「看板娘」
上終結城
上終結城さん 2024/1/31 00:55
1.創作意図、狙い
前作(第一作。第五十四号掲載『そのとき現れたものたち』)につづき、1979年頃の京都が主な舞台です。再び登場する下宿学生の悠介は、今回は主人公ではなく、基本は狂言回しなのですが、結果としてキューピッドの役も演じることになります。
前作では、短い作品にもかかわらず、多くの要素(ストーリーにとって枝葉的なエピソードなど)を入れすぎた気もします。それで今回は、ひとりの女性(絢)の姿にしぼって話を展開してみました。題材が、嫁姑や家柄問題など、われながら古風すぎるとは思いますが、約四十年前の物語だとご理解ください。作品のある部分には、私自身の体験が投影されています。作中の女性が話す京ことばは、京都で育った知人女性に添削してもらいました。
2.完成度
第一作にくらべると、書くことに少しずつ慣れてきた気はします。が、依然として、文章でなにかを表現する難しさを痛感する毎日です。今回のストーリーは、前作よりは無理のない流れにできたかな、と思います。
藤堂勝汰さん 2024/2/9 14:05
京都のお好み屋の娘と大学研究生との恋愛。
どちらかというと不器用で勉強一筋の武上正博としっかり者の絢は、正博の猛烈なアタックによって付き合い始める。
だが、結婚の段階になると、正博側の実家の抵抗に合い、駈落ち同然に結婚を強行する。
その為、夫の両親からは絶縁状態となる。正博の父が亡くなり、一人残された信子も病気がちになる。孫の肇が生まれて軟化する。最後信子の亡霊?が現れ、絢に子育ての注意をして亡くなる。
信子は家を守るが為に厳しく接して来たのであった。
ストーリーはわかりやすく、起承転結もできている。
心情がよく出ているが、ありきたりなストーリー展開の感は否めない。
昔の家制度、家柄を重んじる風習はそれがある意味当たり前であったとなんとなく推測される。
ストーリーとしては、もう一捻りあった方が良いと感じる。
前作は谷崎潤一郎の亡霊みたいなものが出て来て面白かった。
何でもかんでも著名人や亡霊を出すのは反則技であるが、読者がふっと笑ってしまったり、意外なセリフがあっても良いと思う。
克己 黎さん 2024/2/18 19:03
『看板娘』を読んで 克己 黎
上終さんの「京都シリーズ」第二弾。お好み焼き屋の看板娘・矢作絢と名家の大学院生、武上正博との恋と結婚、嫁姑問題。
さらっとした文体で読みやすかったが、あまり心に響かなかった。絢の人物像に興味をひかれなかったのと、武上家や信子の考え方が時代錯誤な気がして、ひと昔前と、感じたのである。
また、絢と正博との恋愛の過程も綿密に描かれていないため、さらっとした印象で、あまり現実味がなかった。