「文学横浜の会」

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2007年8月5日


「自民党大敗の原因は小泉前政権と安倍現総理の資質」

 参議院選挙は自民党の大敗に終わった。

 7月29日の選挙当日、午後、投票に出掛けると街は不気味なほど静かだった。 休日の通りは自動車が連なり渋滞しているのがいつもの光景だが、その日は渋滞もなく車の数も極端に少なかった。 朝から曇天で、いつ雷雨に襲われるか判らない天候が影響しているのかとも思ったが、やはり不気味な街の静かさだった。

 投票所はいつものような人の光景で、特に寂しい人の人数ではない。街の不気味な静かさは、 ひょっとすると何かが起こる前兆ではないか、とぼくは漠然と感じていた。

 報道各社の事前予想では民主党の優勢が伝えられていたが、果たしてどういう結果が出るか、 こればかりは票を開けて見なければ判らない。 で、午後8時の投票締切りを待って、各報道メディアの投票後の聞き取り調査が一斉の報道された。

この時点で事前調査通りの傾向だという事が判明した。結果は既に報道された通りである。 自民党対民主党だけでみると60対37である。無所属や非改選の議員を含めて与野党の勢力図を見なければいけないが、 今回選ばれた勢力は少なくとも6年間は続く。

 与党の敗因は各報道メディアで色々と語られているが、見方によれば今日本は政治の分極点にあるのかもしれない。

 今回の地方区では東京都区を注目した。前回(6年前)の選挙でトップ当選し、 今回も当初優勢と思われていた自民党の保坂三蔵氏が次点に泣いた。代わりに劣勢を伝えられていた丸川珠代氏が当選した。 民主党でも当初は劣勢だった大河原雅子氏がじょじょに支持を集めてトップ当選し、 当初予想では優勢だった鈴木寛は3位当選だった。これらから判ることは選挙民は事前予想をよく見ているということだ。

で、当初当選圏内にも入っていなかった川田龍平氏が当選したことに、ぼくは選挙民の健全さを思う。 川田氏は人権団体から出馬した訳だが、 ともすれば政治団体やマスコミに出まくっている知名人に票が流れがちだが、 地道に人権運動に取り組んでいる川田氏が都市部で当選したことは注目に値する。

そしてもう一つ、地方の1人区で民主党が圧勝したことも今回の特徴だろう。 言い換えれば自民党の組織力が衰えたということである。地方では、地域の有力者の推薦で投票するというような、 そんな投票光景はなくなったと思いたい。川田氏の当選を含めて、選挙民の意識が向上したと思いたい。

 そこでぼくなりの自民党の敗因を分析してみた。敗因は次の2つに集約されると思う。
1)「自民党をぶち壊す」と登場した小泉前首相がやっと目的を達成しつつある。
 なによりの根拠は地方の1人区での大敗がそれを物語っている。 自民党は功罪はあるものの地方へのバラマキで政権を維持し続けていたと言える。 そして政権を維持することによって政党を維持してきたのが自民党でもある。

「郵政民営化」の是非を前面に先の総選挙を実施したのも小泉政権だ。ちょっと考えれば全く無茶な選挙だと判るが、 それで得た圧倒的な数を背景として、郵政とは全く関係のない多くの法案を強行採決したのが安倍政権である。 衆議院での圧倒的な数を背景にして、皮肉にも与党が、ますます「自民党をぶち壊す」方向に向いているように思う。 能力以上の力を与えれば、自ずと自壊するものだ。

「郵政民営化」の是非を前面に先の総選挙を実施したからには、「郵政民営化」がなった時点で衆議院は解散すべきだった。

2)安倍現首相の資質に国民が疑念を持ち始めた。
 安倍首相は小泉前首相からなかば禅譲されたようなものだ。要するに小泉前首相の政策を継続させると。

首相になって10ヶ月余り、首相の発言が多くなるにつれて化けの皮が剥がれたというか、地が出てきたというべきだろう。 つまり安倍首相は民意や周りの意向がつかめていないというか、鈍感だ。 自分が指名した数々の大臣の不謹慎な発言やお金の問題にしても、それは致命的な問題ではないと思う。 首相を評価するに、国民はそんなに愚かではない。

所謂、国民年金の問題にしても、当初、自民党(官邸と言い換えてもいい)は民主党の管さんに責任を押し付けようとした。 そのためのビラまで大量に印刷した。幾らなんでもこれはと、途中でばら撒くのは止めて破棄したようだ。

5000万件の不明についても、首相は1年以内にすべて解決すると明言した。1件も残さずに、と。 おいおい、そんなにはっきり言っていいのかよ、とぼくでなくとも思うだろう。 選挙中の発言とは言え、いや選挙中だからこそ、発言には謹んでほしい。すべて解決できるにこしたことはないが、 5000万件もあれば確率的に何%かはどうしても解決できないものも出てくる。それが常識だ。

年金保険庁の問題にしても、あたかもそこに働いている職員が悪いというような発言をしていたが、 悪いのは制度そのものと、殆どが天下りの上層部だ。 天下りの役職員は2・3年しかいないのに庁職員の人事権をはじめ多くの権限を持っている。 そうした視点が安倍首相には全くない。どんな組織にも一部まずい職員はいるものだが、 働いている職員が悪いと言うような首相の発言に違和感を持った者も多くいるだろう。

年金問題では「百年安心」法案だと言って強行採決したのは一体何年前だろう。 国民は忘れてはいない。

 そして今回の選挙では「総理にふさわしいのは私か、小沢か」と安倍首相は叫んでいた。 大敗しても、どうやらまだ首相の座にいすわるようだ。

 先の総選挙では与党に数を与え、そして今回は野党に数を与えた。 これだけでは民意が向上したとは言い切れないが、与野党とも、だらしない政治をすれば次の選挙でその結果を示す。 国会では政党間の駆け引きばかりではなく、政策の討論を真剣に行ってほしい。 国民はそれを見ている。

<K.K>


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