「文学横浜の会」

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2003年3月2日


「きったねえー、話」

 去年の11月、今年は寒くなるような気がして、灯油を買う際に回数券を購入した。 6枚綴りの券で「安くなる」とのふれ込みだった。 前の年より寒さが厳しかったから、今年は寒くなるような予感がして購入したのだ。 だから店員の一言に惑わされた積もりはないが、結局は全部使わずに春が来そうだ。

全部使わないともったいないが、必要もないのに灯油に換えて燃やせば、化石燃料を無駄にするだけだし、 二酸化炭素を不用意に排出して大気を汚染することを考えれば、 回数券は無駄にした方がいい、とケチな僕はそう考えた。 灯油を昔ほど使用しなくなったのは、暖冬化にもよるが、なに電気で暖を取っているからで、 そんなに偉そうな事はいえないが……。

 この時季は例年ジャガイモの植付けをする(した)。家庭菜園だから、たいした広さではないが、 新年早々、土を掘り起こしたり、植付けの準備をはじめる。 運動不足の僕にはかなり重労働だが、運動のつもりでやっている。 生ゴミはごみとして出さないで、畑に返すために堆肥化して、ジャガイモの種芋ともに畑に返していく。

僕の子供の頃は畑には人糞を撒いて、畑のあちこちに肥溜があったものだ。 僕の親父などは「人糞が畑には一番いい」とよく言っていた。 「きったねぇー。かっこ悪いー」と僕は言ったけど、昔はそれが普通だったんだよね。

 何年か前、市でゴミを少なくしようと、生ゴミを堆肥に換える装置を購入するために補助金を出す、 と言うパンフレットを見て、説明会に出たことがある。 装置は何社か出品されていて、確か5万円ぐらいだったと思う。 匂いを出さない、量を少なくする、と言ったことがポイントで、無論、肥料としても有用だとの各社の説明だった。 確か、市からは2万5千円を限度として半額補助される、と言う説明だった。

幾ら補助が出るとは言っても、電気を使って堆肥化するのに少し疑問を持ったが、 そうして堆肥化しても、それを有効利用する仕組みがないことに疑問を持った。 マンション暮しの人が多いから、 結局はそれをゴミとして出してしまう人が多いのではないかと思うのだ。 補助金を出すぐらいなら、市のほうでそれを有効利用できる仕組みも考えてほしい。 いや、なにも市に頼ることはない。そう言う輪を広げて、ゴミを少なくする運動を広げよう、と思った。 思っただけだが……。

もう何年か前のことだから、今は市の方も財政的に余裕はないから、 そんな補助金を出す制度はなくなったと思う。 何事も補助金を出して解決しようとする考えは、もう改めた方がいい。 市民の方も、お上からお金が出るから跳び付く、そんな考えはやめよう。 しかし生ゴミは毎日出ているわけで、ゴミの処分に大変な予算を費やしているのも事実だ。

 僕は生ゴミを堆肥化するのに電気なんて使わない。高い装置も買わなかった。 庭の片隅に穴を掘って、生ゴミをそこに入れるだけ。 時折醗酵促進剤・消臭剤を振り掛ける。一年経てば、いい堆肥になります。

 昔の生活には絶対に戻れないけど、人間の排泄物を、今はお金をかけて浄化処理して川や海に流し、 畑には農薬を購入して肥料として撒いている。何事にもお金が掛かる仕組みになってしまった。 農薬の人体への影響を心配する声が強くなったのも、当然と言えば当然だ。 恐らく、長い歴史の中で、人間の排泄物をお金を使って捨てるような仕組みを作ったのは、 極々最近の事だと思う。

自給自足生活を理想と思うからには、排泄物を「きったねー」等とは言っていけない。 これからは科学の力で、人間の排泄物でも、土に返すような仕組みを作ってほしいものだ。 そうすれば、何も有害な農薬を購入する必要もなくなるし、 何より大地に優しい肥料になるのではないか。 これこそ人類に役立つ本当の科学だし、産業だと思うよ。ノーベル賞をあげてもいい、と僕は思うな。

 年末に知人から貰ったチューリップが、このところの暖かさでだいぶ伸びた。確か11月頃に植えたもので、 他の球根の芽も、随分と伸びたような気がする。 春はもうすぐだ。今年もきっと綺麗な花を咲かせてくれるだろう。

土いじりをしていれば、世の中の不況だの、イラク・北朝鮮問題など、忘れるちゃうよ。

<K.K>


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