「文学横浜の会」

 エッセー


INDEX 過去のエッセー

2008年5月4日


「権威ある国のマスタープランを」

 暫定税率が復活して、4月30日はガソリンスタンドに車の行列ができた。 そこだけ見るとなにか滑稽な光景だった。

暫定税率の復活に当たって、政府はもう少し国民の視点で考えてほしかった。 ゴールデンウィークの後半が始まる1日からの実質ガソリン代値上げでは、休暇中、 車を使った遠出を避けようとする者も多かろう。 サブプライム問題による不況が言われている中、行楽地の人出にも影響が出てくるのではないかと思う。 復活は言語道断だが、せめてゴールデンウィーク後にしてほしかったと思うのはぼくだけではあるまい。

 さて、出鱈目な使い方されている道路特定財源は今年度で終わらせると与党は言っているが、 その動向に大いに関心をもって見つめなければいけない。が、問題はそれだけではない。 一般財源になったところで無駄に使用される懸念は大いに残る。

税金の無駄な使い方の最たるものは採算の合わない地方空港の着工を始めとした筺物行政だろう。 官僚の「省益」あって国の視点がない、とは前々から言われている事だが、 日本国の欠点として国をどうするのかのしっかりしたマスタープランがない事だ。 或いは、何処かにあるのかも知れないが、 広く国民に知られていないのがそもそもの間違いなのではないか。 現状では各省庁で勝手に筺物を造ったり、予算の抱え込みをしているように思える。

国のマスタープラン作成に当たっては内閣府直轄で民間の知恵を結集してほしい。 国会議員が加わると、どうも選挙の事が頭から離れないから、ゆがんだプランになってしまう危険がある。 選挙に熱心な業界の声が国会議員の耳に多く届き、往々にして国民の声だと間違える結果になる。 多くの日本の地方都市では、建設土木産業が大きなウェイトを占めて、そう言う産業が選挙に熱心なのだ。 その見返りとしての土木事業であり、官僚がそれに乗っていると言うのが実態だ。

今もって言われている事だが、瀬戸内海にどうして採算の合わない3本の橋が必要だったのか漠然としている。 そして橋はできて莫大な借金だけが残され、後世に大きな負担を残した。 こうした実例は日本の至る所にあるのではないか。

国としての国際空港は利便性と発展性などを考慮して定める。 どこもかしこも国際空港では検閲官などの無駄も多くなるし、各県に一つづつ空港を造る必然性はあるか。 こうした国レベルのマスタープランは各党の選挙の争点にしてもいい。 個々の細かいマスタープランは争点にしにくいのなら、考え方なり、国をどういう方向性に持っていくかを争点にしてほしい。 先の総選挙のように、郵政民営化だけの争点では、後々の国政を誤る危険がある。 国家としての問題点は何も「郵政民営化」一つだけではない。

それに国家レベル以外の行政はどんどん市町村レベルに移せばいい。 予算も無条件に地方に移し、地方で考えさせる。 例えば道路整備の問題でも、2・30戸の集落へ何億もかけて道路を整備するより、 転居費用を補填した方が安くコンパクトな移住空間になるなら、地方の裁量に任せるべきだ。 コンパクトな移住空間の方が、これから急速に高齢化を迎える住民には快適なのではないか。

 いずれにしても現状では予算の無駄遣いは多い。まだまだ実態が表に現れていない事も多いと思われる。 道路特定予算の杜撰な使われ方が暴露されたのは、参議院で野党が多数を占めた結果だ。 無駄遣いが多くなったのは永らく自民党を中心にした政治が続いて、行政に緊張感が無くなっていた結果だが、 国民の「お上意識」も大きかったと思う。 それに予算を執行する方に国民の血税を預かっているという意識が全くないからだ。 でももうお上意識は薄らいできたし国民の見る目は厳しくなっている。

 ここは不退転の決意で官僚機構の改革が望まれる。高齢化社会を目の前にして残された時間は少ない。

<K.K>


[「文学横浜の会」]

禁、無断転載。著作権はすべて作者のものです。
(C) Copyright 2000-2004 文学横浜