「文学横浜の会」

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2011年8月5日


「貨幣価値」

 株やドルとは縁遠い生活をしているから、円高円高、と騒いでいるのを聞いても「どうして?」と思うだけだ。

日本の借金がどの国より多いと聞いているのに、どうして円高なの、と思う。 経済に疎い者には報道される識者の説明を聞いて、解ったような気になっても、実際はよく判ってはいない。 だいたい貨幣価値が時々刻々変化する仕組みが納得できない、いや理不尽なことのように思う。

1ドル100円として千ドルの対価を受けた者が、本人とは無関係に、翌日から1ドル80円の価値しかなくなってしまうなんて事が、 どうして許されるのか、ぼくには腑に落ちない。 逆に円安になれば同じドルでも日本円では多くなるが、それも納得できない。

今回の問題は、米国の借金が国の定めた上限を超えてしまうので、上限を引き上げようとして、次期大統領選を睨んだ駆け引きで、 上限額をどれだけ上げるかで米国議会が混乱、その上に米国の景気先行きを悲観して、結果ドルの信用が失墜したのが原因らしい。 とは言え、借金なら日本の方が遙かに多い(国のGDPに対して)のに、どうして円が買われるのか不思議だ。

世界中で決済に用いられる主な通貨はドル、ユーロ、それに円だと言う。 ユーロを使用する国の中にはギリシャのような財政破綻に等しい国々があり、三つの通貨はそれぞれ弱みを持っているが、 その中では日本の方がちょっとだけ良いから円買いが生じての円高、と言う事らしい。

それが正しいとすれば、円安にするのは容易い。 日本も、もっとじゃぶじゃぶ国債を発行して、日本はダメだと世界から思われる事だ。

でも、そんな事になったら、原油や天然ガス、或いは原材料を輸入に依存している日本で、 例えば1ドル200円になったとすると、輸出産業はワハハだが、原材料が2倍3倍になる可能性がある訳だから、そんなに単純な事ではない。

今は世界中の国々が、借金をして国民にサービスをしている構図にみえる。 国民に支持されなければ政権を維持できない、との考えで借金をして国政を運営している訳だ。 その上、各国が自国の景気対策から輸出を奨励し、輸出を促す政策を進めている。その為には自国の通貨が安い方がいい。

貨幣が弱くなれば、結果輸出には好いからと、各国が自国の通貨が弱くなるのを黙認する傾向にあると言う。 そんな事を聞くと、やはり「変動通貨」と言う制度そのものが曲がり角にきている様に思えてならない。

ここにきて日本政府・日銀が為替市場で円売り介入を実施したとの事だが、時にお金に振り回される程に大事な「お金」の値打ちが、 このように意図的に操作できたり、ふらふら変動する事が、ぼくには大いに疑問だ。 変動貨幣が理にかなうと言うのなら、それなら全ての貨幣が変動すればいい。でもそうなっていないのも何とも不可解だ。

一層お金を使わない生活をしたいが、それを実現するのは、難しいだろうな。 せめて株や外貨とは直接関わらない生活をしよう。それなら余計な神経を使わなくても済みそうだ。

<K.K>


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