「文学横浜の会」

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2001年10月6日


 「10月、雑感」

 アメリカで起こった航空機によるテロは衝撃的だった。

 今、何時アメリカ軍が攻撃するのか、世界中で見守っている。 株価の下落、不況、雇用不安、赤字による医療費に代表される将来的な負担増、 等等、日本でも将来に明るさを見出せないでいる。そうした中で起きたテロだ。

この問題ではアメリカと言わず世界中で色々な意見が飛び交っているが、この様な状況では正こうを射た意見は出難い。 行け行けドンドン、とばかりに単純で威勢のいい意見が通り易い。 大衆には一番判りやすいのだ。

こう言う状況になると何処からともなく、軍事評論家なる人物がテレビに出て来る。 日本だけの事かも知れないが、思えば湾岸戦争の時もそうだった。 こう言う評論家達がテレビに出て来るような社会状況にはなってほしくないと思う。

 この話は色々なところで出ているし、一筋縄ではいかない奥深く根深い背景があり、ここではこれ以上触れない。

 ***

 9月28日(金)から30日(日)にかけて第70回日本学生陸上競技対抗選手権大会(通称;日本インカレ、 日本IH)が行われた。 例年、9月上旬に行われるのだが、今年はこの時期北京で行われたユニバーシアードの関係か、9月末の開催になった。 残暑の残る暑い中での開催より、幾分秋らしい日差しのこの時期の方が、選手達にもいいだろう。 主催者には、是非この時期の開催に定着させてほしい。

 学生の陸上競技と言えば、5月の関東インカレとこの日本インカレがトラック競技の大きなイベントだが、 日本ではマイナーだろう。陸上競技そのものが日本ではマイナーだ。 国立競技場に出掛けても、各大学の応援ばかりが目立って、見に来る人も大学関係者や出場する選手の関係者が多い。 愛好者はいるものの一部に限られている。野球やラグビーと言った一部のスポーツには、 対戦カードによって、プロスポーツ顔負けの観客動員力はあるが、一般的にはどの競技もゆったりと観戦できる。

 毎年、横浜総合国際競技場で行われる関東インカレと日本インカレに観戦に行くのが私の楽しみの一つである。 何より躍動感に満ちた選手達の動きを見ているだけで楽しいし、 お目当ての選手が出ていれば、調子はどうだろうかと気になる。学生の大会だから入場料も安い。

総じて、関東の大学にいい選手が集まっているようだ。特に長距離は圧倒的に関東の大学が強い。 恐らく、正月の箱根駅伝を目指して、優秀な選手が集まるからだろう。 でも、地方に優秀な選手がいない訳ではない。昨年の鹿屋体育大の永田選手がそうだった。 あのしなやかな走りは、まだ記憶に残っている。地方の選手の活躍を目にすると何故か注目する。

 そうした中で、留学生選手、長距離部門でだが、の活躍も目に付く。 これも駅伝人気の産物なのだろう。 新興大学には、駅伝で名を売る事が校名を広める手っ取り早い方法、と考える向きもあるようだ。 留学生の活躍には色々な意見はあるが、日本選手の刺激になっている事は間違いない。 問題は長距離以外にはそうした留学生選手がみられない事だ。

 駅伝は日本が生み出した競技だ。 正月の箱根駅伝は言うに及ばず、年末年始にかけて高校駅伝、 大学駅伝、実業団駅伝と続き、都道府県の対抗駅伝まである。 どの駅伝もテレビで中継され、沿道には大変な人が出て応援する。 駅伝はトラック競技とは異なるが、日本で唯一人気のある陸上競技と言える。 マラソンも日本では人気競技の一つだ。

私も好んで観るが、どうして人気があるのかと思う。 無論、関心のない人から見れば、「なんでこんなのが面白いの?」と思われる。 でも、面白い人には面白いのだ。 七面倒臭い理屈なんていらない。

 駅伝を見ていて思う、
 人の一生は駅伝だと。
 「生」と言う襷を胸に、一日一日、
 疲れきった昨日から、今日へ、そして明日へと。
 一体、何区間あるのだろう ?
 ゴールはまだまだ先、
 いや、もうすぐかも知れない。
 誰にも見えやしないのだ。

(KK)


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