「文学横浜の会」

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2007年12月4日


「不正表示と防衛庁疑惑」

 先月から食品の不正表示の報道が気になっている。
いつ頃から日本は法令遵守にこれほど敏感になったのだろうか。それ事態は悪い事ではないが、 昨今のニュースの取り上げ方はいささかヒステリックな感じがする。

ぼくの感覚では以前はもっとおおらかだったように思うし、それで食品被害がやたらに多かった、と言う記憶もない。 表示にしても「本当かなぁ」と思いながら、購買者の方もさして真に受けていなかったように思う。 だから表示する方もそんな感覚で、「こんな表示をしておけば売れるのではないか」と安易に表示していたのではないか。

今はグルメブームとか美食の時代で、消費者も産地や表示をみて食品を購入するようになった。 カロリーにおける自給率が40%を切る我が国において、本来、このこと自体を問題にしなければいけないのだが、 それなのに現実はグルメブームと美食の時代だ。 で、一度マスメディアで取り上げられるとその商品の売れ行きは伸びること請け合いだそうだ。

老舗の店舗なら、マスメディアに取り上げられなくとも、口コミやローカルなメディアに取り上げられるだけで、 それだけで人気商品となる。そうした人気商品の中には確かに、所謂、美食家を満足させる商品もあるだろうが、 全てがそうと言う訳ではない。

つまり世の中の全ての人が商品の善し悪しを見分けられる敏感な味覚を備えている訳ではない。 多くはマスコミに取り上げられたムードに乗っているに過ぎない。これは「グルメブームとか美食の時代」の裏返しでもある。 結果、多くの人がマスメディアに載せられて、自身の味覚判断を放棄したことになる。

 そして「コンプライアンス」、所謂、法令遵守の思想が波及して食品にも及んでいる、と言うのが昨今の状況である。 そのこと自体は間違いではないが、「表示」が違うと言うだけで「全ての商品を廃棄する」と言う記事を目にすると、 「おい、ちょっと待て」と言いたくなる。 「表示を正しくしろ」と指示するのはいいが、「全てを廃棄しろ」とは言っていないと思うのだが? 

 売る方も、正味期限切れが近いからと言って、廃棄するようなことは考え直してほしい。 廃棄するなら値段を安くして売ればいい。 買う方も、正味期限切れの商品であっても、食べるかどうかは自己責任で決めればいい。

購買者の中には表示に敏感な人もいるし、そうでない人もいる。 安ければいいと思う人もいるし、少々高くても確実に新鮮な物をと思っている人もいる。 食品については個人差もあり、何を食べても食中りをしない人もいるのだ。 正味期限の切れている食品を食べるかどうかは買った方の自己責任にすればいい。

 無論それには生産した年月日、使用した物、等の表示は正しく義務づける。それを犯した生産者は厳しく処罰する。 それだけでいい。つまり消費者も自己責任なのだ。安い商品を選んだら、食べられるかどうかは本人が判断すればいい。

 それにしても防衛庁の汚職疑惑問題は藪の中だ。料亭での会合に防衛庁の守屋前次官は出席したといい、 現職の額賀財務相は出席していないと言う。 防衛予算、国家予算に絡む問題に政治家が全く関係していないなんて誰も思っていないが、 政治家が絡むと問題は複雑になる。

と言うのは政治家には問題をあからさまに出来ない事情があるからで、問題が表面に出てくる前から、 政治家側でもそれなりのガードを固めている。 政治史と言えば数々の汚職史と言ってもいいほどに様々な汚職事件がある。

数々の汚職事件を経て、政治家に関する「お金」については多くの規制がある。 国の「予算」の一部を貰っているのだから当然だが、 政治家はそのお金だけでは政治家としての職務を全うできないと主張する者もいる。 公にはできないお金の出費もあるとも言う。それで色々な方法でお金を集める必要があるらしい。

そうした背景から政治家と国のお金を牛耳る官僚、少しでも国からお金を得て仕事をしたい業界とのトライアングルが生じる。 これは古くから続いていて、そして残念ながら今後も続くだろう。しかも益々巧妙に。
今回の問題については何処まで解明できるか、政界に及ぶのかに関心が集まっている。 政治家が関与しているのは間違いないが、政治家の方もそんなにおいそれとしっぽは残さないだろう。

 官憲の取り調べについては様々な問題点が指摘されている。不当な拘束、不当な取り調べ、長期間に亘る拘束、 不当な自白強要等々。しかし国民の側からは官憲だけが「正義」である。 防衛庁の汚職疑惑問題についてどんな決着をみるのか注目したい。

 このような問題を少しでも抑制するためにも、政治資金についての領収書の添付は1円たりとも絶対に必要だ。 

<K.K>


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