反発と先入観から、映画をきっかけに興味へと転じ、宮城まり子さんの慈善活動に共感し、尊敬する作者の気持ちの変遷と、小劇場の映画讃歌や宮城まり子さんの監督した映画たち、著作、またねむの木学園の絵画などの様子が描かれている。
私は美術館が好きであるが、「ねむの木こども美術館」を存じ上げなかったことに恥ずかしさを感じた。また、アンニュイな作風の作家、吉行淳之介氏と宮城まり子さんがいわゆる不倫の交際をしていたことも知らなかった。
しかし、吉行淳之介が娼婦と関係してるのに寛容なまでに宮城さんが愛しぬいたことを知り、純愛と感じた。
母性が強い方なのだろう。子どもたちを聖母のように包み込む慈悲深さを感じた。
作者が宮城まり子さんファンになり、講演や運動会、学園、宮城まり子さん本人を見に行ったことが、写真とともに述べられている。
そんなに心惹かれる人に自分は果たして会ったことがあるだろうか?感銘を受けたことがあるだろうか?
と自問自答した。
「やさしくね やさしいことは つよいのよ」というフレーズに感激した。
藤原さん 2023/3/12 22:52
私はこの作品を読むまで宮城まり子という人物をよく知らず、わずかに吉行淳之介が愛した女性で「ねむの木学園」をやっているひと、くらいの認識だった。昭和のヒット曲『ガード下の靴磨き』を彼女が唄っていることも初めて知った。
宮城まり子は美人というよりベビーフェイスで、その容貌からは妻子ある男性を奪うというゴシップが想像できない。また美男子の流行作家である吉行は、バーでは常に美人に囲まれているイメージがあるため、この二人の組み合わせは意外だった。本作のp138「A吉行淳之介との愛」には、その二人のいきさつが丁寧に紹介されている。そして作者(篠田さん)自身が投げかけた疑問「夜の街の女好きの吉行を、何故宮城はかくも深く愛し続けることができたのか」について、作者なりの答えを示している。
「ねむの木学園」の子供たちは宮城を「お母さん」と呼んで慕っているという。宮城はよほど母性豊かな女性なのだろう。子供は母親に褒めてもらいたい。母親が自分を見てくれると同時に、自分を認め評価してくれることを願う。ところがねむの木の子供たちは、自分の描いた絵を宮城が褒めたり評価したりせず、ただ「喜んで」くれることが嬉しいらしい。宮城が喜ぶ姿が見たくて絵を描いてくる子供たち、その絆は実の親子以上に一途なものがあるようで胸を衝(つ)かれた。
篠田さんの宮城まり子という人物へ寄せる敬愛の情が伝わってくる作品である。
十河さん 2023/3/16 11:11
宮城まり子については、ほとんど知らないことばかりだったが、この作で蒙をひらかれた。それとともに作者の宮城まり子への憧憬も、ゆったりと落ちついた筆致の中に知ることができた。構成も整っており、全作品の中でも秀でた出来のひとつだと感銘を受けた。
・作者は若いころに「ノンフィクション関係の書籍を手当たり次第に購入し、よく読んだ」(P.129)とあるが、ノンフィクションの作法に習熟しているように思った。読者を物語の中に引きこんでいく力が強い。
・最後の終わり方が洒脱で、題のつけ方もいい。
・終わりのページに参考文献があげてあるが、これだけの比較的短い分量の作品を書くのにも、あれだけ多くの資料が参照されているのに驚く。しかし、その労力に作品は答えているように思う。
森山 里望さん 2023/3/20 15:29
熱く冷静な作品と思いました。
筆者が若いころから深く携わってきた映画、文学、絵画を通しての宮城まり子との接点から、時系列で宮城まり子の人生、人物像、功績を淡々と敬意と畏怖を込めて書かれている。膨大な資料からの内容や筆者の思いが熱い感情にはしることなく整理されていて、大変な力作と思いました。
運動会の「銀色の轍」の行進シーンでは涙がでました。
宮城まり子という人物を、この作品から知ることができて嬉しい。私は子どもの絵が好きなので、ぜひねむの木子ども美術館を訪れてみたいと思います。
藤本珠美さん 2023/3/20 18:33
『銀色の轍〜宮城まり子を偲ぶ〜』篠田泰蔵さん
作者の膨大な資料を研究する、深い熱意と、エネルギーに感服させられる。
宮城まり子さんが、ねむの木学園に内田裕也(うろ覚えだが、たしかそうであると思う)をよび、学園の子どもたちとみなで、ディープ・パープルの「ハイウェイスター」をプレイしたときのドキュメンタリーをみたことがあるが、大音量のサウンドのなかに、一本のきれいな線があって、ほんもののロックだった。そのとき、宮城さんは本人も女優であり、歌手であるけれども、表現ということについての考えがあり、どんな環境にあろうと、幸せに生きることができるということ、人格や個性を尊ぶことを考えていらっしゃるのではないかと思った。
それから、「やさしいことは、つよいこと」。やさしさとつよさは表裏一体になっており、やさしくなければつよくはなれないし、つよくなければやさしくはなれないのだということに共感した。