「文学横浜の会」

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2000年12月


 「党議拘束をなくせ」

 野党からの森総理への不信任案への対応に関して、自民党の加藤元幹事長の一連の発言で政局は一時混乱した。 細かい事は新聞に載っていること以外は知らないが、かなり緊迫した局面だったと言う。 そこで政党の党議拘束について考えてみた。

 四十年前、五十年前ならいざ知らず、今の世ではどの政党が政権を執っても、それ程大きな変化はあるまい、 と思っている。せいぜい予算配分が違ってきたり、税の負担が少し変るぐらいだろう。 それも大きな変化だと言う向きには大変な事だが、国の根幹を揺るがすような急激な変化ではない。

 今年はアメリカ大統領選でもゴア、ブッシュとも決定的な勝利には至らずもめている。 いずれ決まるのだろうが、どちらが選ばれたとしてもたいした違いはないと言う。

選挙民も択ぶ基準を決め兼ねている。だからどちらも決定的な勝利を得られなかったのだが。 そのような選択では往々にしてルックスとかテレビ写りとか、 兎角政策とは次元の異なる要素が大きなウェートを占める。現代の選挙ではそれらは大事な要素だと言う。 大統領選などでは専門のスタッフを抱えているようだ。

 共産主義政権と資本主義政権がしのぎを削っていた頃とは大きな違いだ。宗教的な対立が残る地域を除いては 平和な世界と言える。結構な事である。目出度し目出度し。

 と前置きが長くなったが、政党とはなんなんだと考えてみた。 本来ならある理念の基に集まった人たちが政党を作り、政策として実現する。 基本的にはそうなのだが、現実にはどの政党から立候補するか、候補者が選択する訳である。 つまり政党は既に存在する。勿論、既存の政党には属さないで立候補する事も可能だが、 現実的には「そうした理念とは異なるから」との理由で無所属となっているのではない。

そこで問題となるのは、政党の理念であるが、今や共産党・公明党を除けば、資本主義・共産主義と言ったような 大きな違いは政党間にない。共産党や公明党にしたって今は同じような政策を掲げている。

 選挙ではそうした政党がより多くの議席を得るために政策を掲げて戦う訳である。 選挙の時の政策など、と鼻白む向きもあるだろうが、本来なら政党にとっても、議員にとっても重要な事だ。 有権者はそれが実行されているかどうか、監視する必要がある。

政策を反古にしたり、途中で政党を変るなど言語道断。直ちに議席を返上しなければいけない。 しかし現実は当選したらもう選挙時に掲げた政策など何処へやら。情けない状態だ。

 政党の公約も事細かに掲げている訳ではない。 昔はいざ知らず、現代のように価値観が多様化し変化の激しい時代では、 即座に決断し方向付けをしなければならい事態も起きるだろう。 政党もそれは承知で、選挙時に掲げる具体的な政策など数える程しかない。

政党から出た候補者も政党の政策と共に、自ら政策を掲げて立候補する。 そうして当選しても、所属する政党の政策が優先する。

 だいたい政策を掲げて当選した議員が、党の決定だからと言って、 それとは反対の一票をなんの抵抗もなく国会内で投じる事が気に食わない。

政党政治、議会政治だとは言うが、政党が個々の議員の議決を縛るのは今の時代には古臭く思う。 主義主張が一致した人たちが集まって政党を作るとは言うが、それはもう死語になっているし、 自民党の分裂以来、政党の誕生はそうしたレベルではない事を多く見ている。 それは決定的な対立点のなくなった現在、当然の帰結と言えるのではないか。

 自民党などは党の中の派閥の意向にも縛られるという。 党としての政策も、どうして決まるのか解らない議員もいるようだ。 それでも党の決定に従えなどと、無茶な話だ。そういう事になんの疑念も持たない新人議員も多いのには呆れる。

 共産主義・資本主義の対立がなくなった現在、もはや政党の締め付けは無くすべきではないか。

所詮、同じ考えの人が集まった政党といえども、価値観の多様な今日、全ての意見が同じだとは思えない。 ましてや今の政党などそんなレベルで出来た訳ではない。 選挙区の都合や、人間関係の捩れや、或いはたまたまその政党に属していたに過ぎなかったのではないか。

反対意見の現れない政党(共産党や公明党) もあるにはあるが、少なくとも真に国政を目指す政党は党議拘束など不要だ。

 政党に属している議員であろうと、自由な議論と議決権を与えろ。 少なくとも、選挙時に掲げた政党の政策以外の議案に関しては、議員独自の一票にすべきだ。 党議拘束に反して議案に一票を投じたから除名だなど、片腹痛い。

政党が選挙時に掲げた政策とは反対の政策を推し進めるなどは言語道断。 もし政党として政策を変えるのなら、せめて賛否は各議員の自由意志にすべきだ。

長年議員をしているうちに自分の意見がなくなった、などと情けない事にはなってほしくない。 皆同じ意見・見解など情けない。 議場での自由な意見、投票を通して政治を活性化してほしい。

(KK)


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