「文学横浜の会」

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2002年1月2日


 「今年はどんな年になるか」

  また一年の始まりである。
毎年毎年、必ず年の始まりがあるのだが、 考えてみれば世の中の出来事は継続しているのであり、一年ごとにリセットされる訳ではない。 それなのに年の初めは、なんとなく新たな気持になるから不思議だ。 今年こそはと新たな願いを掛けたりする。それは意識の上でリセットされたと言う事か。

今年の年末から年始へ掛けて、明るい明日への強い期待が込められていたと感じたのは、 私だけだろうか。 まあ、年初には必ずそうした願いを込めるものなのだが、今年は特にそう感じた。 デフレ現象による不景気が重く我々の生活に影響を及ぼしているのだ。

 本来、物価が安くなるデフレは、消費者にとっては悪い事ではないが、それによる不景気、 つまり会社の倒産等の現象は社会不安を招き、失業の増大に繋がる。 それなら物価を上げて適正価格にし、デフレを抑えろとの議論も出てくるが、そうすると消費が鈍る。 つまり消費者心理として、将来に対する不安があるから、出費を抑えようとするのだ。

それに国の垣根が低くなった現在、中国等から安い品物が続々入ってくる。 何せ労働賃金が日本の十分の一から二十分の一なのだ。 日本では考えられないような労働環境で、彼らは深夜労働も厭わないと言う。 それに機械化と質の向上が加味されれば、日本の生産物が駆逐されるのも頷ける。 機械や技術を中国に持って行くだけでなく、日本の労働組合の制度もどんどん持っていって、 労働環境の改善や賃金の向上にも寄与すべきだ、と言いたくなる。

「ジャパン アズ ナンバーワン」等と言われた八十年代の日本を思い返すと、 今とは覚醒の感がある。思えば一番いい時代だったと言う方もいるだろう。 確かに景気は良く、給料も年々上昇し、 企業の業績も高収益を上げて、中には米国の不動産を買い漁る企業まであった。 それから二十年も経っていない。 盛者必衰と言われた源平の時代から、有為転変の激しさは変わらない。。

今と同じような現象は昭和初期にもあったと言う。所謂昭和の大不況で、農村では身売りが横行し、 都市部では学校を出ても働けないと言う人々で溢れ、銀行の倒産による取り付け騒ぎも起った。 それは二・二六事件から一連の事件に繋がり、 日本は外への捌け口を求めて、戦争へと突き進んで行った。 その当時と違うのは、国力が当時と比べると格段に強くなった点にある。 今国の借金は何百兆もあるが、対外債務も同じぐらい保有している。

不景気だと言われながら、相変わらず世界のブランド物の消費地である事に変わりはないようだ。 一頃のように、欧米でブランド物の店に日本の旅行者が列をなす程ではなくなったと言われるが、 ブランド物の企業を支えているのは依然日本の消費者だとも言われている。 昭和初期の大不況とはだいぶ趣が違うが、それに匹敵する不況である事は確かだ。

そう言う事を考えながら、この不況をいい方向に考えたい。 日常の全てを、一度考え直してみるいい機会なのではないか。 地方の活性化、荒れた山野の復活、それらをどうすれば成し得るかも考えたい。 ものの考え方、日常のあり方、これから日本はどう進むべきか、 それらを含めて、一度全てをリセットするのもいい。

 国だけではなく、自分自身も一度リセットしてみるのもいいかも知れない。

 正月気分も手伝って、少し大きなテーマになった。

(KK)


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