「文学横浜の会」

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2009年4月5日


「テポドン2号と不況」

 テポドン2号がいつ打ち上げられるのか、という話題とともに4月になった。 日本に実害の及ぶ確率は少ないとのことだが、報道機関・政府の対応振りは些かかまびすしい。 日本の対応は、隣の小国に振り回されている、という印象だ。

非常事態への対応は怠りなく進めるのはいいが、あたかも危険がすぐそこに迫っているかのような報道は、 隣の小国から見れば滑稽に思うだろうし、テポドンを打ち上げる大きな目的の一つを果たしたことにもなる。 恐らく、日本国内に、北朝鮮のこうした挑発を利用しようとする勢力があるのだと思う。 国内の平和ボケした国民の意識を、こういうことで覚醒させたいとの狙いもあるのだろう。

WBCでの国内の熱狂振りや、先の郵政選挙における自民党圧勝にも見られるように、 国全体がある方向に向いてしまうかのような熱狂は、スポーツの世界なら許されても、国民として心しなければいけない。 中国やアメリカ、ロシヤなどの大国と比べて、日本は単一民族といえるから、容易に国全体がある方向に向いてしまう、 という傾向があるようだ。

宗教の世界でもそうだが、過剰な執着、熱烈な支持、それ故に“異なる”ものへの排除思想には慎まなければいけない。 過剰な報道にはちょっと距離を置いて、冷静になって眺める目を持たなければいけない。 と書いているうちにテポドンが発射された。
無論、北朝鮮の声明は人工衛星の打ち上げだが、日本の対応はなんとなく釈然としない。

 さてさて、国全体が、いや世界中が不況の中で新年度を迎えた。少し前は不況感だったが、今は間違いなく不況だ。 話題を呼んだ定額給付金も、順次支給されているようだが、不況を吹き飛ばすには到底及びそうもない。 年末話題になった派遣切り問題も、ここにきて益々その数を増し、正社員も安泰とはいかなくなったと言う。

そんなニュースや記事を目にするとお先真っ暗だが、なに、何れ回復する。 世の中、いつも好況ばかりではないし、不況があるから好況もある、と呑気な事を考えている。 好況と不況を繰り返しているから世の中は面白いので、世の中の流動化を促進させている。

不況は悪い事ばかりではない。 不況になって今まで見向きもされなかった農業や介護への関心が集まるっているが、良いことだと思う。 不況になって関心が集まるのは、些か不満だが、この際、不況は悪いことばかりではないことの事例だと思いたい。

 ぼくは働くことの基本は農業だと思っているし、それは今も変わらない。 働く事は本来、自分の食べる物を得る行為だと思っている。 多くの現代人は農業以外の労働によって賃金を得て、間接的に食料を得ているにすぎない。 その賃金が農作業の価値に比べて高い、と言うのが現実で、不況になって農業の価値を見直す機運になったのだろう。

もともと労働には格差はないと思うが、現実は大きな格差がある。農業以外の労働にも大きな格差がある。 色々な労働があって内容も様々だから、違いがあって当たり前、と言われるかも知れないが、ぼくはどうも釈然としない。 全部同じにしろと言うのではなく、ぼくが言いたいのは「格差が大きすぎないか」という事だ。

好況期に金融業では何千万或いは億単位のボーナスを手にした者もいる。 反対に汗水たらして一生懸命に働いてもボーナスなし、という労働者もいる。 何故そうなるのか理屈では判っても、ぼくにはどうしても納得出来ない。 社会主義社会のように、全て公平というのではなく、労働対価は公平に、働いた者にはそれなりに報われる、 そんな仕組みはできないものだろうか。

<K.K>


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