「文学横浜の会」
エッセー
INDEX 過去のエッセー
2010年12月4日
「北朝鮮問題とウィキリークス」
やはり北朝鮮問題、所謂朝鮮半島の緊張と民間告発サイト「ウィキリークス」を挙げなければなるまい。
現代にあってこの二つは対極にあるように思う。
北朝鮮からの韓国・大延坪島(テヨンピョンド)への砲撃は、平和に安穏としている日本の国民にも大きなショックを与えた。
北朝鮮のしていることは前時代的な手法で、瀬戸際外交つまり武力による脅しであり挑発であり、
現代にあっては到底認める事は出来ないし、そういうことを通して援助を得ようと考えているとしたら大きな間違いだ。
そんな国と国境を接している韓国の苦悩は察するに余りある。が、挑発にのって短絡的に考えてはいけない。
民間人にも及んだ無差別砲撃に対して、韓国国内では一層の反撃を支持する世論が60%を超えたそうだが、
そうした対応をすれば今より多くの犠牲者が出ないとも限らないし、相当の被害を被ると覚悟しなければいけない。
韓国政府としてはなんとも悩ましい問題だ。
もし挑発が続いて、これ以上の我慢を国民にしいれば、不満は何時かは爆発する。
若者に穏健な意見が多いというのは救いだが、これはもし武力抗争になれば徴兵制を敷いている韓国では、
多くの若者が兵士として駆り出されるからだろう。戦争は映画の中だけにしてほしいと思っているに違いない。
仮に全面的な武力抗争になれば日本も対岸の火事と安穏としてはいられない。それならどうすればいいのか。
局地戦だけで北朝鮮を抑えつけられればいいのだが、日本の何処かへ爆弾が落ちてくる事も考えられる。
そうなれば多くの犠牲者が出る事も想定される。そういう事も考えてゆめゆめ短気は慎まなければいけない。
そういう事を国民にも伝え、覚悟を促す必要もあろう。
一方、ウィキリークスの告発サイトは正に現代のネットワーク社会の盲点だろう。確かに物事を知る権利はあるが、
一方的な告発は正しい方法なのかと考えざるをえない。
今は米国政府の内部資料が公開されているが、何時自国の極秘資料がネット上に流れるか、各国政府は他所事ではないだろう。
日本でも警察の極秘資料が流れたり、非公開の映像がネット上に流れた。
ウィキリークスの告発サイトとこの二つはネットを通してと言うことで似ている。
恐らく同じような事が他国でも起こっているのだろう。
セキュリティを強化すれば使い勝手にも影響するし、内部の人間が関与すれば、
情報を持ち出すことはそんなに難しいことではない。
内部告発と言う言葉を聞くようになったのはそんな昔ではない。それがネットワーク社会の普及と共に、
あっと言う間にネット上に流れ、つまり世界中に同一情報が流れる時代になった。考えれば恐ろしい。
内部告発ではなくとも単に興味本位であったり、悪意であったり、
組織に対する恨み妬みであったりと情報を漏らす要因は多々ある。
何が恐ろしいと言って、そうして流れた情報は真偽こもごも、情報の発信意図によってはいかようにも捏造できる事だ。
そうした事を念頭に入れなければいけないが、情報だけが世界に発信され、それが独り歩きする。
無論、正しい告発もあるだろうが、情報源がはっきりしない限り何処まで信じられるか判らない。
尖閣諸島における中国漁船による衝突事件の映像をネット上に流したのは海上保安庁の職員だったが、一部の報道では、
よくやった、愛国行為だ、と言うような発言を聞くが、そうは思わない。
だいたい国を思った行為だと思うなら、退職してから行動すべきで、こそこそ行う事ではないのだ。
捜査が進んで、発信元が神戸のインターネット喫茶だと判明して、監視カメラの映像を徹底的に調べれば身元が危うくなる、
と考えて自ら手を挙げたと考えられても仕方がない。
国同士で行う交渉事には、多分に国民を刺激しないようにとの配慮もあり、
何もかもおおっぴらにすればいいと言うものではない。
何が一番まずいと言えば、それは極端な愛国心だ。どんな国民も自国を愛する心は同じだと思う。
一番いけないのは、殊更愛国心を煽る事だ。往々にそれは“騙る”事にも繋がる。
何れにしても情報は発信の仕方によって、世論をどうにでも操作できる要素がある。
それは政府、つまり施政者側にも言える事で、政権にとってまずい情報は隠すきらいがある。
そうしたことが今回の背景にあるのは間違いない。
となればこれからは、益々、流れる情報の真偽はもとより、その裏に隠れている真実を見定める目も必要になる。
*
日本の国会には辟易する。情報が漏えいした原因や体制を検証し見直す議論をすべきなのに、
政府の責任論や些末な見るからにパフォーマンスとしか思えないやり取りをしているようにしか思えない。
国会論議どころか声高に罵り合い、あげ足取りや言い間違えをあげつらっているだけで、これが日本の国会か、と情けなくなる。
政権が変わったのに昔の野党となんら違いがない。
アメリカからは資料漏えいの原因やシステムの見直しなどのニュースは聞くが、
あれだけの機密資料が漏れても個人の責任論は聞こえてこない。
幾つかの問題はあるにしてもやはりアメリカの政治家は、残念だが日本よりましだ。
まだまだアメリカから学ばなければいけない事がある、と言う事か。
*
今日本が取り組まなければいけない最重要課題は、財政の健全化だ。
37万円の収入に対しておよそ92万円の支出をしている。
それが10年以上も続いていて今や国の借金は1,000兆円を超えようとしている。
そうした財政構造を早急に正さなけれないけないのに、国会がこの有様では、、。 <K.K>
|
[「文学横浜の会」]
禁、無断転載。著作権はすべて作者のものです。
(C) Copyright 2000-2004 文学横浜