「文学横浜の会」

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2009年2月5日


「不況を克服するために、」

 アメリカではオバマ新大統領が就任して、政治が動き出した。 未曾有と言われる世界不況の中、景気回復への道筋がすんなり行えるかどうか、世界の耳目を集めている。 外国からの報道を横目に、日本の政治状況をみると、なんともお寒い限りである。

百年に一度と言われる不況の中でも、今年中には必ずある総選挙をにらみ、与野党は今選挙のことで頭が一杯だ。 与党は如何に有利な状況での解散をしようとし、 野党も何がなんでも早く総選挙に持ち込もうと躍起である。 こういう状況は、総選挙をするすると言って先延ばしにしている与党に大きな責任があるのは間違いない。 与野党とも、未曾有の大不況と認識しているのなら、 少しでも早く景気対策に限定した政策実施に協力して当たってほしいものだ。

 不況だ不況だとそんな言葉ばかり聞くと、気が滅入ってしまう。 そこで今の日本の現状を整理してみたい。
@日本は少子高齢化で、戦後のベビーブームで生まれた世代が今60才前後になって高齢化は加速する。
A日本の農村は高齢化し豊作放棄された田畑が各地に点在して、地方は疲弊している。
B日本の食料自給率は40%を切って、先進国の中では最低だ。
C日本は高齢者が増えて介護分野の需要が発生するにも拘わらず、介護分野の予算割合は少ない。
D日本の山野は、材木の低価格もあって林野業が低迷し、荒れている。
E日本は中国に代表される低労働単価に押されて、物作りの基盤を失いつつある。
F日本の企業収益は円高によって急激に悪化している。

 以上の中で、
Eについては、景気の回復がなってもその傾向は強まるこそすれ、後戻りすることはないだろう。 つまり日本国内での単純労働者の必要性は今後益々少なくなる。

Fについては企業の競争力を高めて対処するしかないが、グローバル化した現状の輸出に頼る企業では時間との勝負だ。 しかし円高は原料を輸入に頼る企業には有利な材料で、円高を悲観的な材料ばかりと捉えてはいけない。 ここは企業努力を重ねてじっと我慢しなければいけない局面だが、 それにしても急激な為替レートの変動はなんとかならないものだろうか。これは企業努力とは次元が異なる。 この問題こそ世界の英知を集めて、何らかのルールを決める必要があるのではないか、とぼくは思う。

@〜Dについては日本国内の問題だ。
これらを見詰めると高齢化、食料自給率、地球温暖化の三つのキーワードが浮かんでくる。 つまりこれからはこれらに予算と労働資源をつぎ込む必要があると言うことだ。 従来の土建国家型の「箱もの予算」から介護分野へのてこ入れ、農業従事者支援による食料自給率の向上、 山林整備国内木材への支援、それらに予算をシフトする事だ。労働力も@からDへにシフトすることが望まれる。

折しも、インドネシアからの介護要員のたすっととして200人余りが来日し、研修を終えて各地に散った。 これからも少しずつ海外からのたすっとを増やす予定だそうだ。 このように介護分野では給料の安さから絶えず労働不足が生じているのだ。 こういう分野に予算をつぎ込み、Eで余っ労働力を吸収できる筈だ。

農業分野でも少しずつではあるが、各地で活性化の動きがある。
国は頼りにならない信頼出来ない、“ノーセー”だと揶揄されるばかりでなく、 真に国家・農民・国民のことを念頭に置いた農業政策を打ち出してほしい。 無闇に補助金をばらまいたり、農業土木に資金を廻すのは止めてほしい。

また地方の山野に限らず、近郷の山地も荒れ果てているが、 これは化石燃料のシフトしたことによって近郷の山地が放置された結果である。 50年前は少なくとも近在の山地にある「木」は薪として利用されて、山は整備されていた。 その近在の山が今、50年も放置されたままなっているのだ。放置すればますます荒れ果てるだろう。 こうした不況の時代にはこうした分野にも予算をつぎ込んで仕事を作ってもいいのではと思う。

どういった政策でも、目的を明確にして国は早急に取り組んでほしい。 それには早急に選挙を実施して、直近の民意を反映させ、腰を据えて取り組むしかない。

<K.K>


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