「文学横浜の会」
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2010年11月4日
「領土問題を考える」
このところ領土問題に関するニュースがかまびすしい。
尖閣諸島の領有権をめぐる対中国、北方領土四島をめぐる対ロシア、それに今は目立っていないが竹島をめぐる対韓国。
日本はこの三つの領土問題を抱えているが、日本が実質支配している尖閣諸島には領土問題はない、
というのが日本政府の立場だ。しかし中国政府は著しい経済成長を背景に近隣諸国との領土問題に敏感に対応するようになった。
そうした背景に起こったのが今回の中国漁船衝突事件だが、中国政府の取った措置はなりふり構わぬ強硬なものだった。
それに対する日本政府の対応はやや軟弱、と思われても仕方がない。
一方、北方領土にメドベージェフ・ロシア大統領が初めて視察したというニュースが駆け巡った。
日本政府による再三の懸念・中止勧告にも関わらず強行したのだ。北方領土は改めて言うまでもないことだが、
日本の領土である。それがロシアに支配されているのは前の戦いの結果で、
第二次世界大戦の終局場面でソ連に支配されてしまったのだ。
つまり負け戦の結果だと言える。
戦後、日本政府は一貫して四島の主権を主張し平和裏に四島の返還をソ連に求めているが、
そんなことでは領土は戻って来ない、と言うのが欧米諸国での常識だそうだ。
つまり戦争で失った領土は戦争でしか取り戻せない。
日本では沖縄が返還された実例からか、北方領土もいづれ返還されるだろうとの甘い見方もあるが、そう甘くはない。
同盟国・友好国として沖縄は返還されたが、返還された今も多くの米軍基地が残り、
返還されたとはいえ日本政府、沖縄県政の思うような治世ができない事は現実を見れば明らかだ。
振り返って北方四島を取り戻す絶好の機会はソ連が崩壊した際だったろう。
物騒なことを言えば、相手国の混乱に乗じて力で取り戻すのが一番可能性が高かった。
(但し、日本の犠牲も相当覚悟しなければいけないが)
だけど平和を標榜する日本国としてはそうした議論すらなかったし、国情からして武力での解決は無理だ。
それでも元自民党の鈴木議員を中心に領土返還交渉を画策していたのは、佐藤優氏の一連の書物を見れば判る。
しかし小泉政権になった後の日本の対応は、鈴木氏・佐藤氏の今日置かれている状況を見れば明らかだ。
日本は北方四島を取り戻す絶好の機会を逸したことになる。
北方四島に対してこれまでの日本政府の対応が間違っていたのは明らかだが、
この局面でどうしてロシア大統領が日本の感情を無視して北方四島を視察を強行したのか。
政府の方でも分析していると思うが、ロシアが民主主義になった結果だ、と言う見方もある。
つまり国家の制度が共産主義から民主主義に大きく変わり、
そうした混乱からどうにか安定して、投票で選ばれる大統領のシステムが定着した結果だ、という考え方もある。
つまり大統領に選ばれる為には大衆の支持を必要とし、そのためには大衆に支持されなければいけない。
それは民主主義のどの国家にも言えることだが、共産主義のソ連時代にはそんな必要はなかった。
しかし民主主義のロシアとなって、メドベージェフ大統領が再選を狙って大衆受けを狙った行動を取る。
それが今回の北方領土視察とも考えられる。最もそれだけの理由だとは思えないが、動機の一端であることは間違いない。
そういう思考から、仮に中国が民主主義に変わったらと思う。
今は共産党の一党支配で民衆を抑えているが、民主主義になって大衆迎合の政策をするようになったら、
日本に対する圧力は今より増大するだろう。
中国の共産党一党支配や人権侵害を批判する意見もあるが、民主主義化されて大衆迎合政治に変わったら、
領土問題に対して日本への圧力も強くなると考えた方がいい。
各国が大衆迎合路線を取りそれぞれ強行路線をとるとどうなるか。
つまり力の強い国、武力によって決着をつけるような時代に逆戻りするのかと言えば、それは絶対にあってはならない。
核を背景ににらみ合う状況は絶対に避けなければいけない。
とは言うけど両方の利害が対立すれば、決着をつけるには力関係で強い方が勝つ。
その為には外交努力も必要で、外交の背景には国力、力も必要だと言う議論になり、
力を背景にした外交には武力の後ろ盾が必要だとなる。
だから日本も核武装すべきだ、との考えには組したくない。
となると日本の為政者はこうしたことをよくよく考えて発言しなければいけない。
恰好よく自分たちの利益や主張だけを声高に主張して大衆を刺激してはいけないし、
野党といえども国政を預かる一端だと自戒しなければいけない。
国家間の諸問題はどちらが正しいのかと言うのではない。どんなに正しく国際法上において正当な理のある事項でも、
国家間の問題はそれで解決することはない。
国家間に生じた問題の解決にはそれぞれの国益が何にも増して優先するのであり、
時には無知な大衆パワーを背景に、指導者同士の虚虚実実の駆け引きで決着を先延ばしにする。
領土に関しては両国が納得するような決着は難しい。それが現実なのだ。
悲観的な事を書いたが、昔と比べると国家間の貿易取引が増大していて、
そうした貿易取引抜きにはそれぞれの国家が成り立たなくなっているのも事実だ。
と言うことは「一国だけでは生きていけないシステムを創る」それが国家間の全面な争いを防ぐことになるかも知れない。
<K.K>
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