「文学横浜の会」
エッセー
INDEX 過去のエッセー
2011年4月6日
「大震災で政治はオールジャパンになったか」
3月11日を境に日本は一変した。
3月11日午後2時45分頃東北地方を襲った地震、太平洋側を荒れ狂った津波、
そして福島第一原発事故と日本は今戦後最大の苦難に直面している。
画面を通して見る津波の恐ろしさに暫く虚脱状態に陥って何をする気力も失ってしまった。
自然の破壊力はどんなに技術が進んで人間の英知を集めた土木事業もたいした守りにならない事を実証した。
巨大な地震や津波には、人間はただ逃げるのが最大の防御だと改めて思い知らされた。
今回の巨大地震は千年に一度クラスの地震だと言う。
巨大地震でなくとも大きな地震は日本の何処かで平成の時代になっても何度も発生しており、
そうした国土の中で我々の祖先は生き続け、幾多の災害を乗り越えて来た。そうした国土から我々は逃げ出す事も移動する事もできない。
ならばそうした自然と付き合い、慈しみながら生きて行かなければならないし、我々の先人達もそうしてきたのだ。
先人達はそうした災害に対して、地域の仲間同士の中で支え合い乗り越えてきた。
しかし今、世界から送られる日本への熱い応援や支援には勇気づけられる。確かに津波に襲われた地帯は廃墟に化したが、
それは戦争によって廃墟になったのではない。戦争は人間の不信や憎しみから生じ、そして更なる不信と憎しみしか生まない。
しかし自然災害は自然への畏敬と更なる慈しみを生み、そして人間の一体感を生む。そう信じたい。
原発事故に関しては苦々しい思いで見つめている。
そうしたことから日本の原子力技術は進んでいて事故は絶対に起こらないと原発を推進する側は強調してきた。
それが政策となり、安全神話を植え付け、代々の政権に引き継がれてきた。
電力会社にも技術への過信と安全神話を植え付け寄生したと言っていい。
原発は安全だとの前提の最大の弱点は最悪事故の想定や対策についての思考を停止してしまったことだ。
或いはそうした事を公にできなかったことだ。
安全だから事故は起こらない、従って最悪のシナリオは有りえないと短絡的に結び付けてしまう。
それは福島原発の立地に当たって東電が地元民用のPRビデオを観ても判る。
原子力発電所内でのちょっとした事故でもそれを隠す体質はそうした「原発は安全だ」との暗黙の締め付けから生じるのだろう。
つまり福島原発事故は人災だと言える。
でも今更そんな事を強調しても今の事故の解決にはなんの貢献にもならない。
只々、事故が早く収まってほしいと願うのみだ。
この巨大地震が前の時代、つまり帝国主義時代、弱肉強食の時代に発生していたら、とふと思う。
あの時代は少しでも国の弱点を見透かされれば他国から侵略される時代で、
だから天候状況をはじめとしてこうした情報は国家の機密情報、絶対に秘密にしなければならなかった。
そうした時代を経て今の“国”の形ができたと言える。
それ以前は今言われるような明確な国境線など存在しなかった。
今の国家とはそんなものだ。
それが国土と言うと、あたかも国家にとって絶対に不可侵の存在のように考えられているのはどうしてだろう。
人類の歴史からみれば取ったり取られたりのほんの短い時代を経て、その名残で未だに国境線をめぐる国家間のいざこざがある。
無論、当時は情報の流れる速度は今と比べれば圧倒的に遅かったし、
もっともっと前、つまり同じような巨大地震は起きたと推定される千年前は地元民しか知らなかっただろう。
そうした事を考え、世界からの支援の声を聴くと、情報の流れのスピード化、情報の透明化は、
人間の苦しみを共に共有しようとの流れを生むと言えるのではないか。これは良い流れで、情報化の思わぬ人類への貢献だ。
一方、原発事故を体験して、原発を保持している国は絶対に戦争はできない、と改めて思う。
今回の事故は自然災害によって誘発されたものだが、一たび戦争になれば爆弾が原発上に炸裂しない確率はないし、
それを狙われる危険もある。つまり自国内に時限爆弾を抱えている事なのだ。
それも最も危険な原子力爆弾を。
原発についてはもう一言いいたい。やはり危険だ。どんなに技術の粋をこらしても危険なものは危険だ。
地震以外でも宇宙からの隕石落下もある。それが原発を直撃しないと誰も100%否定できないだろう。
*
戦後最大の危機に対して国民はオールジャパンで取り組むでいるように思う。
しかし政治の方はどうだろう。政治家にオールジャパンで取り組む姿勢が見えないのがなんとも嘆かわしい。
与党には何かと不手際はあると思うが、野党はそんなことをあげつらっている時ではない。
自民党は長らく政権にあったから今の与党が歯がゆくなるのだろうが、早く自分たちが政権を取りたいとの思惑が垣間見える。
しかし総選挙までまだ2年はある。ここは与党に積極的に協力してほしい。
前例のない巨大地震に立ち向かうには個人の小賢しい知恵や経験はあてにはならない。
みんなの英知を集めて只々実直に、そして粘り強く取り組むしかない。
いまこそ政治を含めたオールジャパンの力が試されている。
<K.K>
|
[「文学横浜の会」]
禁、無断転載。著作権はすべて作者のものです。
(C) Copyright 2000-2004 文学横浜